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2024/03/26 18:48
新NISAが始まって、一番人気が「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の積立投資で、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「SBI・V・S&P500インデックス」、あるいは、「iFreeNEXT FANG+インデックス」など米国株インデックスファンドの人気もある。いずれも、時価総額の大きな銘柄で構成されたインデックスであり、その上位組み入れ銘柄は、米国を代表する「マグニフィセント・セブン」といわれる大型ハイテク株などが中心になっている。これら代表的なインデックスが史上最高値に上昇したことで、出遅れている銘柄群として中小型株に注目したファンドが人気化しつつある。前週の資金流入額のトップに「インド小型厳選株式ファンド」が立ち、国内の小型株に投資する「ひふみマイクロスコープpro」もトップ10に入った。また、「フィデリティ・新興国中小型成長株投信(愛称:エマージング・ハンター)」の新規設定も発表されている。この中小型株に着目した投信の人気が定着するものか注目したい。 投資で成功する秘訣は異なる性格の資産に幅広く投資することだ。魅力ある投資先を見つけて、そこに一点集中投資した方が、投資資金の効率的な活用につながりそうだが、これと決めた投資対象が思惑通りに値上がりするとは限らない。上がると思った資産が下落し、思わぬ資産が大きく値上がりするというようなことはよくあることだ。そこで、様々な資産を少しずつ保有して、個々の資産に上がり下がりはあっても、全体として緩やかに成長するような分散投資ポートフォリオを保有することが推奨されている。 ところが、現実の市場は、一部の人気ある資産に誰もが揃って投資するということになりがちだ。現在の資金流入上位ファンドを見ても「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」、「インベスコ世界厳選株式オープン」、「半導体関連 世界株式戦略ファンド」など、個々に特徴のあるファンドとはいえ、その組入れ上位銘柄の顔ぶれを見ると、マイクロソフトやアップル、エヌビディア、アマゾン、メタ・プラットフォームズなど米国を代表するハイテク大型株の組み入れが目立つ。もちろん、それぞれのファンドの投資方針にそって、英国の金融サービス会社「3iグループ」や米不動産の「アメリカン・タワー」、あるいは、米ヘルスケアの「ユナイテッドヘルス・グループ」やエネジードリンクで知られる米「モンスター・ビバレッジ」など、ハイテク株にカテゴライズされない銘柄への投資も無視できないが、総じて「米国の大型株」を主たる組み入れ銘柄にしているということはできる。 この結果、米国のハイテク株の構成比率が高い米「NASDAQ総合指数(円ベース)」は、過去1年間で50%を超える上昇率となり、「S&P500」、「NYダウ」ともども今年になって史上最高値を更新している。このような米ハイテク大型株への集中的な投資が続いていることで、これら銘柄については割高な水準に上昇してしまっているという見方も強い。経済の変調による業績の下方修正などがあれば、「一気に株価が下落するのではないか」という指摘もある。 このような米国大型ハイテク株への集中投資への警戒感からか、このところ急速に人気を集めているのが、中小型株を対象にしたファンドだ。特に、「米国」に対して「新興国」の小型株に投資するファンドへの注目度が高まっているようだ。たとえば、3月18日に新規設定された「インド小型厳選株式ファンド」は、ファンド名の通り、インドの小型株式に投資するファンドだが、設定から1週間で純資産残高が275億円を超えた。また、「フィデリティ・新興国中小型成長株投信(愛称:エマージング・ハンター)」が4月24日に新規設定される。この2ファンドは、ともに当初募集が開始されるタイミングで新NISAの成長投資枠の対象ファンドとしてリスティングされている。これまで人気の「米国・大型株」の対極にある「新興国・中小型株」に投資するファンドが相次いで設定されるのは、現在の投資家の関心の方向性にも合致してのことと考えられる。 「フィデリティ・新興国中小型成長株投信(愛称:エマージング・ハンター)」の設定を伝えるリリースでフィデリティ投信は、「中小型株市場はテンバガー(10倍株)の輩出数では群を抜いています。世界経済における新興国の存在感は高まっていますが、世界の株式市場では新興国の占める割合は低水準にとどまっており、今後の拡大が期待されています」と、新興国の中小型株式の魅力を伝えている。フィデリティの調査によると、過去10年でテンバガーを達成した銘柄数は、先進国の51銘柄に対し、新興国の中小型株では182銘柄と3倍を超えている。しかも、テンバガー達成銘柄の過去10年の上昇率は平均が約30倍になっているという。 このような新興国の中小型株を対象にしたファンドは、「全世界株式(オール・カントリー)」や「米国株式(S&P500)」のインデックスファンドに代わって投資するというよりも、それらインデックスファンドへの投資を継続しつつ、併せ持つ形で投資を検討する価値もあるだろう。併せ持つことによる分散投資効果も期待できると考えられる。分散投資としては各種の債券ファンドもアピールされているが、債券ファンドは中小型株式ファンドと比べると、人気化はしていない。分散投資の定着を感じさせる投資行動が広がっていくのかどうかに注目していきたい。(グラフは、パフォーマンスで先行する「S&P500」を追う「オル・カン」と「新興国」)
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