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2024/01/04 17:27
国民年金基金連合会が1月4日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると2023年11月の新規加入者数は3万191人で加入者総数は314万4774人になった。11月の新規加入者数は前年同月比でマイナス40.4%減となり、10月の30%減を上回る減少率になった。新規加入者数は、2023年2月から10カ月連続で前年同月比割れになっているが、11月の減少率が最も大きい。新規加入者数の水準は、コロナ・ショックで新規加入者数が激減した2020年5月の2万1556人以来の低水準になった。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(イデコプラス:中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は6958事業所、対象従業員数は4万4440人になった。 11月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は4182人(前月4597人)、第2号加入者は2万4393人(前月2万9305人)、第3号加入者は1326人(前月1583人)となった。第2号新規加入者数は、2020年5月の1万7998人以来の低水準だった。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万4541人(前月1万7498人)。「企業年金あり」が5390人(前月6087人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は4462人(前月5720人)となった。 iDeCoへの関心が急速に低下しているようだ。これは、この1月にスタートした「新NISA(少額投資非課税制度)」が、生涯の非課税投資枠1800万円と大型化したことによって、「NISAの枠(一般NISAで600万円、つみたてNISAで800万円)では足りない分をiDeCoで補おう」と考えて利用されてきたiDeCoの利用ニーズが縮小したことが影響していると考えられる。従来は、つみたてNISAの非課税限度額800万円だけでは将来の備えに不足すると考え、iDeCoでの積み立ても並行して行っていた人が、NISAだけで1800万円の非課税投資枠があるのであれば、新NISAの限度額をまず消化しようと考えるのは当然だ。新NISAでは、「つみたて投資枠」で年間120万円(月額10万円)に加えて、「成長投資枠」で年間240万円の非課税投資枠を利用できる。 30代、40代という長期投資が可能なサラリーマン世帯で、毎月10万円の積立投資が可能な家計は、どの程度を占めるのだろう? 総務省の家計調査によると、2023年10月分(2023年12月8日発表)で、2人以上世帯の可処分所得は45万8643円、消費支出は31万2658円という結果だった。統計上では、差し引き14万5985円が貯蓄可能額ということになっている。この統計では、世帯構成員は2.93人であるため、子供のいない世帯を多く含んでいる。子育て中で重い住宅ローンを抱えている世帯などでは、「貯蓄に回せる余裕はない」という世帯も少なくないだろう。 さらに、月額10万円以上の投資を希望するのであれば、「成長投資枠」を使って毎月20万円(合計30万円)まで積立資金を増額することも可能だ。かなり裕福な家計であっても、統計上の貯蓄可能額の2倍以上に相当する月額30万円を超えて投資ができる世帯は少ないだろう。そう考えると、資産形成のための口座は「新NISA」で十分ということになる。また、iDeCoは60歳になるまで換金できないという縛りがあるため、いざという時の換金性を考えてもNISAが選好される理由になる。 今後、iDeCoについては、今後、「年金」としての性格をより強調し、「年金のための積立投資枠」としての認知度を高める努力が必要になると考えられる。その点では、現在のiDeCoにおいては、「年金としての払い出し」がほとんど活用されす、ほぼ全てが一時金として出金されている。これに伴って、払い出し資金用として「年金保険」を用意するプランも少なくなっている。「年金保険」には生涯にわたって積み立てた資金を年金として受け取ることができる仕組みもある。状況に応じて10年など年限を決めて受け取ることもできる。年金として受け取ることによる税制優遇も適用される。このような単なる資産形成口座ではない、「確定拠出年金」という「年金を作る口座」としての価値が浮上することによって、改めて利用ニーズは高まってくると考えられる。(グラフは、iDeCo新規加入者数の推移)
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