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2023/11/10 19:15
米国のハイテクジャイアントに集中投資する「iFreeNEXT FANG+インデックス」のパフォーマンスが突出している。同ファンドは、「FANG」といわれるFacebook(現社名はMeta)、Amazon、Netflix、Google(上場している親会社はAlphabet)の4社を含む米国企業10銘柄で構成する株価指数「「FANG+」に連動する運用成績をめざすファンド。投資対象が10銘柄という超厳選ポートフォリオになっている。ちょうど今年は、アメリカで「マグニフィセント・セブン」といわれるテクノロジー大手企業が集中投資される状況が注目を集めたが、ファンドの中でも「iFreeNEXT FANG+インデックス」は突出したパフォーマンスをたたき出している。 「iFreeNEXT FANG+インデックス」の10月末現在での過去1年間のトータルリターンは62.53%で、全ファンド(ETF除く)でレバレッジ型を除くとトップになる。このファンド次ぐのは「日本製鉄グループ株式オープン」の58.65%だ。ちなみに、全ファンドのトップは、「iFreeレバレッジFANG+」の105.62%なので、いかに「FANG+」のパフォーマンスが突出しているのかがわかる。 「FANG+」の構成銘柄は、「FANG」に加えて、アップル、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ、スノーフレイク、ブロードコムになっている。これは、今年アメリカで注目された「マグニフィセント・セブン」のアマゾン、マイクロソフト、アップル、アルファベット、メタ、エヌビディア、テスラの7社。「FANG+」は「マグニフィセント・セブン」にネットフリックスとスノーフレイク、ブロードコムの3社を加えた格好なので、「今年の米国株高の80%はマグニフィセント・セブンの株高で説明できる」といわれるほど集中的に物色された銘柄群をきれいに取り込んだ指数だった。 実際に、既存の米国株ファンドの組み入れ銘柄数を調べていくと、10銘柄だけに投資する「FANG+」ほどに投資対象を絞り込んだファンドはない。たとえば、代表的な米国株ファンドである「アライアンスバーンスタイン・米国成長株投信」は55銘柄に投資している。ファンド名に「厳選」という言葉が入る「DIAM厳選米国株式ファンド」でも投資銘柄数は36銘柄だ。「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」が36銘柄、「UBS次世代テクノロジー・ファンド」が30銘柄だ。そして、最も厳選投資している「GS米国成長株集中投資ファンド」が19銘柄になっている。 これら集中投資型のファンドのパフォーマンスは、「GS米国成長株集中投資ファンド」が10月末時点で過去1年のトータルリターンが16.92%、「UBS次世代テクノロジー・ファンド」が同16.28%、「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」が同21.44%、「DIAM厳選米国株式ファンド」は同18.44%という成績だった。投資銘柄を絞り込めばよいということではない。 今年の年初から株式市場の注目を集めたのは「チャットGPT」に代表されるようなAI(人工知能)の実用化進展に関する話題だった。投資対象を「AI」関連に特化したファンドでは、「ニッセイAI関連株式ファンド」が投資対象を39銘柄と絞り込んでいるファンドになるが、パフォーマンスは過去1年のトータルリターンで20.71%になっている。投資対象が70銘柄と広く銘柄を分散した「グローバルAIファンド」は同5.93%とパフォーマンスが低下してしまう。 「FANG+」は集中投資、かつ、AIという市場の注目を集めたテーマにも合致した非常に優れた銘柄群で構成された株価指数だった。だからこそ、1年間で60%を超えるリターンになった。 問題は、今後はどうなるのかということだろう。「FANG+」の構成銘柄のなかでは、テスラについて、「PERが50倍を超えており、あまりにも割高」という指摘がされている。「マグニフィセント・セブン」の中で、唯一、今後の業績予想に下方修正の見通しがあるのはテスラになっている。そもそも米国「S&P500」採用銘柄の業績予想は、今年は横ばい圏にとどまる。にもかかわらず「マグニフィセント・セブン」への集中物色で。「S&P500」は、年初から7月末までに約20%の値上がりになった。この値上がり分はPER(株価収益率)などバリュエーションの拡大を伴う上昇だった。「S&P500」は7月末をピークに10月末まで3カ月連続の下落となったのは、高くなり過ぎたバリュエーションの調整といわれている。特に株価の上昇率が大きかった「マグニフィセント・セブン」などの大型株には、依然として割高感が強いといわれている。 したがって、米国株式市場では「割高な『マグニフィセント・セブン』以外の銘柄を探せ」ということが言われだしている。ところが、「iFreeNEXT FANG+インデックス」の値動きは、10月には一段と上昇した。ここには、米国が利上げの影響等によって景気が徐々に悪くなりつつあり、市場がディフェンシブ銘柄に退避し始めているという事情がある。テスラなどの高PER銘柄を除けば、「マグニフィセント・セブン」に代表される米国ハイテクジャイアントは、不況下に強いとみなされているからだ。マイクロソフトのワードやエクセルなどは不況だからといって使用を控えるようなことはない。グーグルの検索機能やクラウドなどもそうだ。マイクロソフトのPERは35倍、アルファベットの25倍、アップルの30倍、メタの29倍などは比較的安心感のある水準になっているのではないだろうか。一方でPERが100倍を超えているエヌビディアなどを、どのように評価するかによって今後の見通しは、投資家によって異なる見方ができるだろう。 「iFreeNEXT FANG+インデックス」は、投資対象銘柄が限定されるだけに、個別株式と非常によく似た分析ができる。このファンドは「つみたてNISA」の対象ファンドになっているので、24年1月に始まる新NISAでは「つみたて投資枠」で活用できるファンドにもなるだろう。ユニークな性格を持つファンドとして注目したい。(グラフは、「iFreeNEXT FANG+インデックス」のパフォーマンス推移)
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