2024/07/02 15:39
アセットマネジメントOneが設定する「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド」。運用は、米国の大手運用会社フィデリティ・インベスメンツ(以下、米国フィデリティ)が担う。同じ運用戦略で運用されている米国籍のファンドは、米国フィデリティが35年以上にわたってインデックスを上回る運用実績を重ねてきた旗艦ファンドの1つとして知られた存在だった。2023年12月の設定以来、外国株式ファンドの中でトップを争う運用成績となって注目度が高まっている。同ファンド設定の狙いと運用の仕組み等について、アセットマネジメントOne執行役員投資信託営業本部長の尾崎聡氏(写真:左)とフィデリティ投信の機関投資家営業部長の蒋愛琴氏(写真:右)に聞いた。
――ファンド設定の経緯は?
尾崎 新NISAが始まったこともあって足元では、低コストのパッシブファンドに多くの資金流入が続いているところですが、その中にあって、パッシブ・プラス・アルファを求める投資家の方々のニーズが高まっていることを感じていました。
投資家の皆様のニーズに応えられる運用戦略はないものかと、世界中のファンドをリサーチしていたところ、35年にわたってベンチマークをアウトパフォームし続けている優れたファンドに巡り合ったのです。それは、米国フィデリティの伝統的なボトムアップ運用のファンドで、米国でも残高が大きく、高く評価されているファンドでした。
このファンドの内容を調べると、ボトムアップで銘柄を発掘しているにもかかわらずポートフォリオの組み入れ銘柄数は200〜500銘柄と非常に多い。一般的にポートフォリオに組み入れている銘柄数が多くなると、パフォーマンスがインデックスに似通ってくるものですが、このファンドはベンチマークをアウトパフォームし続けています。一般的なファンドと比べ、多数分散しつつもリターンを追求できるアクティブファンドとして、ぜひ日本の投資家に紹介したいと考え、今回のファンド設定に至りました。
蒋 米国フィデリティの「フィデリティ・ブルーチップ・グロース・ファンド」は1987年12月に設定され、35年以上の運用実績があるファンドです。米国の大型株上位1000銘柄のうち株価純資産倍率(PBR)と利益成長率見通しの総合ランキング上位銘柄で構成された「ラッセル1000グロースインデックス」をベンチマークとして運用していますが、設定来一貫してベンチマークを上回り、設定月の1987年12月末を100とした指数は、2023年9月末時点で6146と61倍以上になり、同じ期間でベンチマークの「ラッセル1000グロース」は3519、「S&P500」は3739でした。この圧倒的な運用成績によって、米国における運用資産残高は457億米ドル(1ドル=155円換算で7兆835億円)という米国フィデリティでトップ3に入る旗艦ファンドになっています。
フィデリティ投信は、ロンドンに本社を置くフィデリティ・インターナショナルのグループですが、1969年に米国フィデリティの初の海外拠点として東京にオフィスを構えたことがルーツです。このため、フィデリティ・インターナショナルの拠点としては珍しく米国フィデリティの運用商品を地域の投資家の皆様に提供できるというユニークな存在になっています。米国で50年以上の運用実績のある「フィデリティ・コントラ・ファンド(日本では「フィデリティ・米国株式・ファンド」)」や、「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」など、米国フィデリティの運用商品も国内籍の投資信託として日本の投資家の方々に届けてきました。
そして、フィデリティ投信は2年前より、国内の運用会社と連携して投資商品を届けるサブアドバイザー事業に本格的に取り組んでいます。アセットマネジメントOne様は、同社の旗艦ファンドの一つである「未来の世界」に象徴されるように、国内の100を超える販売会社の皆様と強固なリレーションシップを構築されています。アセットマネジメントOne様と連携することによって、国内の幅広い投資家の方々に当運用戦略を届けていただくことができます。米国フィデリティが誇る旗艦ファンドを、アセットマネジメントOne様の力を借りて大きなファンドに育てたいと考えました。
尾崎 ファンド名称の「ブルーチップ」という言葉は、ちょうど、このファンドが設定された当時(80年代)に広く使われ始めた言葉で、昔の時代を知る人ならそれが日本でも一般的に「優良企業」を意味した時代があったことを覚えてらっしゃると思います。そんな、昔懐かしい響きを感じる言葉を敢えてネーミングに使ったのは、この言葉を知らない最近の若い人に、それだけ長い歴史を持ち、大事に育てられてきたファンドだということを伝えたいと思ったからです。
また、このファンドの特徴は、現在の「ブルーチップ」だけではなく、「将来のブルーチップ」も発掘してポートフォリオに組み入れていることです。数百の組み入れ銘柄の中で、比率は大きくない銘柄であっても、しっかりと株価が上昇してファンドのパフォーマンスに貢献する力になっているというところは、フィデリティのボトムアップの凄みすら感じています。
――「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド」の運用の特徴は?
