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2023/07/21 18:21
ピクテ・ジャパンは7月21日、メディア向けに商品戦略と新商品発表会を開催し、同社代表取締役社長の萩野琢英氏(写真:左)は、「長期的な資産形成を支援するというピクテの考えを愚直に追求し、徹底した分散投資で資産を守るというマルチアセット戦略について時間をかけて徹底的に伝えていきたい」と語った。2024年1月にスタートする新NISAに向けて運用会社各社では、低コストのパッシブファンドの品ぞろえを強化するなどの対応を急いでいるが、ピクテの商品戦略はそのような動きとは一線を画している。プロダクトマネジメント部で商品開発チーム・ヘッドの脇谷雄介氏(写真:右)は、「発表された新NISAの成長投資枠の商品リスト(非上場投信)1260ファンドのうち、株式ファンドが66%を占め、債券ファンドやマルチアセットに分類されるファンドが少数になっている」と指摘した。そして、新商品として「ピクテ・グローバル・インカム債券ファンド(通称:グロイン債券)」、「ピクテ・プレミアム・アセット・アロケーション・ファンド」について紹介した。 萩野氏は、欧州の王侯貴族の資産を守ってきたプライベートバンクとしての特徴が活きるピクテの運用商品は、「3世代にわたるような資産を引き継いで育てるという考え方が基本にあり、時代の変化を捉えて10年先を見据えた運用を提供している」と語る。これは、同社が提供する個別の商品だけでなく、同社が日本国内で提供するファンド全体の残高構成にも表れている。ピクテ・ジャパンとして2023年4月末現在で2兆6145億円超の純資産総額があるが、その内訳は、「グロース株式」約25%、債券やオルタナティブ資産など「ディフェンシブ資産」が合計で約75%となっている。全体で期待収益率が年率6%程度が見込まれる資産構成となっているというが、金(ゴールド)やヘッジファンド、マルチアセットなど、非常に細かに性格の違う資産構成になっている特徴がある。萩野氏は、日本国内の経営として意識的に高度に分散されたプロダクト・ポートフォリオを作ってきたといい、「できれば、個人の投資家の方々の運用ポートフォリオも、当社の商品ポートフォリオに似たような分散ポートフォリオになることが望ましい」と語っている。 実際に、世界的に株式市場や債券市場が大きく崩れた2022年の国内運用会社の純資産総額の変化をみると、運用資産残高が1.5兆円を超える運用会社で、ほとんどの会社の純資産がマイナスとなり、中には20%以上のマイナスになっている会社もある中で、ピクテは7.5%増額するという異色の存在だった。この背景には、高度に分散された商品ポートフォリオがあり、10年、20年という長期での市場変化を考えた時には資産を分散していることが安定をもたらすとした。その上で、「現在の日本の投信市場は、米国株式や全世界株式などに偏った人気があるが、米ドルが過剰に評価されている現実を見ると、米国に偏ったポートフォリオにはリスクがある。世界貿易において米ドル以外の通貨での取引が増え、原油取引においても米ドル以外で決済される比率が高まっている現実を考えたい。確かに、今の世界経済の勝者は米国かもしれないが、かつての日本のバブル期には世界株式に占める日本株式の時価総額が全体の5割を占めることもあった。米国株が現在の6割を超えるシェアを将来も維持し続けることができるだろうか」と指摘して分散投資の必要性を説いた。 脇谷氏は、7月10日に公表した新NISA成長投資枠向けのファンド28本が、概ね同社が新NISA向けに提供を予定する既存ファンドのラインナップになると語った。その上で、新ファンドを新NISA向けに少しずつ増やしていく計画という。その新ファンドの1つが7月14日に届け出た「ピクテ・グローバル・インカム債券ファンド(隔月決算型)(1年決算型)」だ。通称を「グロイン債券」というように、同社の人気ファンド「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド」の債券版という作りになっている。世界の公益企業が発行する債券を主要投資対象としたファンドだ。公益企業の業績の安定性によって信用リスクが低く、また、近年の世界金利の上昇によって年5%程度の債券利回りが期待できるという。信託報酬率は年1.2518%(税込み)で8月31日に設定する。 そして、7月20日に届け出た「ピクテ・プレミアム・アセット・アロケーション・ファンド」は、同社が標ぼうする「3世代に引き継ぐ資産」という運用成果をイメージさせる商品だ。世界の株式、債券、リート(不動産投信)、金をはじめとするコモディティ(商品)など様々な資産に分散投資し、市場環境に応じて資産配分を機動的に見直す。ジュネーブからグループのマルチアセット運用の担当者を東京に呼び寄せ、国内の運用者によるマルチアセットチームが運用にあたる。「運用チームも若手を抜擢し、長期の運用に耐え得るマルチアセット運用チームの育成も図り、長期的に安定的な運用を提供する体制を作っていくこともミッションの1つ」(萩野氏)という。信託報酬率は年0.7315%(税込み)で、9月8日に設定する。 これらファンドの他にも新商品を複数検討しているとして、今後も少しずつラインナップを拡充していく考えだ。
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