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2024/05/01 17:48
国民年金基金連合会が5月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると2024年3月の新規加入者数は4万4316人で加入者総数は328万4971人になった。3月の新規加入者数は前年同月比で3.3%増となり、前月に13カ月ぶりに前年同月比を上回った後、2カ月連続で前年同月比を超えた。今年1月から新NISAが始まって、国民の間で「貯蓄から投資へ」の流れが生まれつつあり、iDeCoへの関心も復調してきているようだ。ただ、加入者のコア(核)である第2号加入者の新規加入者数が前年同月比を下回っており、全体的な力強さにはかける。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(イデコプラス:中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は7424事業所、対象従業員数は4万7012人になった。 3月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は5914人(前月6218人)と前年同月比31.7%増、第2号加入者は3万6128人(前月3万7365人)と同0.8%減、第3号加入者は1926人(前月2224人)と同15%増になった。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が2万1032人(前月2万1052人)。「企業年金あり」が8015人(前月8723人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は7081人(前月6329人)となった。「企業年金あり」の新規加入者が前年同期比17.5%減と大きく落ち込んだ。 iDeCoは、企業型確定拠出年金(DC)を補完する制度として誕生し、企業型DCの加入者が、転職によって企業型DC制度がない企業に移った時などに、従来の企業型DCの運用を継続するために、個人の資格で加入できるようにしたものだ。ただし、2017年1月に制度改定し、そもそも企業型DCの加入対象者ではなかった第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)や公務員にも加入対象を広げたことによって、公的年金(国民年金や厚生年金)を補完する国民的な制度になった。そして、2017年3月末時点では、iDeCoの運用において、資産の64.6%を元本確保型商品(うち預貯金は38.6%)を占めていたが、2023年3月末時点では元本確保型商品の資産に占める比率は34.2%(うち預貯金は25.6%)になり、65.8%は日本株式や海外株式などの運用商品で運用されるようになっている。 新NISAが運用商品として投資信託や上場株式、あるいは、上場投信(ETF)や上場不動産投信(REIT)などと言ったリスク性商品のみでしか運用できないことに対し、iDeCoや企業型DCでは、同じように収益非課税の制度ながら預貯金や保険商品といった元本確保型商品も運用対象にしている。原則として60歳になるまで換金することができない確定拠出年金で元本確保型商品で運用することは大いに非効率的な行為だと批判されできたが、さすがに、65%ほどを元本確保型商品で占めていた状況は是正され、近年は資産の大半をリスク商品による運用が占めるようになっている。このような運用商品の構成比の変化は、つみたてNISAや新NISAなどの制度の普及を通じて、国民の金融リテラシーが向上してきた結果とみることもできるだろう。 統計的なデータで、iDeCoや企業型DCの運用成績について制度全体を示すものはないが、2024年になって日本株式も米国株式も欧州株式も全て主要な株価インデックスが史上最高値を更新しているため、長期にわたって株式に投資する運用を行っていた加入者の運用成績は、相応のプラスのリターンを確保できているのではないだろうか。iDeCoは、NISAと同様に投資商品の収益にかかる20%の税金が非課税であり、かつ、毎月の積立資金も所得控除の対象になる。原則60歳まで換金できないという縛りがあるため、目的は老齢期の年金の補完と限られたものになるが、積極的にリスクをとって大きな投資収益をめざす運用には、非常に魅力的な制度になっている。再び、iDeCoの加入に人気が戻りつつあり、今後の成長に期待したい。(グラフは、iDeCo新規加入者数の推移)
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