2024/06/10 10:36
「インベスコ 世界厳選株式オープン<愛称:世界のベスト>」は、2017年以来、2024年5月まで89カ月連続で資金流入が続いている。純資産残高は「毎月決算型」「年1回決算型」「奇数月決算型」の為替ヘッジあり・なしの6ファンドの合計で1兆5000億円を超えた。取り扱い販売会社の数も2024年5月末時点で57社と、2021年末の27社から2年5カ月で2倍以上に増えている。このように純資産残高や取り扱い販売会社が拡大しているのは、同ファンドの安定的に優れた運用成績があってこそだ。同ファンドの運用責任者であるスティーブン・アネス氏(写真)に、同ファンドが好調な運用成績を実現できる背景等について聞いた。
――このファンドがどうして安定した高いパフォーマンスを残していると考えていますか? 「成長」「配当」「割安」に着目した上で厳選して投資するというファンドのコンセプトが優れているのでしょうか? あるいは、運用チームが優れているのでしょうか?
運用成績は、全ての要因が重なり合った結果です。「世界のベストに厳選投資する」という目的を実現するため、日本を含む世界の株式(新興国を除く)の中から、「成長(景気動向に左右されずに成長が期待できる)」と「配当(継続的な配当や増配など質の高い配当を行うことが期待できる)」、そして、「割安(見過ごされている投資機会)」という3つの観点に着目して投資銘柄を厳選しています。私たちは、この銘柄選定のプロセスを「株式投資の王道」と考えており、この投資哲学を堅持して運用しています。
また、運用チームは多様なバックグラウンドを持つ経験豊富な運用のプロフェッショナルで構成しています。たとえば、私は2002年にトレーニー・アナリストとしてインベスコに入社して以来、22年間にわたって当社で継続して運用業務に携わってきました。チームのポートフォリオ・マネジャーの1人であるジョー・ダウリングはM&Aを専門に行う会社から来ました。アンドリュー・ホールはヘッジファンドの出身です。そして、もう一人のポートフォリオ・マネジャーのエミリー・ロバーツはセルサイドで消費財関連のアナリストをしていました。アナリストのユヤング・ツァングは会計士の資格をもっています。
私やアンドリューは、業界経験が20年を超えますが、ジョーとエミリーは10年ちょっと、アナリストの3人は5年〜7年という経験の若手です。このように異なるバックグランドを持ち、世代も違うメンバーが、それぞれジェネラリストとして世界の企業を幅広く見渡して、見過ごされた割安な投資機会を探しています。多様な価値観で魅力的な銘柄をピックアップできることが、チームとしての強みになっています。
また、運用チームの拠点はロンドンから電車で1時間半くらいの郊外にあるヘンリー・オン・テムズにオフィスがあります。運用に専心できて、長期に物事を考えるに適した立地です。そして、ヘンリーには私たち「グローバル株式チーム」以外に、「マルチアセット」「英国株式」「欧州株式」「アジア&エマージング株式」「日本株式」「ESG」「債券」など様々なアセットクラスのチームも在籍しています。彼らと日常的に情報交換することで刺激を得ています。また、米国のヒューストンやニューヨーク、香港などの海外拠点との情報連携も運用に付加価値を与えてくれています。
――個性的なメンバーの意見をくみ上げて、最終的に1つのポートフォリオを作り上げることは、リーダーとして苦労するのではないのでしょうか? チームリーダーとして大切にしているのは、どのようなことですか?
メンバー一人ひとりとのコミュニケーションを大切にしています。市場がグロースに優位な時も、バリューが良い時も、その環境に関わらず市場平均を上回るリターンを目指して運用しています。最終的な決断は運用責任者として私が行いますが、私一人で考えるのではなく、異なる視点で様々な意見を聞くことで、新しい発見や発想が生まれます。
リーダーとして苦労することは、チームのメンバーそれぞれの意見を取り入れていくにあたって、常に最高の投資機会を採用できるわけではないということです。既存の組み入れ銘柄との相関も考慮する必要がありますし、その時々によって想定しておく必要があるリスクにも配慮しなければなりません。どのような局面になったとしても優れたパフォーマンスになり得るポートフォリオを構築するという命題に応え続けることができるよう、日々努力しています。
――アネスさんは、2020年にファンドの責任者に就きましたが、このファンドのパフォーマンスが優れて良くなったのは、過去3年くらいの成績です。アネスさんが責任者に就任して何か変えたのですか?
いろいろと対応して「世界のベストに投資する」というコンセプトをより強化することができたと思っています。
たとえばリスク管理についてお話ししますと、パフォーマンスに影響を与えるいくつかの要素のウェイトを調整し、要素の1つである銘柄選択については、個別銘柄レベルおよびポートフォリオ全体で見たレベルでのリスク分析を一段と重視する対応をとっています。その結果、銘柄選択の効果がよりストレートに運用成績に反映されるようになり、成果として表れています。
また、メンバーの一人ひとりに銘柄を選ぶ際の癖があることがわかっていましたので、それぞれの癖を矯正するためのツールを開発し、それぞれのメンバーがどのような市場局面でも持っている能力を発揮しやすくなるようにもしました。投資アイデアをモデル化してシミュレーションするツールの開発など、運用プロセスを強化するための取り組みをいろいろと実行に移しました。
それらの結果として、2022年のバリュー相場でも2023年のグロース相場でも市場平均を上回るパフォーマンスを残しています。運用プロセス強化の取り組みが間違いではなかったと思っています。
――「世界のベスト」は、様々な投資アイデアの中からベストと考えるポートフォリオをつくる戦略ですが、当面の市場を展望して、有望な投資テーマとして注目している分野はありますか?
ボトムアップアプローチで、市場が見過ごしている魅力的な銘柄を発見してポートフォリオに組み入れていくという運用ですから、特に、投資テーマなどを設定して戦略をたててはいません。ただ、現状で有望な投資対象が見つけやすいセクターをあげると、半導体、ヘルスケア、公益、生活必需品などにチャンスは多いと思います。また、中小型株は大型株と比較してチャンスが多いと思います。中小型株は過去50年で最も割安な水準にあります。これから水準訂正が期待できると思います。
――「世界のベスト」の活用方法など、投資家にメッセージはありますか?
当ファンドは株式投資の王道である「成長・配当・割安」に着目した厳選投資で、景気の良し悪しや、バリューとグロースのスタイルの違いなどに関係なく、どのような環境にあっても、常に市場平均を上回る運用成績をめざしています。ですから、たとえば、「MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」や「S&P500」などのインデックスに投資されている方は「世界のベスト」が分散投資の対象になります。インデックスファンドとは、異なるリスク特性を持っているからです。
また、「S&P500」が史上最高値を更新して、割高になったと感じられた場合、少し市場が落ち着くのを待ってから投資をしようと考えることがあると思います。当ファンドは、常に割安な銘柄への入れ替えを意識して行っていますので、運用チームが皆様に代わって割高な銘柄を売却し、割安な銘柄を購入するという役割をはたしています。
今後も、短期的な市場トレンドやコンセンサスに左右されない長期的視点から、割安な銘柄を厳選し、どのような市場局面にあっても安定した運用成果をお届けできるよう、運用に邁進していきます。