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2024/05/17 17:45
フィデリティ投信は5月16日、「旗艦3ファンド メディア・ブリーフィング」を開催した。同社を代表するファンドである「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」のポートフォリオ・マネージャーであるサム・シャモビッツ氏(写真:左端)とモーゲン・ペック氏(写真:中央の左)、「フィデリティ・USリート・ファンド」のポートフォリオ・マネージャーのスティーブ・ビューラー氏(写真:中央の右)、「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」のポートフォリオ・マネージャーであるアレキサンダー・カラム氏(写真:右端)が揃って来日した機会に、それぞれのファンドの運用の現状等を説明した。これら旗艦ファンドは、それぞれに複数のコースの合計であるマザーファンドベースで残高が8000億円を超える巨大ファンドとなり、日本を代表するようなファンドになっている。 「フィデリティ・世界割安成長株投信」の運用チームは、「フィデリティ・日本割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター・ジャパン)」の運用も担っている。モーゲン・ペック氏は、愛称に「テンバガー(10倍化株)・ハンター」と名付けているファンドの特徴である成長余力の大きな割安株を発掘するにあたって最も重視しているのは、「クオリティ(品質)」と強調した。「柔軟性があり、社会の変化に対応して持続的な成長ができることが重要だ。価格決定力があるなど優れたビジネスを展開し、キャッシュフロー創出力が高いこと、健全なバランスシートを持っていることなども大事だが、何より経営陣が適切な資本配分を行い資本コストを上回る資本利益率をあげていこうという意志と実現能力を持っているかということがポイント」と語った。そして、「2年ほど前から米国をアンダーウエイトにして、日本、アジア、欧州、英国などに資金を振り向けている」と語った。 共同運用者のサム・シャモビッツ氏は、アナリストとして日本株の調査に携わってきた経験があり、日本株についての理解も深いが、「日本の中小型株に投資機会が多い」と語っていた。日本の企業は、資本効率化改革や株主還元の強化に向かっており、それが株式価値の向上につながっているが、日本の中小型株は数が多いために、企業の変化が株価に織り込まれずに割安になっているケースが少なくないという。そして、「英国の金融など欧米の金融に割安な銘柄が多い」、「中国、台湾、韓国、インドなどアジアにも魅力的な銘柄は多い。情報技術関連やエネルギーなど、これまで注目されてこなかった分野に強力な投資機会がある」と語り、ボトムアップ調査によって魅力的な銘柄を割安に投資できているという。 「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」のポートフォリオ・マネージャーであるアレキサンダー・カラム氏は、「2020年のコロナショックの後はハイ・イールド債と国債との利回り格差も大きく広がって、ボラティリティ(価格変動率)が高く、投資機会が抱負だった」と振り返った。その当時と比較すると、「現状は信用スプレッドが3.15%と非常に狭くなっていて過去数年でハイ・イールド債が最も割高な水準にある」と語り、慎重に投資先を選択しているとした。たとえば、「ディストレス債券(経営危機に陥り行き詰っている企業に対する債権)」は国債に対して10%ポイントのスプレッドがあり、魅力的な投資対象になっているという。同社ではディストレス債券に特化した調査チームがあり、そのチームと強力しながら企業価値を見極めて魅力的な投資対象を選定しているとした。その他にも、商業用不動産へのエクスポージャーが比較的低い地銀、コロナ禍からの回復が続く航空機リース、医療・ヘルスケア、エネルギーなどの分野にも魅力的な投資対象を見出せるとして、同社のボトムアップ調査に基づいて慎重な上でも必要なリスクテイクを行っていると語っていた。 「フィデリティ・USリート・ファンド」のポートフォリオ・マネージャーのスティーブ・ビューラー氏は、コロナショック後に米国リートで配当の減配などによって2%台半ばにまで低下した配当利回りが現在では4.42%とコロナショック前の水準に回復してきたと語った。今後は、業績に見合った配当成長が期待され、2024年は5%程度の配当成長率が期待できるとした。そして、今後の米国リート市場の大きなトレンドとして「AI(人工知能)の発展に伴うデータセンター需要の拡大」、「高齢化」、そして、「生活必需品を提供する小売店」などに注目しているとした。たとえば、今後米国における65歳以上の高齢者は2030年までに1800万人(2020年比)増加する見通しにあるものの、介護付き施設の供給は低水準にとどまり、高齢者住宅の入居率が高まるとともに賃料の上昇なども期待できるとした。 また、商業施設はeコマース(電子商取引)の発展に伴って大型量販店などは衰退していったが、生活必需品を提供する小売店の需要は堅調で、郊外で小売店に店舗用地を提供するストリップ・センターは新規の供給が限定的であるため、賃料の堅調な伸びが期待できるという。そして、AIの利用拡大はAIサーバーやデータセンターの需要を押し上げ、AIサーバーは消費電力が大きいため新設することが極めて難しく、近年は新設物件は完売の状態が続いている。今後、データセンターの容量に対する需要は2030年までに年率13.5%で成長すると見込まれており、それに見合う供給が難しい中で賃料の引き上げが期待できるとした。(写真は左からサム・シャモビッツ氏、モーゲン・ペック氏、スティーブ・ビューラー氏、アレキサンダー・カラム氏)
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