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2024/05/20 16:51
「中国株式は外せない資産」と強調する運用会社の商品企画やマーケティングの担当者は少なくない。中国株は2000年代に「BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)」ブームに乗ってリーマンショックの前まで大幅に上昇する局面があり、リーマンショックの調整後も2015年頃までは新興国のリーダーとして株高局面が続いた。ところが、米中対立が先鋭化し、その後、中国不動産大手・恒大集団(エバーグランデ)の経営悪化などによって中国不動産バブル崩壊といった見方が台頭し、不良債権を抱えた銀行の経営不振によって経済が停滞する「日本化」の懸念が高まったこともあって株価が低迷する時期が続いている。MSCI中国指数は2021年から2023年まで3年連続で2ケタマイナス成長の不振だが、「中国株のPERはMSCI中国ベースで11倍程度と2000年以降の平均14.67%を大幅に下回る水準にある。3年連続で株価指数が下落(2000年〜2002年)した後には株価が大幅に反発した(2003年は80%上昇)こともあり、きっかけさえあれば中国株の復調が期待される」との見方もある。 中国政府は5月17日に、総合的な不動産支援策を発表した。何立峰副首相が売れ残っている不動産物件を地方政府が買い取って地域の低所得の住民向けに再販することを認めると発表した。同時に中国人民銀行(中央銀行)がローン金利の下限撤廃や頭金比率の引き下げなど住宅ローン規制の緩和を発表した。さらに、1兆元(1380億ドル)規模の貸付制度を確保し、手頃な価格の住宅向け再貸付制度(銀行融資5000億元相当)を立ち上げるほか、古い住宅が立ち並ぶ都市部の再開発といった政策を支援するため、担保補完貸付制度(5000億元規模)を利用可能にするとした。これを受け、恩恵が期待される銘柄を中心に買いが広がってCSI300不動産指数は同日に9.1%上昇した。中国政府の景気刺激策の動きが鈍いことが、株価の頭を抑えてきただけに、政府と中央銀行が足並みをそろえた対策を打ち出した意義は小さくないと考えられる。 中国政府の不動産対策を受けて5月17日の香港・ハンセン指数は19553ポイントと2023年5月以来約1年ぶりの高値に進み、上海総合指数や深セン成分指数も年初来の高値水準に上昇している。2024年になってからの年初来上昇率は、5月17日時点で、ハンセン指数は14.70%と、TOPIX(東証株価指数)の16.03%にはおよばないものの、米S&P500の11.18%や英FTSE100の8.88%、独DAXの11.66%を上回っている。中国本土の上海総合は6.02%、深セン成分指数は1.94%と遅れているものの、底入れ機運は高まりつつある。 3年連続で株価が下落したことによって中国株ファンドの人気も離散してしまっている。現在、中国を単独で投資対象にするファンドで残高トップの「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」は残高が206億円しかない。このファンドは2021年6月には741億円の残高があったところから3分の1以下の水準だ。第2位の「三井住友・ニュー・チャイナ・ファンド」も176億円だ。こちらも2021年6月の残高約340億円から約半減している。このようにファンドの純資産総額が減少しているのは、株価が下落したことに加え、資金が流出した影響も大きい。多くの投資家が、この3年で中国株に見切りをつけて、投信を解約してしまったのだ。 しかし、今年に入ってファンドの基準価額は回復してきている。「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」は4月末時点で過去3カ月のトータルリターンが24.18%、 「三井住友・ニュー・チャイナ・ファンド」も同16.14%と3カ月で2ケタリターンをあげている。これは、同期間の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の10.78%、「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」の8.55%などを上回る成績だ。もちろん、数カ月間のパフォーマンスが良かったからと言って、その結果だけで、これから先も期待できるというものではない。 ただ、2024年1−3月期の中国の実質GDP成長率は前年同期比5.3%と、市場予想を上回った。IMF(国際通貨基金)による2024年(通年)の経済成長率予測では中国は4.6%と、インドの6.8%には劣るものの、全世界の3.2%を上回り、米国の2.7%や日本の0.9%などを大きく上回っている。確かに、2003年〜2007年に見られた年率10%を超える高い成長は難しくなり、2023年の5.24%をも下回る成長率予想だが、先進国と比較すれば依然として高い成長を持続している。3年にわたって株価が下落したという動きを重ねれば、中国株に対する見直しの余地がでてくるのではないだろうか。株価が底入れの動きとなっている中国株の今後に注目していきたい。(グラフは底入れの兆しがある中国株ファンド)
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