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2023/12/01 12:03
国民年金基金連合会が12月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると10月の新規加入者数は3万5792人で加入者総数は311万9800人になった。10月の新規加入者数は前年同月比でマイナス30%になった。新規加入者数は、2023年2月から9カ月連続で前年同月比割れになっている。2024年1月からスタートする新NISAは非課税限度額が1人あたり1800万円に拡大し、同じように収益非課税で人気を集めてきたiDeCoの人気を奪っている。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(イデコプラス:中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は6841事業所、対象従業員数は4万3823人になった。 10月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は4597人(前月4526人)、第2号加入者は2万9305人(前月2万8747人)、第3号加入者は1583人(前月1689人)となった。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万7498人(前月1万6873人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は5720人(前月5570人)となった。第2号加入者の中で「企業年金あり」が6087人(前月6304人)と前年同月比59.7%減だった。 2024年1月に始まる「新NISA」は、従来のNISA(少額投資非課税制度)の枠組みを大きく広げる。これまでは、一般NISAの非課税限度額は年間120万円で、期間が5年間の累計600万円。つみたてNISAは年間40万円で、期間20年間の累計800万円だった。一般NISAとつみたてNISAの併用はできなかったため、非課税で投資できる限度額は最大800万円でしかなかった。しかも、それは、積立投資で毎月3.3万円ずつ20年間にわたって継続した結果得られるというものだった。将来の資産を増やしたいと考える人々にとっては、非常に限られた資金枠でしかなかった。 このため、非課税で将来の資金を確保したいと考える人は、iDeCoを使って将来資金を積み増ししようと考えた。iDeCoの拠出限度額は企業型確定拠出年金等の加入状況によって異なるが、たとえば、会社に企業年金制度がない場合は、毎月2.3万円(年間27.6万円)まで非課税で積立ができ、しかも、掛金は所得から控除できるというメリットもある。かつ、60歳になるまで積立投資を継続できる。つみたてNISAで限度額いっぱいに積立投資をしても非課税枠が800万円では足りないと考えた場合に、iDeCoの活用は魅力的な手段になった。 しかし、NISAで1800万円まで非課税で将来資金が用意できるのであれば、わざわざiDeCoを使うまでもない。NISAの場合は、必要に応じて取り崩しもできるが、iDeCoは60歳になるまで換金できない仕組みだ。余裕資金で資産形成をしたいと考える人には、圧倒的に新NISAの方が使い勝手が良い。もっとも、「老後の資金こそ重要」と考え、「60歳まで換金できない」ことに価値を感じる人もいるだろう。そういう限られたニーズに応える制度として今後のiDeCoは活用されていくことになる。これまでのように、「NISAで足りない資金をiDeCoで補う」という使い方をされなくなる分、毎月の加入者数の伸びは限定的になるだろう。 一方、確定拠出年金制度は、企業型を中心に今後とも重要な年金準備ツールとして拡大していくものと考えられる。企業が従業員に対して掛金を拠出し、従業員の将来の年金を用意するという企業型確定拠出年金制度は拡大途上にある。iDeCoの枠組みを使った制度としては、従業員が加入するiDeCoに企業が上乗せ拠出するという仕組みの「iDeCo+」がある。iDeCo+は導入事業所数が6841事業所で4万人を超える従業員が対象になっているが、企業型確定拠出年金よりも導入のための手間が少ない制度でもあり、中小企業の間でもっと多くの制度採用が実施されることが期待されている。(グラフは、iDeCo新規加入者数の推移)
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