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2023/11/01 18:06
国民年金基金連合会が11月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると9月の新規加入者数は3万5300人で加入者総数は308万9413人になった。新規加入者数は、2023年2月から8カ月連続で前年同月比割れになっている。22年10月の制度改正によって加入が簡素化された「企業年金あり」の加入者が激増した影響が落ち着いてきたといえる。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(イデコプラス:中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は6688事業所、対象従業員数は4万2822人になった。実施事業所数、対象従業員数ともに前年同期比30%を超える増加率になっているが、この伸び率も月を追うごとに鈍化してきた。 9月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は4526人(前月4512人)、第2号加入者は2万8747人(前月3万1610人)、第3号加入者は1689人(前月1587人)となった。第2号加入者の総数が3万人を下回ったのは今年5月以来、4カ月ぶりのこと。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万6873人(前月1万8134人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は5570人(前月6348人)となった。第2号加入者の中で「企業年金あり」が6304人(前月7128人)と前年同月比24%増だった。 iDeCo+は、従業員のiDeCoの掛金に、企業が掛け金を上乗せ拠出する仕組み。企業年金を実施していない従業員数300人以下の企業が導入できる。従業員のiDeCo掛金は、原則として給与天引きとし、その掛金に事業主が上乗せ拠出した分をまとめてiDeCo実施機関である国民年金基金連合会に納付する仕組みになっている。従業員の掛金と事業主掛金の合計額は月額5000円以上2万3000円以下の範囲でそれぞれ1000円単位で設定することが可能になっている。企業年金は、長期化する退職後の暮らしをサポートする重要なツールとして従業員確保のために導入機運が高まってきているが、中小企業では企業型DC(確定拠出年金)、あるいは、DB(確定給付型企業年金)ともに、自社単独で導入するのはハードルが高いが、iDeCo+は比較的容易に導入することができる。 iDeCo+は2018年5月から事業主掛金の上乗せが可能となった。当初は従業員数100人以下の事業者が対象だったが、2020年10月に従業員要件が300人以下に拡大された。2022年2月頃までは、実施企業数が4000社程度、対象従業員数も2万5000人程度だったため、前年同月比で50%増程度の増勢で拡大していたが、2022年後半になって実施企業数が5000社を超えたあたりから、前年同月比での伸び率が徐々に鈍化し始め、遂には前年同月比30%増程度にまで伸び率が鈍化した。ベースとなる実施企業数や対象従業員数が大きくなってきたため、伸び率が鈍化したという側面もあるが、2022年頃は毎月150社程度が新規に制度を導入していたことと比較すると、2023年に入ってからは月間の新規導入社数が100〜130社程度になっている。 総務省・経済産業省が実施した経済センサスー活動調査によると2021年6月調査で、全国の法人数は約178万社。うち、従業員数が300人以下の企業は約176万社で、全法人数の99%を占めている。これに対し、現在のiDeCo+実施企業数は6688社にとどまるため、実施率は対象企業の0.4%にも満たない。まだまだiDeCo+の認知度は低く、今後の拡大余地は大きい。 そもそもiDeCoの加入者総数309万人にしても、加入対象者6756万人の4.6%に過ぎない。iDeCo+は、従業員がiDeCoに加入することも促す制度であるため、iDeCo+の拡大によって、iDeCoの加入者増にも弾みがつくことになる。様々な機会を通じてiDeCo+について情報が拡散されることが望まれる。(グラフはiDeCo新規加入者数の推移)
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