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2024/07/01 17:36
国民年金基金連合会が7月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると2024年5月の新規加入者数は3万3032人で加入者総数は334万3014人になった。5月の新規加入者数は前年同月比で2%減となり、前月に続いて2カ月連続で前年同月比でマイナスになった。特に、第2号加入者(会社員や公務員)で、企業年金のある層で加入者数が前年同月比13.7%減と、前月の19.2%減に続いて2カ月連続で2ケタマイナスと落ち込んでいる。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(イデコプラス:中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は7708事業所、対象従業員数は4万9168人になった。 5月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は4938人(前月5754人)と前年同月比17.7%増、第2号加入者は2万6275人(前月3万1337人)と同5.4%減、第3号加入者は1458人(前月1586人)と同2.9%増になった。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万6002人(前月1万9552人)。「企業年金あり」が5958人(前月6697人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は4315人(前月5088人)となった。 iDeCoの新規加入者数は、例年5月は低迷する。2019年5月は2万463人、2020年5月はコロナ・パンデミックの影響で外出制限があったことも関係して2万2556人という水準だった。そのような低迷期と比較すると、3万人を超える新規加入者を獲得しているiDeCoの新規加入状況は、決して悪い水準ではないといえる。ただ、2024年からは新NISAも始まり、インフレの定着によって日銀の金融政策も転換、、株価は日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新、日本円は38年ぶりの円安水準など、資産運用に追い風が吹いている市場環境であるにもかかわらず、利用者の中核である第2号加入者(会社員、公務員)の利用が伸びない。 この背景には、新NISAの非課税限度額が1800万円に拡大されたことで、個人の資産形成の手段として、まずは、新NISAの枠の消費に重点がおかれ、iDeCoの利用は後回しに考えられているのかもしれない。NISAは解約も自由であるため、子供の学費や住宅ローンの頭金など、様々な目的に利用できる。iDeCoは原則60歳まで換金できないため、老後の生活を豊かにするという目的のために、限定的に利用される制度だ。ただ、iDeCoは掛け金が所得控除の対象になるなど、税制面でのメリットが大きい制度になっている。同じように投資収益非課税の制度であるが、解約自由で使い勝手の良いNISAと、老後の資産形成のために手厚い税制優遇が受けられるiDeCoは、その制度の特性を活かして併用したい制度だ。 現在、iDeCoの制度改定の議論があり、年内にも新しい制度の枠組みが示される予定になっている。資産運用立国をめざす日本では、NISAに加えてiDeCoが2本目の柱として成長することが望まれる。今年に入ってからの新規加入状況の低迷は、より分かりやすく使いやすい制度への改定を望む国民の声を反映しているのかもしれない。(グラフは、iDeCo新規加入者数の推移)
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