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2023/12/27 18:27
2023年の株式市場を振り返ると、「日本株」に久しぶりに注目が集まった1年だった。3月に東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対し、改善策を開示・実行することを求めたことなども日本株の割安さを際立たせるきっかけの1つになり、外国人投資家の資金が活発に流入したことも特徴だった。何より、株価の上昇が目立って大きくなった。たとえば、昨年末から12月26日までの主要株価指数の上昇率では、TOPIX(東証株価指数)で23.64%、日経平均株価は27.64%で、これば米国S&P500の24.36%に匹敵する。米国では「マグニフィセント・セブン」といわれる大型ハイテク株に資金が集中した関係でNASDAQ総合指数は44.03%と大幅高となったが、ドイツのDAXの19.98%、英FTSE100の3.3%などを大きく凌駕したパフォーマンスだった。この勢いが続くかどうか、来年に楽しみを残した年末の推移になっている。 投資信託を使った資産形成が話題になり、日本は国策として「資産運用立国」を掲げるようになっている。来年1月からの「新NISA」のスタートは、その具体的な支援策として、これまでにない大幅な収益非課税枠を国民に提供する制度になっている。ただ、過去3年間の世界の株価動向を映して、SNSなどでは米国の「S&P500」、または、全世界株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動するインデックスファンドを使った資産形成を促すようなコンテンツが溢れている。たしかに、ここ数年の米国株式市場の上昇率は大きく、かつ、円安ドル高の進行によって為替効果もプラスオンされた高いパフォーマンスが確認できるため、「投信による資産形成は、S&P500連動型のインデックスファンドで!」という言葉の説得力は強烈だった。 「貯蓄から投資へ」という大きな転換を後押ししようとしてきた政府や金融機関にとって、投資を始める人が増えることは望ましいものの、その投資先が米国をはじめとした海外であるということについては、もろ手を挙げて歓迎とは言い切れない部分があったろうと想像する。政府が主導する「資産運用立国」という政策も、資産運用によって国民の富を一段と大きく増やすとともに、その資金が株式投資などを通じて国内の経済で循環し、産業界も含めた国全体を活性化させるという姿を美しい未来として描いているはずだ。投信で海外に向かった資金は、大きく育って、最終的に国内の消費などに使われて国内に還流するのだろうが、直接的に国内の株式等への投資が活発化すれば、資産効果は非常にポジティブなインパクトを日本経済に与えることが期待できる。 しかし、投資家にとってはパフォーマンスの優劣は、投資先を選択する際の大きなポイントだ。「新NISA」という大きなメリットを投資家に提供したとはいえ、その資金の投資先を決定するのは、個人投資家の自由である。そして、足元のパフォーマンスが圧倒的に「S&P500」が勝っていれば、投資家の関心は「S&P500」に高まるのは当然のことといえる。 ところが、2023年のパフォーマンスでは、日本株のインデックスが米国株を上回るパフォーマンスを出すことが確認できた。たとえば、高配当株に着目した「上場インデックスファンド日本高配当」は、11月末現在で過去1年間のトータルリターンが30.24%と、「S&P500(配当込み、円ベース)」の23.82%や「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円ベース)」の21.38%を大きく上回っている。過去3年(年率)でも24.63%と、「S&P500(配当込み、円ベース)」の22.89%や「MSCI ACWI(配当込み、円ベース)」の18.75%を上回る成績になった。 「上場インデックスファンド日本高配当」は、「東証配当フォーカス100指数」に連動するインデックスファンドだ。「TOPIX」や「日経平均株価」などと比べると一般的ではないインデックスだが、過去3年にわたってでも「S&P500」や「MSCI ACWI」を上回るパフォーマンスになっている事実は大きい。もっとも、5年(年率)、10年(年率)になると「S&P500」や「MSCI ACWI」に負けてしまうのだが、過去3年の実績が上回っていることから、これから2年、5年と経過する間には、「S&P500」や「MSCI ACWI」を上回るリターンになるかもしれない。 「上場インデックスファンド日本高配当」は、新NISAの成長投資枠の対象銘柄にも含まれている。このような実績の伴うファンドが今後増えてくれば、日本株に対する国内の個人投資家の評価も大きく変わっていくものと考えられる。今後の日本株インデックスのパフォーマンスをしっかり追跡していきたい。(グラフは、「S&P500」に匹敵するパフォーマンスとなった「日本高配当」)
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