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2024/06/20 18:00
国内株投信では、配当利回りが高い株式に投資するファンドへの資金流入が目立って大きくなっている。「日経平均高配当利回り株ファンド」、「日本好配当株投信」、「日本好配当リバランスオープン2」などには、5月月間で100億円を超える資金流入があった。これら高配当利回り株ファンドは、パフォーマンスの面でもTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価を上回るトータルリターンとなっており、その人気を支えている。同じように国内資産を投資対象としながら、J−REIT(不動産投資信託)も高い分配金利回りを持ちながら人気の外にある。年4%を超える分配金利回りになっているJ−REITにも改めて注目しておきたい。 J−REITは、代表的な銘柄でも分配金利回りが4%〜5%という高い水準に放置されている。たとえば、「日本ビルファンド法人」は時価総額が9900億円を超えるJ−REIT最大の銘柄だが、分配金利回りが4.2%ある。それに次ぐ規模の「ジャパンリアルエステイト投資法人」も4.8%、「日本プロロジリート投資法人」が4.03%など、代表的なJ−REITが分配金利回りが4%を超える。しかも、これらの銘柄のPBR(株価純資産倍率)に当たるNAV倍率(投資口価格を1投資口当たりの純資産で割って算出した指標)も1を割っている。「ジャパンリアルエステイト投資法人」など0.86になっている。三菱地所をスポンサーとして都心の一等地に立派なオフィスビルを多数保有するREITがNAV倍率1割れで、しかも、分配金利回りが4.8%もあるというのは歴史的な割安水準になる。 J−REITについては、特に、オフィスREITは、コロナ・パンデミック後にリモートワークが普及したことによって都心のオフィス需要が減退すると見通されて人気が離散し、その後、市場から忘れられたような存在になってしまった。年々では、日銀がマイナス金利政策を解除し、今後の利上げも検討される中、借入比率の高いREITなどは金利上昇による経営へのダメージが敬遠されるなどということはあった。しかし、日銀の利上げの背景にあるのは、デフレ脱却からインフレの定着を見通しているがためのことであり、今後、日本経済にインフレが定着するのであれば、不動産を保有するJ−REITには追い風となると考えるのが一般的だ。コロナショック後、すでに4年を経て、当たり前のように都心部でのオフィスワークが再開される中にあって、依然としてJ−REITに見直しの機運が高まらないのは不思議だ。 もちろん、個別のJ−REITの割安ぶりだけでなく、J−REITを主要な投資対象にした公募投信にしても、見直される余地は小さくないと考えられる。5月の資金流入状況を見ると、「SBI・J−REIT(分配)ファンド(年4回)」、「野村Jリートファンド」、「MHAM J−REITアクティブオープン(毎月決算)」などに資金流入の動きはみられるが、その流入金額水準はせいぜい30億円程度のもので大きな金額ではない。J−REIT市場の低迷のため、5つ星ファンドである「野村Jリートファンド」ですら、過去3年(年率)トータルリターンがマイナス0.91%とマイナスのリターンになっていることから、積極的な投資対象ではないのだろう。 過去のパフォーマンスは良くないが、「野村Jリートファンド」の月報には、「三鬼商事が発表したオフィス市況データによると、4月末の東京都心5区のオフィスビル平均空室率は5.38%となり、前月末の5.47%から低下」、「地方主要都市の同賃料は多くの地区で上昇」など、オフィス市況の改善を示すような記述もある。これらの動きが、不動産市況の復調と確信できるような動きになれば、J−REIT価格も見直されることになるのだろう。割安に放置されてきているJ−REITやJ−REITファンドについても、その動向を見ていきたい。(イメージ写真提供:123RF)
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