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2024/06/28 17:15
6月28日にドル円相場は、一時1ドル=161円台に乗せた。1986年12月以来、38年ぶりの円安・ドル高水準になる。非常に極端な円安になっていると感じられるが、日米の金利差を手掛かりとした円安相場に勢いがある。このため、投信市場では米国株式をはじめ海外の資産に投資するファンドのパフォーマンスの高さが際立っている。このような極端な動きは、いずれ修正される傾向にある。「行き過ぎた円安」は、どこかで是正に動くだろう。何か極端な動きがある場合は、その反動への備えも含めて投資資産の管理が重要になる。改めて、「分散投資」の重要性が意識されるところだ。 ここ数年間、特に、コロナ・パンデミックで世界経済が瞬間的にマヒした2020年3月以降は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)とAI(人工知能)の成長を手掛かりにした米国株式を中心とした「株高」と、米欧の利上げとは一線を画してゼロ金利を維持し続けた日本円の下落が目立った「円安」が極端に進んだ。このため、資産運用の投資対象としては「米国『S&P500』に勝る投資対象はない」といえるような状況だった。さすがに、米国経済成長の息切れが意識され、インド経済の力強さなどが注目されたこともあって、「米国一辺倒の投資を見直すべき」との見方も台頭し、「S&P500」に偏っていた投資は、新興国も含む全世界株式「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」を投資対象とする動きに移ってきた。 さらに、昨今の極端な「円安」を前にすると、株式投資の地域分散の動きを一歩進めて、「海外一辺倒」の投資資産への見直しも検討した方が良いタイミングではないのだろうか。「S&P500」も「全世界株式(オール・カントリー)」も「海外株式」であることに変わりはない。この投資では、昨年から大きく値上がりした「国内株式」の値上がりの恩恵を取りこぼすことになった。今後、極端に進んだ円安が是正されるような動きになれば、「海外資産」は円高によって(日本人にとって)価値が目減りするということにもなりかねない。この為替変動へのリスクヘッジとして国内資産への投資比率を高める分散投資も検討しておきたい。 内外資産への分散投資を実現するバランス型ファンドの品ぞろえは多い。国内株式・国内債券・先進国株式・先進国債券・新興国株式・新興国債券・国内REIT・海外REITの8つの資産を対象とした「8資産分散」や、国内株式・国内債券・海外株式・海外債券・国内REIT・海外REITの「6資産分散」、あるいは、国内株式・国内債券・海外株式・海外債券の「4資産分散」など、対象資産の数にも選択肢があり、ここに「金(ゴールド)」などコモディティを加えるということもできる。 ただ、これらバランスファンドはここ数年はさっぱり人気がなかった。特に、2022年は株式も債券も同時に値下がりするバランスファンドにとって最悪の市場環境であり、「株式のパフォーマンスがこれほど好調な時に、わざわざ債券を加えてパフォーマンスを悪化させる必要はない」という考え方が強まっていたためだ。しかし、過去3年〜5年ではなく、過去10年〜20年という長期で考えると、必ずしも株式優位の投資環境が続いていたわけではない。 国内外の株式や債券に広く分散投資する「ハッピーエイジング」というバランスファンドのシリーズがある。内外株式への投資比率が90%の「ハッピーエイジング20」、同70%の「ハッピーエイジング30」、同50%の「ハッピーエイジング40」、同30%の「ハッピーエイジング50」、同10%の「ハッピーエイジング60」という5本のファンドでシリーズが構成されている。これは、20代、30代という若い時代はリスク資産である株式への投資比率を高くとることができ、50代、60代では株式への投資比率を抑える方が良いという年代ごとのリスク許容度を反映したポートフォリオ内容にしているためだ。 このシリーズのパフォーマンスを過去3年間で比較すると、株式の組み入れ比率の高い「ハッピーエイジング20」の成績が一番よく、「ハッピーエイジング60」の成績が最低になるということになる。ところが、より過去にさかのぼって運用成績を調べると、たとえば、2018年に米中貿易摩擦の激化で株価が低迷した年は、「ハッピーエイジング20」はマイナス15.52%で「ハッピーエイジング60」はマイナス1.74%だった。株式の組み入れ比率が低いほどマイナス幅が小さくなっている。株式優位な環境が数年にわたって続いたということであれば、反対に株式が債券に劣後するという環境が数年にわたって継続するということもあり得る。 また、「株式」か「債券」か? あるいは、「円高」か「円安」かなどと、今後の見通しによって「S&P500」を買うのか買わないのかというようなことをいちいち判断するのではなく、「市場の動向や変化にかかわりなく安定的な収益を獲得したい」というニーズにもバランス型ファンドは合致する。株式への投資比率が50%の「ハッピーエイジング40」であれば、今後も引き続き株高が続いても収益機会を逃さないし、反対に株価が下落するような事態になったとしても慌てて投資先を変更しなくとも下落率は抑えられたものになるだろう。「円安」と「株高」が極端に進んでいるような今、バランスファンドの効用を見直したい。(グラフは、「ハッピーエイジング」シリーズの過去3年間のパフォーマンス推移)
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