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2023/10/31 14:27
アムンディのグループCIOであるヴァンサン・モルティエ氏(写真)は、2023年8月1日にアムンディ・ジャパンの取締役会長に就任した。10月30日、同グループのグローバルな投資戦略についてメディア向けに説明した。モルティエ氏は、「先週、グループのシニアアナリスト50名が集まり、2日間の合宿を行って2024年の市場を展望した。世界経済は脆弱で複雑な状態にあり、市場のボラティリティ(価格変動率)は高くなる。投資ポートフォリオは質の高い資産への配分を強め、かつ、ダイナミックに組み入れ比率を変更する必要がある」と全体を見通した。その中で、日本の投資家は「国内資産を選好することにメリットがある。日本の株式市場は依然として魅力的な投資対象といえる」と語った。 世界の金融市場の行方を見通すうえで重要なポイントになっている米欧の金融政策については、「従来の想定以上に高い金利水準を維持することになりそうだ。2024年半ばまでは利下げは見送られ、この高金利の影響によって米国は2024年上半期にリセッション(景気後退)に陥ると考えられる」とした。モルティエ氏は、「世界各地からアナリストが集まって議論したが、アメリカのアナリストがアメリカの経済見通しについて最も悲観的な見方をしていた」と議論の様子を振り返っている。 米国の経済について厳しく見ている理由は、「米国の高金利が資金の借り換えなどを通じて企業や家計にダメージを与えることになるため」とした。米国の財政赤字は大きく、国債の発行などといった借金で財政を運営しているため、長期金利が5%台に高まった影響は米政府の痛手になっていく。これは、米国企業にも同じことが言える。また、コロナ禍に出た補助金を貯蓄に回し、貯蓄の取り崩しによって強い個人消費を実現してきたが、その貯蓄が剥がれ落ち、今後は消費者金融であれば年利20%台の金利、住宅ローンでも8%台の金利を負担する必要がある。「個人消費の勢いは着実に鈍化する」との見方だ。したがって、米国経済は2024年上半期にリセッション(景気後退)に陥る見通しとしたが、「これがテクニカルな軽いリセッションで終わるか、より深いものになるのか、慎重に見極める必要がある」とした。 日本については、「2024年も株式市場には引き続きポジティブな見方をしている。日本円も現在の1ドル=150円程度の円安水準から、2024年の年末にかけては、米ドルやユーロなどが弱くなる見通しと相まって円が強くなっていき、1ドル=120円程度を目指す展開になるとみている」とした。ただ、日本国債には強気にはなれないという見方だった。 また、新興国市場については、「今まで以上に分断され、個々の国の状況によって経済が強い国と弱い国に分かれていく」と見通している。その中で、中国は、「マーケットのコンセンサスよりも悪くはないとみている。中国のイノベーションや内需の復調によって、中国企業のクオリティは良くなる方向だ。株価のPER(株価収益率)は10倍程度と米国の2分の1程度になっており、見直される局面があるだろう」。地域別では、アジアには経済が強い国が比較的多く、南米はブラジルを除く各国に弱気、そして、もっとも慎重に見ているのは、東欧、中東、アフリカとした。 モルティエ氏は、日本の投信市場(資産運用市場)について「非常にダイナミックで楽しみな市場」という見方をしていた。特に、2024年から始まる新NISAについては大いに期待しているとし、「日本は資産運用立国を掲げているが、外国から資金を呼び込むことに注力するよりも、国内の資金を貯蓄から投資へと振り向けることに全力で取り組むべきだと思う。外国の資金は、呼び込めば入ってくるかもしれないが、いずれ出ていく資金でもある。国内に眠る多くの預貯金を投資に振り向けることが重要だ」と強調した。
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