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2024/07/04 17:42
7月4日の国内株式市場は、TOPIX(東証株価指数)が1989年12月18日の2884.80ポイント(終値)を約34年半年ぶりに更新し、2898.47ポイントと史上最高値になった。日経平均株価も続伸し、4万913円65銭と前日に続いて史上最高値を更新している。米国でS&P500やNASDAQ総合指数が先行して史上最高値を更新し続けているが、日本も日経平均株価が今年3月22日に付けた最高値を3カ月半ぶりに更新し、新しいステージに入ったことを感じさせる動きだ。この動きの中、三菱UFJアセットマネジメントは、日本の半導体産業に投資する新しい公募投信とETFを新規に設定する。7月2日にはメディア向けに説明会を開催し、その設定の意図を説明した。 現状の日本株市場について、三菱UFJアセットマネジメント戦略運用部チーフファンドマネジャーである石金淳氏は、「株価は34年前と同じ高値水準になっているとはいえ、日本企業の収益力は大きな違いがある。現在の株価は企業業績の裏付けがあるといえ、34年前のバブルとは異なる」と強調した。その企業業績は、1989年1−3月期の企業統計で経常利益が10兆円だったところ、2024年1−3月期には同28兆円と2.8倍も拡大している。「利益が2.8倍になったにもかかわらず、株価は同じ水準にある」と、依然として日本株に対して見直し余地が大きいと指摘した。しかも、企業業績の中身についても「1989年当時は、営業利益がプラスだったものの営業外利益はマイナスだったが、現在は営業外利益が営業利益の1.3倍相当になっている。企業は利益を得る方法を複線化することに成功しており、収益の安定化につながる」とした。 そして、東証の要請などを受け、上場企業はPBR(株価純資産倍率)1倍以下からの脱却など株価を意識した取り組みを強化し、それに伴う株主還元の強化などを海外投資家が評価するという動きも続いている。加えて、石金氏は「日本企業が海外への直接投資を増やしている」ということも評価する。米欧やアジアなどに拠点を設け、国内だけでなく海外の市場で収益を上げられるビジネスモデルを作ってきた。「一般的に日本の経済成長率は欧米やアジアの国々に対して低く抑えられた見通しになっているが、国内企業はその比較的高い経済成長が期待される海外の市場において収益を稼ぎ出すことが可能になっている」と、バブル崩壊以降に行われてきた国内企業の様々な取り組みによって、強固な収益体質を持つようになっていると国内企業を評価した。 その上で、国内の半導体関連企業について石金氏は、「米エヌビディアのように生成AIの発展で大きな恩恵を受けるような派手な活躍をするような企業はないが、半導体材料や製造装置の分野では世界市場で数十%の高いシェアを国内企業が持っている。世界の産業に不可欠となった半導体は、1から10までをトータルで手掛けるような企業はなく、複数の企業の技術や材料を統合して製品を生み出す仕組みになっている。世界の半導体業界は、世界経済の好不況の影響を受けやすい金利敏感な企業群だが、その動きの影響を受ける企業群ということができる。国内景気の好不況より、世界景気の動向に強く結びついているのが国内の半導体関連企業だ」と説明した。 同社が新たに設定するのは、公募投信の「eMAXIS 日経半導体株インデックス」とETFの「MAXIS 日経半導体株上場投信」。両方とも「日経半導体株指数」に連動する運用成績をめざす。「日経半導体株指数」は、東京証券取引所に上場する半導体関連銘柄(主力事業が半導体関連業界に属する銘柄、および、主力以外の事業でも半導体関連事業の売上比率が10%以上ある半導体関連製品等のマーケットシェアが高い企業)で時価総額が上位30銘柄で構成される時価総額ウエート方式の指数。基準日は毎年10月末で、10月末時点の時価総額に応じて構成銘柄の入れ替えが実施される。2024年5月末時点の指数構成上位銘柄は、東京エレクトロン、ディスコ、ルネサスエレクトロニクス、アドバンテスト、レーザーテック、HOYA、信越化学工業、SCREENホールディングス、ソニーグループ、ロームとなっている。半導体関連銘柄としてイメージされる企業として違和感のない顔ぶれになっている。 「eMAXIS 日経半導体株インデックス」は7月12日に設定。信託報酬は税込みで年0.44%以内。「MAXIS 日経半導体株上場投信」は7月18日に設定し、翌19日に東証に上場する。信託報酬は税込み年0.154%。両方とも新NISAの成長投資枠の対象ファンドだ。 公募投信とETFを同時に提供開始する理由について、「公募投信は一日一度の売買機械で基準価額で取引される商品として積み立て投資などでの活用もしやすい便利な商品。ETFは取引時間中は時価で何度でも売買できる機動性がある。売買代金の受け渡しも2営業日後であり、公募投信よりも資金の出し入れがスピーディ。自分の決めた値段で指値で売り買いの注文ができることもメリット。半導体株指数はTOPIXなどと比較すると価格の変動率が大きいため、市場でいつでも売り買いできるということにメリットを感じる方も少なくないと考える。投資家の方々のニーズに合わせて使い分けていただきたい」(法人投資家営業部ETF事業グループグループマネジャーの佐藤尚慶氏)と解説した。また、半導体関連株は値がさ株が少なくないため、たとえば、東京エレクトロンを単元株(100株)で購入しようとすると約360万円が必要でNISA成長投資枠の限度額(年240万円)を超えてしまうが、「ETFでは小口資金で複数の銘柄に投資できるメリットもある」と指摘した。(イメージ写真提供:123RF)
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