蒋 先ほど、200〜500銘柄でポートフォリオを構築しているという話がありましたが、それだけ多くの成長アイデアを発掘することができるというのが、米国フィデリティが長年のボトムアップ・リサーチで培ってきた調査力であると思います。成長アイデアの数が多く分散されていることによって、成長株投資を行いながらも中長期にみて割安な銘柄によるポートフォリオを構築することができています。
従来の投信市場には、パッシブファンドに対して集中投資型のアクティブファンドが提供されていました。今回のファンドは、そこに、分散型のアクティブファンドという新しい選択肢を提供することができると考えています。
その分散型アクティブの特性ですが、グロース株の割安度を測る指数として「PEGレシオ」(PER(株価収益率)をEPS(1株当たり利益)成長率で割った指標)は、一般的に1〜2の間にあって、数値が低いほど割安なのですが、「S&P500」のPEGレシオは1.9に対し、当ファンドは0.9です。「ラッセル1000グロース」はPEGレシオ1.3です。より高いEPS成長率の銘柄を発掘することによって、成長株のポートフォリオを組みながらも割安な段階で投資することができています。
――具体的にどのようなプロセスでポートフォリオを作るのですか?
蒋 3つの時間軸と3つの組み入れ比率のグループに分けて、トータルで9区分のグループで銘柄を保有しています。3つの時間軸とは、長期(10年以上)の目線で大きな成長が期待できる「セキュラー」、5年程度の時間軸で考える「シクリカル」、そして、短期的なミスプライス状態にあり株価が戻りやすい3年以下の期間で考える「オポチュニスティック」です。
また、成長と割安に対する確信度が最も高い20銘柄程度を「トップ銘柄」として1銘柄あたりの組み入れ比率が1.0%〜10%程度としポートフォリオ全体の40〜60%を占めるコア資産にしています。次に、「コア銘柄」として大きな上昇が見込まれる50〜100銘柄を、組み入れ比率で0.2%〜1.0%とし、ポートフォリオの20〜40%を占めます。さらに、ポートフォリオの15〜25%程度の資金で「新興銘柄」と位置付ける将来有望な銘柄を100銘柄程度、1銘柄当たりの組み入れ比率を0.2%未満で組み入れています。このようにカテゴライズされた銘柄を広く分散して保有することによって、どのような市場環境にあっても市場全体をアウトパフォームできる成長株のポートフォリオを作っています。
たとえば、現在の米国株式市場でトップ銘柄になったエヌビディアは、米国籍の同一戦略では2009年6月から組み入れています。当初は将来性豊かな「新興銘柄」として0.2%未満の組み入れ比率だったのですが、その後、大きな成長が見込まれる「コア銘柄」に格上げし、2017年ごろからは確信度が高い「トップ銘柄」として保有しています。
ポートフォリオマネージャーは、ソヌ・カルラという運用経験25年超の、これからの米国フィデリティの運用を担っていくと期待されるマネージャーです。「フィデリティ・ブルーチップ・グロース・ファンド」の運用には2009年から携わっています。
――このファンドの運用戦略は、現在の市場環境に適応していますか?
蒋 米国企業を中心に業績が伸びていくことを期待しています。私どもでも2024年から28年にかけて、米国企業の業績は2ケタ成長を予想しています。株式市場はこれを先に織り込んで動きますので、銘柄によっては、28年までの成長予想を相当前倒しで織り込んでいるものもあります。
一方、米国の金利はピークアウトが見込まれますが、強い企業業績などを勘案すると、金利を大きく引き下げるような環境にはならないと考えます。このため、株式市場にとっては、金利のピークアウトを背景に、2ケタの成長が期待できるという強気の市場が継続するものと考えられます。ただし、個々の銘柄には既に割高な水準まで株価が上昇しているものもありますから、選別投資が必要になるでしょう。個々の企業の業績見通しをどうみるか、運用者の調査力が問われる市場になってきています。
その点、当ファンドは2023年12月の設定で国内ファンドとして運用実績は短いですが、2024年5月末時点の運用成績で、ウエルスアドバイザーが分類する「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」というカテゴリーにおいて、過去3カ月のトータルリターン12.25%は、同カテゴリーに属する390本中で第13位(%ランクで上位4%)、過去1カ月間ではトータルリターン10.60%でカテゴリーの392本中で第2位(%ランクで上位1%)に入っています。設定来のトータルリターンは31.08%ですから、現在の環境に対応して市場平均を上回るパフォーマンスを出せています。
――このファンドの活用法についてアイデアは?
尾崎 新NISAで「全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」などに連動するインデックスファンドを保有される投資家の方が増えていますが、これらはインデックスの特性から大型株の株価動向にパフォーマンスが左右されやすい傾向があります。2023年の米国株式市場は、「マグニフィセント・セブン」という超大型株の株価動向だけで「S&P500」の動きを説明できてしまうといわれるほど、大型株の影響力が大きな相場でした。これに対し、当ファンドは、成長力の高い銘柄をアクティブマネージャーが選別した多数銘柄で構成されたポートフォリオです。時価総額の大きな銘柄で構成された「S&P500」などとは、異なる銘柄群で構成されていて、組入れ比率の低い銘柄もしっかりとリターンに貢献していることが特徴です。同一戦略は、ベンチマークの他にS&P500やナスダック総合指数にも設定来でアウトパフォームしており、当ファンドと米国株などのインデックスファンドを併せ持つことで、リターンの向上に寄与できると考えます。
また、低コストのインデックスファンドで投資を始めた方々も、投資期間を重ねることで投資に対するリテラシーも向上し、インデックスにプラスアルファの効果を求める機運も徐々に出てきていると思います。当ファンドは、世界の運用会社の中でも優れた評価を得ているフィデリティのボトムアップ・リサーチの力が存分に発揮されたファンドの1つであり、中長期的な成長を期待するファンドとして、幅広い投資家の方へ自信を持って提供できる商品です。投資の一歩先を行く運用商品として、ぜひご検討いただきたいと思います。