前のページに戻る
2023/09/27 18:27
9月26日に設定された「三井住友DS ワールド・ボンド・フォーカス2023−09(限定追加型)」の設定額が約754億円と、今年設定されたファンドの中で目立って大きくなった。同ファンドは、投資適格債を中心に適格未満の債券を含む世界の債券に投資し、信託満了の2027年12月22日までの4年余りの期間を債券の満期まで保有する「持ち切り」の運用でインカム収入の獲得をめざす。現在の債券利回りの高い水準に焦点を合わせたファンドだ。現在の利回りを求める商品に750億円を超える資金が集まるほど、債券投資への関心が高まっている。債券ファンドは「インデックス型」から、「ハイ・イールド債券」、「インフラ債券」、「バンクローン(貸付債権)」など、様々な債券に投資するファンドが出ているが、リターンに着目すると「新興国債券」にも妙味がある。近年、「アジアの新興国債券」に注目したいという声が高まっている。 2019年以降の債券ファンドのパフォーマンスは、米国をはじめ各国が急激な利上げに動いた2022年を除くと、概ね、安定的な良いリターンを残してきている。たとえば、日本を除く世界主要国の公社債に投資を行う「FTSE世界国債インデックス(除く日本、円換算ベース)」に連動した投資成果をめざす「eMAXIS Slim先進国債券インデックス」の年次トータルリターンは、2019年が5.20%、2020年が4.89%、2021年が3.78%、2022年がマイナス4.93%だったが、2023年は8月末時点での年初来トータルリターンが11.89%と、2022年のマイナス分を取り返すほどの上昇になっている。8月末時点での過去5年の年率リターンは4.04%だ。インフレ率以上のリターンを確保し、インフレから資産を守りながら、かつ、資産を安定的に増やすという債券投資の役割を十分に果たしているというパフォーマンスだったといえるだろう。 債券投資の中でもリスクが低い国債に投資するファンドのトータルリターンが年4%超を獲得できたという実績であるため、よりリスクを取った運用をするファンドでは、より高いリターンをあげられた。たとえば、国債よりもリスクのある社債の中で、比較的業績が安定していると考えられるインフラ関連企業の社債に投資する「三菱UFJ/マッコーリー グローバル・インフラ債券ファンド」(為替ヘッジなし)は、5年(年率)リターンが5.09%と年5%台に乗ってくる。さらにリスクが高い非投資適格債券として年金等の機関投資家の運用では制限を設けるケースが多い「ハイ・イールド債券」を主たる投資対象とした「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」(為替ヘッジなし)の5年(年率)リターンは8.66%だ。 そして、成長している新興国の債券に投資するファンドの中には、社債やハイ・イールド債を超えるようなパフォーマンスを出すものもある。たとえば、インドネシアの債券に投資する「HSBC インドネシア債券オープン(毎月決算型)」は、5年(年率)リターンが10.57%になる。ブラジルの債券に投資する「新光 ブラジル債券ファンド」の5年(年率)リターンも10.48%と10%を超える。そして、メキシコの債券に投資する「メキシコ債券オープン(毎月分配型)」は5年(年率)リターンが13.56%に達する。また、インドの債券に投資する「野村インド債券ファンド(毎月分配型)」の5年(年率)リターンは8.07%だ。もっとも、投資対象を間違えると思わぬ痛手を被ることになる。トルコの債券に投資する「トルコ・ボンド・オープン(年1回決算型)」は、5年(年率)リターンがマイナス4.27%、ロシアの債券に投資する「DWSロシア・ルーブル債券投信(毎月分配型)」は5年(年率)リターンがマイナス45.19%になっている。 このような新興国債券の中で、注目度が高まっているのがアジアの成長国の債券だ。アジアの新興国については、中核国に位置付けられていた中国の成長が鈍化し、中国向け貿易依存度が高い国々の成長にも影響を及ぼしているが、インドやインドネシアなど人口が多い国々は、中国減速の影響を受けつつも、それを乗り越えるだけの内需の力強さが期待できる。日興アセットマネジメントのアジア債券チームが9月20日に発信したレポートでは、「アジアでは、インドやインドネシアの債券が域内の他国よりも良好なパフォーマンスを示す可能性があるとみている。キャリーが魅力的な水準にあることに加えて、良好なマクロ環境や政策への信認の高さが、両国の債券の追い風になるだろう」という見通しを出している。「インドでは、個人消費の大幅な加速が成長を押し上げ、インドネシアでは好調な家計・政府支出が同四半期の輸出の縮小を相殺した」と、2023年第2四半期で経済成長率が鈍化した他のアジア各国と比較して成長率が加速したインドとインドネシアの経済の強さを特筆している。 今後、米国や欧州など先進国の景気鈍化が懸念されている。株式投資一辺倒のポートフォリオでは、景気後退に伴う企業業績の悪化などの影響で株式投資のパフォーマンスが悪化する可能性もある。そのようなリスクから資産を守るための分散投資先の候補としてインド株式など成長する新興国の株式に投資することがあげられているが、新興国の債券も有力な投資先になり得るのではないだろうか。(グラフは、好調なパフォーマンスが続く新興国債券ファンドのパフォーマンス推移)
ファンドニュース一覧はこちら>>