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2023/10/18 16:30
社会保障審議会企業年金・個人年金部会が10月17日に開催され、「資産形成を促進するための環境整備(投資教育・運用関係見直し)」をテーマに議論した。また、内閣の「新しい資本主義実現本部」の下に、家計金融資産等の運用を担う資産運用業及びアセットオーナーシップの改革並びに資産運用業への国内外からの新規参入及び競争の促進等を内容とする資産運用立国に関する政策プランを検討する「資産運用立国分科会」が発足し、10月4日に同分科会の第1回会議が開催され、企業年金はアセットオーナーとして一定の役割を担っている一方、企業年金・個人年金部会での議論が「資産運用立国分科会」の議論と重なり合う部分があることから、今回の議論に「資産運用立国について」が急遽追加されて議論のテーマに加わった。 「資産運用立国分科会」の議論と、部会で議論している企業年金の取り組み検討課題が重なる部分として事務局(厚生労働省)が示した論点は、(1)アセットオーナー・プリンシプル(アセットオーナーとして求められる忠実義務等を踏まえつつ、具体的な内容)、(2)確定給付企業年金(DB)の運用力の向上、共同運用の選択肢の拡大、加入者のための運用の見える化の充実、(3)企業型確定拠出年金(企業型DC)の適切な商品選択に向けた制度改善、加入者のための運用の見える化の充実――の3つの項目。これらの項目については、企業年金・個人年金部会において継続的な議論があり、また、法令等の整備も段階的に拡充されてきている。その拡充の経緯について事務局が資料をまとめて説明した。 この「資産運用立国について」は、政府の取り組みを報じる新聞報道等において、「企業年金は情報開示が不十分で運用成績の他者比較等ができず、結果的に欧米よりも運用成績が低い」と報じられたことに対して、運用の現場から強い違和感が相次いで発言された。たとえば、「企業年金の運用は、単に資産の極大化をめざすのではなく、債務に見合った給付を確実にすることを目的に運用している。リターンのみに着目した議論は的外れ」との指摘があった。また、企業年金連合会は、欧米の代表的な企業年金の運用実績と国内年金の運用を比較し、「たとえば、米国の公務員年金基金は積立水準が77.69%と財政状況は極めて悪い。過去10年間の運用利回りの平均は8.38%と高いが財政上必要な9%台の利回りには達していない。20年間2ケタの利回りを達成できなければ積み立て不足を解消できないような制度運営をしている年金基金の資産運用は、日本の企業年金の参考(見本)にはならない」とリターンを重視した報道等に反論し、資産運用の評価は、運用の「目的」に応じて実施されるべきであると主張した。 一方、「資産形成を促進するための環境整備」については、企業型DCを導入している企業の従業員の間で一定程度の投資教育が行われていることは評価される一方で、その教育内容が投資の基礎知識などに偏り、「退職後のマネープラン」などについての知識が十分に伝えられていないという課題を指摘する声が多かった。退職後のマネープランなど「リタイアメントプラニング(老後資金計画)」についての知識が乏しいこともあって、ほとんどの制度加入者がDCで積み立てた資金を一時金で受け取った後、現預金で保有している。DCで積み立てた資金が、一時金以外で年金として受け取るなど多様に活用されるような社会が望ましいという意見があった。また、投資教育については、iDeCo(個人型確定拠出年金)のみに加入している加入者では、実施率が非常に低いことが課題とされた。 また、企業型DCにおける運用商品や運営管理機関のモニタリングや評価の在り方、そして、加入者データは非常に限定的な範囲しか制度を運営する企業に提供されていないものの、投資教育の実施において加入者の運用実績に応じたタイプ別教育プログラムの導入など、投資教育の効果的な実施のために、加入者データの活用ができるような仕組みをつくれないか――なども検討されている。(イメージ写真提供:123RF)
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