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2023/10/19 16:30
金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」の第2回会合が10月18日に開催された。同会議は、今年6月に出た政府の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」で、「我が国の運用セクターを世界レベルにするため、具体的な政策プランを新しい資本主義会議の下で年内にまとめる」と目標が定められことに対応したもの。主に、「国内外の資産運用会社の新規参入の支援拡充・競争促進、資産運用力の向上及び運用対象の多様化に向けた環境整備等」について議論している。事務局は金融庁が務め、オブザーバーとして財務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、日本銀行の他、全国銀行協会、国際銀行協会、日本証券業協会、投資信託協会、日本投資顧問業協会、第二種金融商品取引業協会、信託協会、生命保険協会、日本プライベート・エクイティ協会、日本ベンチャーキャピタル協会、日本取引所グループが参加し、正にオールジャパンで日本の資産運用業の未来の枠組みを作ろうとしている。 18日の会議では、事務局から今後の制度改定の方向性が示され、委員からは、その方針については賛同するという意見が多かった。会合で方針が示されたのは、(1)資産運用会社の新規参入の促進等、(2)成長資金の供給等、(3)その他という3つの論点についてで、たとえば、資産運用会社の新規参入の促進については、投資運用業の登録要件を緩和し、ミドル・バックオフィス業務を外部委託することによって運用ノウハウだけで運用業に参入できる環境を用意しようという方針が示された。既存の運用会社にとって、ミドル・バックオフィス業務は、ヒト・モノ・カネの負担が大きい部門であり、新規参入の障壁の1つに位置付けられてきた。事務局では、欧州で定着している管理会社(fund managemrnt company)を中心に、外部委託できる業務やルールが法律によって定められ、「運用会社」、「販売業者」、「アドミニストレーター(管理会社)」などが、その特性を活かして機能ごとに存在することを環境整備の1つのモデルとして紹介している。 また、運用の外部委託についても、現在のルールでは運用についての全ての業務を外部委託することは禁じられているが、これを全部委託を認める方向を示した。これによって、欧州などにある運用業務に特化した特徴のあるアセットマネージャーが日本に進出しやすい環境にしたいとした。この他、欧米や東京都の事例を参考にEMP(新興資産運用業者にシードマネーを提供し業者を育成するプログラム:Emerging Managers Program)の検討を進めるとしている。さらに、投資信託の投資対象資産に「排出権」や「オルタナティブ投資を行う外国籍投資信託」などを認めることも提案している。 これまで、運用事業への新規参入や新しい投資資産の追加などは、いわゆる「プロ向け」の市場において参入規制を低くして参入を促してきたという経緯があるが、今回の議論は、一般の個人投資家が利用する公募投信も含めた投資信託の商品提供を、より柔軟にし、多くの新規参入者を迎え入れることによって競争環境を作り、より品質の高い運用業界に進化させることを狙っている。委員の間からは、「これまでは金融サービスの中の資産運用という『機能』を発展させるための規制が考えられてきたが、これを『運用業』として産業の育成・高度化を意図した環境整備が始まっている」という捉え方をしていた。 この他、ベンチャーキャピタルに対する資金供給の促進や、非上場の有価証券を取引するセカンダリー市場の取引の活性化、そして、株式報酬に関わる開示規制の整備、さらには、「オリガミ債」など国内企業の外貨建て債券発行の円滑化のための環境整備などが提案されている。 このように積極的に資産運用業への新規参入を促し、これまで実現できなかったような新しい投資価値のある商品を幅広くラインナップできるような市場を作っていこうという意欲的な議論が進んでいる。ただ、いたずらに新規参入を促すだけでは、運用や経営の品質が悪い業者が増える可能性もある。投資家に約束した運用スキームを忠実に実現できない事業者や、ファンドを発足後数年で経営破たんしてしまうような事業者は排除したいところだろうが、厳しい基準を設けて参入を規制していては、いつまでたっても新しいプレーヤーが増えないことにもなりかねない。委員の間からは、その「バランス」が重要との指摘が多く出ていた。(イメージ写真提供:123RF)
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