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2023/11/27 18:42
2024年末に生産を開始する予定で建設が進む半導体製造最大手TSMC(台湾セミコンダクター)の熊本工場、そして、2025年4月の稼働をめざす国内企業が出資した半導体会社「ラピダス」の北海道工場など、日本の半導体関連産業に大きな動きが続いている。これを投資機会として国内の半導体関連企業に投資する新ファンド「ジャパン半導体株式ファンド」が12月22日に新規設定される。日本の半導体産業に絞って投資するETFが2021年9月に設定された「GX 半導体関連−日本株式」(コード番号:2644)は、10月末現在で過去1年間のトータルリターンが43.67%と「国内大型グロース」カテゴリーでトップの運用成績になっている。このETFの勢いを追いかける運用成績が残せるのか、設定後のパフォーマンスが期待される。 新ファンド「ジャパン半導体株式ファンド」は、「半導体製造装置や半導体材料の供給を行なう企業」、「半導体の製造にかかわる企業」、「半導体産業の発展から恩恵を受ける周辺企業」の3つのカテゴリーを投資対象とする。運用方針として「半導体産業の中長期的な需要の移り変わりや技術の進化に目を配り、産業構造の変化を的確に捉えることで、成長企業を見極めます」と掲げており、現在の国内半導体産業の盛り上がりだけでなく、将来の産業構造の変化も捉えた中長期的な成長をめざすファンドだ。 日本政府は、半導体戦略の中心に国内の生産能力強化を据えており、足元で計画されている製造拠点の稼働によって、10年間でGDPが最大4.2兆円押し上げられると試算している。この後押しに、2022年度補正予算で「半導体サプライチェーンの強靭化支援」を目的に3686億円の予算を計上。また、「先端半導体の製造基盤整備」に4500億円、「次世代半導体の製造技術の確立など」のために4850億円と、合計で約1.3兆円の支援策を決定している。 また、TSMCが数ある候補地の中から日本に工場建設を決定したように、日本企業が世界に誇る半導体製造装置や半導体材料は日本での半導体製造のモチベーションにもなっている。台湾に集中している半導体工場を分散化させるという地政学的な意味合いでも、今後、TSMCに次ぐ半導体製造大手の日本進出の期待も強い。 そもそも半導体は、様々な産業のデジタル化を支え、デジタル化が加速する社会において必要不可欠なものとなっている。世界の半導体市場は、スマートフォンやPC、データセンターなどに加え、電気自動車や生成AI(人工知能)といったイノベーションの拡がりによって、中長期的に成長が加速すると見込まれている。また、コロナ禍を受けた深刻な半導体不足を経て、半導体は国の安全保障を左右する戦略物資にも位置付けられるようになってきている。かつて、日本が半導体産業で世界のリーダーだった時代があったが、今、改めて日本の技術力に世界の目が向いている状況といえるだろう。 先行して設定されたETF「GX 半導体関連−日本株式」は、半導体産業に関連する国内上場株式を構成銘柄とする「FactSet Japan Semiconductor Index」に連動する投資成果を目指す。2021年9月の設定で、2022年は世界的な利上げ等の影響でグロース株(成長株)に逆風となる環境だったこともあって、年間でマイナス22.21%と低迷したが、2023年1−3月期で25.95%、同4−6月期で26.85%と大きく伸びた。同7−9月期こそマイナス4.06%と一服したものの、10月以降に再び上昇している。 このような半導体関連産業への成長期待は、グローバル市場でも顕著となっており、例えば、世界の半導体関連企業の株式に投資する「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体) 」は、過去10年間のトータルリターン(年率)が23.25%と、先進国株式インデックス(MSCIワールド配当込み、円ベース)の同12.60%、米国「S&P500(配当込み、円ベース)」の15.79%を大きく上回る成果を上げている。今後、日本の半導体関連産業が世界的な注目を集める存在になっていくのであれば、過去10年以上にわたる世界の半導体産業の成長を、今後は日本の半導体関連産業が享受できるという期待も持てるところだ。もちろん、かつて隆盛を誇った日本の半導体産業が没落したように、変化の激しい半導体ニーズを的確に捉えて将来を見据えた投資計画を実行できるかどうかという経営力も問われる。そこには、企業を分析し、企業と対話をしながら投資対象銘柄を決定するアクティブファンドの力量によって企業を見極めることも重要になろう。新設される「ジャパン半導体株式ファンド」の目利きの力にも期待したい。(グラフは、「GX 半導体関連−日本株式」のパフォーマンス推移)
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