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2024/05/13 17:36
日経平均株価が34年ぶりに高値を更新し、国内株式ファンドへの注目が高まっている。ただ、日経平均株価は、2月22日に史上最高値を更新した後、3月22日に4万888円の高値を付けた後はやや下落して3万8000円台で一進一退となっている。国内株式市場は、この10年あまりは徐々に下値を切り上げる動きだったが、2023年から上昇に勢いがついた。ただし、その上昇過程にあって全ての銘柄が等しく上昇したわけではない。過去3年間を振り返ると、「トヨタ」「半導体」「銀行株」が目立って大きく値上がりしている。引き続き、国内株式市場には強気の見方が多いが、その中にあっても、銘柄の選択によってパフォーマンスに大きな違いが出ることに留意したい。国内株式への関心の高まりに伴って、「日経225」や「TOPIX(東証株価指数)」に連動するインデックスファンドの人気が高まっているが、業種別インデックスやアクティブファンドも合わせて検討したい。 国内株式を対象とした投資信託で2024年4月末時点の1年トータルリターンのランキング(レバレッジ型、通貨選択型を除く)は、トップが「GX 半導体関連−日本株」で年率92.11%、次いで、「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」の72.40%、「(NEXT FUNDS)銀行上場投信」の68.18%になっている。過去1年間の「日経平均株価」は33.09%、「TOPIX」は33.33%だったことと比較すると、これらパフォーマンス上位のファンドがインデックスに対して2倍程度のパフォーマンスをあげていることがわかる。 「日経平均株価」や「TOPIX」といった国を代表するような株価指数は、市場全体の値動きを代表するように作られているため、業種を分散し、幅広い銘柄に分散投資するようになっている。「日経平均株価」であれば225銘柄であり、「TOPIX」になると2000銘柄以上に分散投資している。当然、数百銘柄以上に投資すれば、業績の悪い会社、企業成長が行き詰っている会社も含まれることになる。業績が悪い会社の株価は上昇しにくいものだが、市場全体の値動きを表すためには、そのような株価が下落する銘柄があることもまた、事実として必要になってくる。ところが、投資家としては、わざわざ市場のマイナスにまで付き合う必要はない。できれば、株価が上がると見通せる銘柄だけに投資したいと考えるだろう。そうして、絞り込んだ銘柄群に投資するファンドが、株価指数を大きく超えるパフォーマンスを生み出す結果になっている。 たとえば、「GX 半導体関連−日本株」の投資銘柄数は32銘柄。レーザーテック、ディスコ、東京エレクトロンなど半導体関連企業のみで構成されている。「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」は、国内トップ(株式時価総額で第1位)のトヨタ自動車が組み入れ比率で50%、残りをデンソーや豊田自動織機などトヨタグループ企業で構成され、4月末現在の組み入れ銘柄数は19銘柄となっている。「(NEXT FUNDS)銀行上場投信」は、東証に上場する全銀行株を対象としているため、投資銘柄数は78銘柄とやや多くなるが、「銀行」という限られた業種のみに特化している。当然、この3ファンドは、それぞれが特化する銘柄群によってもパフォーマンスの内容は異なり、かつ、「(NEXT FUNDS)銀行上場投信」は業種全体を対象としている点では、「TOPIX」などの株価指数に似通った商品性格になっている(業績の良いもの悪いものを全て含む性格がある)。 4月末時点でのパフォーマンスが、今後も市場の方向性を決定付けるというものではない。「GX 半導体関連−日本株」の上昇には、米国でのエヌビディアを中心とした半導体株人気が波及したということがあろう。国内にエヌビディアに匹敵するような企業はない。その点では、国内株を対象とした「半導体関連」にどれほどの持続力があるのかは不透明だ。「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」にしても、前年度(2024年3月期)こそは営業利益が5兆円超という過去最高益を2兆円も上回る強烈な決算だったトヨタ自動車が、引き続き前年度ほどの好調を持続することはできるだろうか。まして、「(NEXT FUNDS)銀行上場投信」のように銀行業界全体をカバーするような投信の場合は、今後の金利上昇局面において経営力が問われると業績が低迷する銀行も出て来るだろう。日本経済全体が復活するという力強い見通しに支えられた株高が継続するとは限らない。 このように個々に投資対象を絞り込んだファンドの見通しに確信が持てないということであれば、むしろ、日本株全体に投資する「TOPIX」や「日経225」に連動するインデックスファンドの方が良いということにもなろうし、日本だけでなく、広く外国の株式に投資する全世界株式インデックス「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動するインデックスファンドの方が良いという結論になるのかもしれない。投資先を海外にまで広げる場合、現在の「行き過ぎ」といわれている為替相場の円安をどのように対処するかも問われることになる。今後、「行き過ぎた円安」が是正され円高に戻る考えた場合は、海外資産に投資していると「為替差損」が発生することになる。 あるいは、運用会社の運用力に期待するアクティブファンドに期待するという投資の選択肢もある。過去3年の運用成績では、「日経平均高配当利回り株ファンド」(3年年率32.55%)、過去5年の運用成績では「情報エレクトロニクスファンド」(5年年率22.26%、10年年率17.37%)、過去10年では「DIAM 新興市場日本株ファンド」(10年年率17.37%)、「One 国内株オープン 『愛称:自由演技』」(同15.79%)などが浮かび上がってくる。特定の業種等に限定されず、広い投資対象の中から、優れた企業のみを厳選して投資するというアクティブファンドには、インデックスファンドにはない魅力がある。 このように、国内株式に投資するファンドとして考えても様々な選択肢がある。パフォーマンスや下落リスクなど、個々のファンドの過去の運用成績を良く吟味して、自分自身の投資の目的に適ったファンドを選びたい。(グラフは、TOPIXをけん引する「銀行株」「半導体」「トヨタ」)
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