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2023/10/02 17:54
国民年金基金連合会が10月2日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると8月の新規加入者数は3万8039人で加入者総数は305万9071人になった。新規加入者数は、2023年2月から7カ月連続で前年同月比割れになっている。8月の新規加入者は、iDeCoに公務員や第3号被保険者の加入も可能になった2017年1月から2023年8月までの月次平均新規加入者数(3万8626人)をやや下回っている。22年10月の制度改正によって加入が簡素化された「企業年金あり」の加入者が激増した影響が落ち着いてきたといえる。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は6553事業所、対象従業員数は4万1972人になった。 8月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は4512人(前月4513人)、第2号加入者は3万1610人(前月3万1339人)、第3号加入者は1587人(前月1598人)となった。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万8134人(前月1万8325人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は6348人(前月5777人)となった。第2号加入者の中で「企業年金あり」が7128人(前月7237人)と前年同月比23.5%増だった。 iDeCoの新規加入者数は、2022年6月に月間5万5810人と直近のピークをつけてから、徐々に下火になっている。2022年には月次で新規加入者数が5万人を超える月が5カ月もあったが、2023年になると4万人を下回る月が続いている。この状況は、加入者掛金の水準にも波及している。加入者の掛金額(毎月定額拠出)は2022年9月に平均拠出額1万6213円をピークに、徐々に低下し、2023年8月には1万6125円になった。拠出額の平均では2号加入者は平均1万4500円台で横ばいになっているが、第1号加入者は、22年9月の2万8912円が2万8379円に、第3号加入者は同1万5460円が1万5138円へと拠出額を減少させている。拠出額の平均は、iDeCoへの関心の度合いに左右される傾向があり、関心が高まっている過程では平均拠出額が増大し、関心が低くなると平均拠出額も減少するという傾向があった。 加入者の平均掛金額の推移をみると、iDeCoについては、会社員や公務員といった第2号加入者の関心は、依然として高いようだ。第2号加入者には今春の賃上げ等が将来の備えを充実させるというインセンティブに働いていると考えられる。一方、第1号(自営業)や第3号(専業主婦・夫)は、日々の生活費等の上昇など、インフレによる圧迫で将来に向けた備えの余裕を失くしてきているのではないだろうか? 確定拠出年金制度そのものは、企業年金をベースに発展してきた制度であるため、第2号加入者が制度の中核であり、第2号加入者を軸に置いた制度改正議論が進むのはやむを得ない部分もある。ただ、iDeCoはもはや、全国民を対象とした老後所得の上乗せ制度として位置付けられるようになってきている。近年になって関心が薄れているようにみえる第1号や第3号加入者も再び積極的な関心事になるような対策が求められているのではないのだろうか。
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