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2023/12/29 16:27
2023年の世界市場を振り返ると、主要な市場の中では日本の市場に大きな変化が起こった1年だった。代表的な株価指数である「日経平均株価」は12月28日現在で年初来の上昇率が28.53%となり、これは、米国「S&P500」の24.58%を上回る。一方で、日本の長期金利は新発10年国債利回りが昨年末に0.415%だったものが、0.585%に上昇した。長年にわたって続いてきた日本の超低金利政策が転換する起点となる1年だったのかもしれない。2023年の主要指数の動きを振り返り、2024年を展望してみた。 「TOPIX(東証株価指数)」は24.86%の上昇率となり、日本株の値上がりは多くのセクター(業種)に及んだ。これに対して、米国では「マグニフィセント・セブン」といわれるハイテク大手7社に人気が集中した。ハイテク株の影響度合いが強い「NASDAQ総合指数」は、44.22%の上昇率となっており、これは、2003年に記録した過去最高の上昇率である年間50.01%に迫る勢いだった。「マグニフィセント・セブン」に数えられる銘柄の上昇率は、アップルが54.67%、マイクロソフトが56.64%、アルファベット(A)は57.35%、アマゾンが78.72%、メタ・プラットフォームズが187.25%、エヌビディアが245.94%、テスラが134.21%という驚異的な値上がり率になった。 米国の株価は、一部の銘柄に資金が集中し過ぎたことに対する反動が懸念されている。すでに米国の経済指標の中には、景気鈍化を示すものが出てきていることから、2024年前半には米国は景気後退といわれるような状態に落ち込むという見方が強い。その際に、年末にかけて史上最高値を更新し続けた「NYダウ」などの株価指数は下落することが見込まれ、その際に「集中的に物色されてきた大手ハイテク株に、相当量の売り注文が出て来るだろう」(大手運用会社のストラテジスト)といわれている。「マグニフィセント・セブン」の調整は長引くのではないかとみられ、そのため、2024年は米国株価指数の上昇には限界があるという見方が強い。 日本株については、2023年は3月に東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの上場企業に対して改善策を要請したことが大きな話題のなったが、この際に、日本の上場企業の約5割がPBR1倍割れの水準にあるという市場の割安さも強調された。その結果として、海外の投資家などがインデックスファンドなどを通じて日本株を幅広く買う動きが続いた。2024年以降も、このような動きは継続すると期待されているが、1年間で「TOPIX」を約25%も押し上げたような勢いが続くかどうかは、日本企業の業績や株主還元姿勢の現れ方次第という見方が一般的だ。現在、日本の半導体関連産業、また、温暖化対策など環境保全関連として日本企業を再評価する動きがでている。 一方、その他の市場では、欧州のドイツ株指数「DAX」は19.95%高と堅調な値動きだったが、英国株「FTSE100」は3.64%高と横ばいの推移だった。欧州経済は2024年は厳しくなるという見方が一般的で、その見通しを映して債券市場では長期金利が下落傾向にある。10年ものドイツ国債利回りは昨年末2.571%だったが、12月28日には1.944%と2%割れの水準に低下。英10年国債利回りも3.672%だったものが3.493%に低下した。ウクライナ問題によって欧州のロシアへのエネルギー依存が表面化し、依然としてウクライナ問題に解決の見通しがたたず、2024年においては欧州経済に明るい見通しは描きづらい状況だ。 また、中国株式市場は2023年に下落した。香港の「ハンセン指数」は13.84%安となり、「上海総合指数」は4.36%安、そして、ハイテク株の比率が高い「深セン成分指数」は14.30%安だった。香港の「ハンセン指数」は3年連続、中国本土の株価指数は2年連続での下落となった。先進国の市場が2023年は比較的堅調に推移したにもかかわらず、中国市場が回復しなかったことによって、中国市場の割安度が強調されることになっている。中国本土に上場する銘柄と香港・ニューヨーク上場の中国企業株で構成する「MSCIチャイナ・インデックス」の12カ月先予想PER(株価収益率)は9倍台に低下してしまっており、2024年はこの割安の修正が期待できるとする見方は少なくない。 その他の資産では、「NY原油先物」は10.58%安、「NY金先物」は14.09%高になった。原油価格は一時期は1バレルあたり90ドルを超える場面もあったが、70ドル台前半で越年しそうだ。それと比較すると年末にかけて2000ドルの大台を超えてきた金の強さが目立った。そして、為替はドル/円で7%程度の円安・ドル高になった。2024年は日米の中央銀行の金融政策は、「利上げのタイミングを測る日銀」と「利下げ転換のタイミングを測る米FRB」というように「真逆」の金融スタンスになる。金融政策決定会合のタイミングでは、為替が大きく動くことも考えられ、注意が必要だ。(イメージ写真提供:123RF)
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