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2023/12/07 11:18
イーストスプリング・インベストメンツは12月6日、「2024年の市場展望」を発表し、「2024年は景気サイクルの転換にとどまらず、世界経済と投資環境は長期的な構造転換を経験する」と見通した。イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)のCEO(最高経営責任者)兼暫定CIO(最高投資責任者)のBill Maldonado氏は、「投資家は、さまざまな転換から生じるチャンスをつかむと同時に、潜在的リスクと2023年に学んだ教訓に留意すべき」と指摘する。「世界経済は、金融引き締めの効果が本格的に波及するにつれて、それまでのレジリエンス(耐性)の一部が失われる」という見通しのもとで、2023年にあったようなボラティリティの大きな動きが続くとみており、分散投資とリスク管理によって資産を守ることに留意しつつ、新しく開けてくる「生成AI(人工知能)」や「ネットゼロをめざす温暖化対策の本格化」など「構造転換」によって恩恵を受ける企業群に注目したいとしている。 イーストスプリングが注目している「構造転換」の1つは、「グローバル・サプライチェーンの多様化」だ。特に、中国に集中していた生産拠点がアジア地域に広く分散する動きが強まっていることから、「アジア(除く日本)」に魅力があるとしている。たとえば、中国経済は非常に見通しの悪い状況にあるが、「23年10月、中国政府は景気テコ入れに向け2023年第4四半期における1兆人民元の新規国債発行計画を発表した。また、2023年の財政赤字を対GDP比率でそれまでの3%から3.8%前後に上昇させることも認め、2024年の経済成長を安定させるという政策立案者の意向を示した」と政策が進展していることを評価。中国経済が安定に向かうことで、アジア全般にポジティブな影響が出ると見通している。イーストスプリングは、「中国経済はリバランス(再調整)しているのであって、後退しているのではない」という見方をし、「中国が投資主導型から消費主導型へと成長モデルの転換を推進していることは注目に値する」と評価している。 その上で、「アジア開発銀行(ADB)によると、2024年のアジア途上国の成長率は4.8%で、2023年の4.7%をわずかに上回ると予測」され、「アジア株式のバリュエーションは予想PERでみた場合、米国の18.4倍に対して11.7倍と割安な水準にあり魅力的な価値を提供している」として、アジア株式に魅力的な投資機会があるとしている。また、「今の日本にはこれまでのデフレ時代から脱却する大きなターニングポイントが近づいており、それは日本の企業や投資家にとってプラスになると私たちは考えている」と日本にも強気の見通しだ。 一方、「米国債利回りはイールドカーブ全体で数年来の高水準にあるため、12カ月先までの米国債は魅力的」としている。ただ、「米国が景気後退に陥るというベースシナリオを踏まえて、米国ハイ・イールド債券よりも米国投資適格債を選好する」としている。また、アジアの債券についても非常に魅力的な利回り水準になっているが、高格付けの債券を選好する方が良いとしている。このような安定的な資産を選好しているのは、市場のボラティリティが高まるとの見通しがあるためだ、「投資家は株式市場でも債券市場でもボラティリティに慣れる必要がある」と指摘している。(イメージ写真提供:123RF)
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