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2024/05/24 15:18
ナティクシス・インベストメント・マネージャーズは5月23日、仏パリからグローバル・マーケット戦略責任者であるマブルック・シェトゥアン(Mabrouk Chetouane)氏(写真)を招き、メディア向けに初めての説明会を開催し、当面のグローバル・マーケットに関する見解を語った。ナティクシス・インベストメント・マネージャーズは、グループに20以上の独立したアクティブ運用会社を擁し、200以上の投資戦略を提供。グループ運用資産は2023年12月31日時点で1兆2886億ドル(約200兆円)という大手の運用会社だ。国内公募投信では、「朝日Nvestグローバルバリュー株オープン」の実質的な運用を担っているハリス・アソシエーツや「ルーミス米国投資適格債券ファンド(毎月決算型)」の実質的な運用者であるルーミス・セイレスなどが、ナティクシスグループの運用会社として知られている。 シェトゥアン氏は、まず、日本経済についてレジリエント(弾力性があり耐性が強い状態)で緩やかに成長しているとして、日本株式市場についてもポジティブな見方をしているとした。特に、PMI(購買担当者景気指数)の中で変動が大きな製造業の輸出が上向いていることを評価し、「経済活動のボラティリティが改善していることを示している。これは、日本のみならず、中国やドイツでも同じような傾向があり、グローバルな貿易活動が安定していることを表している」として、グローバルに株式投資にポジティブな要因の1つとした。マルチアセットでのポートフォリオ構築におけるグローバル株式ポートフォリオではベンチマークで日本株への投資比率が5%のところ、昨年7月以降は9%にオーバーウエイトしている。 また、日本においてインフレ期待が高まっていることも日本の株式市場にはポジティブな要因とした。そして、インフレ期待の強さは金利の上昇につながり、それが、急速に進んだ円安に歯止めをかける役割が期待され、「為替市場は安定的に推移するだろう」と見通している。市場の一部に根強い日銀による「利上げ」は当面は期待できないとした。「日銀は、YCC(イールド・カーブ・コントロ−ル)を解除し、国債の買い入れ額が減額するなど、金融政策の正常化に向けた動きを行ってきている。さらに踏み込んで利上げを実施するのは、時期尚早という考えが強いだろう。少なくとも年末までは利上げに動かないのではないか」とみていた。ただ、実質金利が上昇することによって円安が急速に進行するようなこともなく、為替が比較的安定することによって企業活動にもプラスの影響が出て、これが日本株式市場にも良い影響を与えるだろうとした。 一方、日本を含む世界経済への影響力が強い米国の経済動向については、「潜在成長率である年2%程度の成長に相当する成長を実現する安定期に入ったようだ」として、メインシナリオとして「ソフトランディング」を位置づけている。米国の成長を支えているのは、資本ストックと労働生産性の向上にあるとする。この2つの要素が現在は上昇しており、これが米国の潜在成長率を引き上げていると解説した。「米国の経済が失速するリスクは小さく、FRBが利下げに動くのも後ずれするだろう。利下げのタイミングは、9月、そして、12月にあるだろうが、この見通しは後ろ倒しになるかもしれない。年内に0.25%程度の利下げはあるとみるが、FRBは利下げを急がないだろう」と見通している。 その上で、当面のポートフォリオ戦略としては、「株式にオーバーウエイトをし、特に、日本と欧州の株式には期待が持てるものの、米国も外すわけにはいかない。債券に投資をするのは、まだ早い。中央銀行の金融政策の変更を待った方がいい。それまでは、債券市場の価格変動率は高い不安定な状態が続くだろう。債券市場は2022年、2023年とマイナスパフォーマンスだったが、2024年に関しても反発は期待し難い」と語った。 欧州株式については、現在のところ米国株式と比較してバリュエーションの差が過去最大に拡大しており、この差が縮小していく動きになると予測している。ただし、割高な水準にある米国株式市場であっても、米国企業の期待成長率は大きく「米国株式への投資は継続すべきだ」と語っている。この企業収益の利益成長率見通しは、米S&P500ベースで2024年が9.3%と日本のTOPIXベースの9.8%を下回るが、2025年には14.4%に高まる見通し。ただ、ハイテク株の多いNASDAQでは2024年にも25.2%の成長率が予測され、この高い成長率が高値圏にある株価を下支えすると見通していた。
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