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2024/07/24 17:36
新興国市場の成長というテーマでインドが注目され、そのインフラ投資の拡大や消費市場の拡大を手掛かりにした投資信託が設定され高いパフォーマンスを残している。新興国の中で、特に、アジアに強みを持つイーストスプリング・インベストメンツはこのほど、「インドネシアのEVバリューチェーンの投資機会」と題したレポートを発表し、インドネシアでEV関連産業が大きな成長期待があると情報発信している。EVの動力源であるバッテリー材料のニッケル埋蔵量が世界最大を誇るインドネシアでは、EV関連の材料から部品まで幅広い事業者が育ちつつあるという。 EV用のニッケル採掘から、ニッケル精錬、EVバッテリー素材加工、そして、EVバッテリー生産へとインドネシア国内にはEVバッテリー製造にかかわるすべての事業者が揃っている。世界のニッケル供給量に占めるインドネシアのシェアは2022年に46%という圧倒的な存在感があり、2025年〜30年にはシェアが60〜61%に達すると予測されている。インドネシア政府は重要な鉱物資源を有する自国の優位性と投資誘致のインセンティブを活用し、EVサプライチェーンにおける重要なポジションを獲得しようと政策的に取り組んでいる。 インドネシア政府は、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を29%削減し、2060年、または、それより早く排出量を実質ゼロにすることを目標にしている。産業別にみて運輸部門は最大のGHG排出源の1つであり、運輸部門の中でも道路輸送がGHG排出量の90%近くを占めていると分析されている。そこで、政府としてEVの普及を図っている。現在、インドネシアにおけるEVの普及率は1%未満だが、2030年までに2輪車で6%、4輪車で2%に達すると予想されている。そして、政府は化石燃料を使用する新車販売を2輪車は2040年、4輪車は2050年までに禁止するとしている。 インドネシア政府は、2024年にEVに対する「奢侈税(ぜいたく品販売税)」を撤廃し、2025年まで輸入税を免除、EV販売に対する付加価値税を引き下げるなど、積極的にEV普及に取り組んでいる。EVモデル数も2021年以降は増加し、インドネシアの中間所得層が拡大するにしたがってEV4輪車の販売は、2024年から32年の間、年平均成長率で10%を達成するという予測もある。 さらに、インドネシア政府は近年では国内でのニッケル採掘と精錬からEVバッテリー、および、EV生産まで、フォード、ポルシェ、ヒュンデ、CALT、LGなどの国際的な自動車およびバッテリーメーカーと総額150億米ドル以上の提携契約を締結している。EV生産者メーカーは、自動車部品等の現地調達が2027年まで調達率が最低限60%、2030年までに同80%に達した場合、輸入関税と奢侈税が免除されるという優遇措置を受けることができる。このため、イーストスプリングは、EVサプライチェーンの上流および中流に位置付けられるEV用バッテリー材料製造業者に加えて、EVサプライチェーンの下流分野といえる2輪EVの生産と販売、4輪EVの販売と販売店、EVバッテリーパックと電子センサーの生産、EV関連ソリューションとインフラに携わるような企業にも今後、成長の可能性が広がっているとする。 イーストスプリングは、レポートのまとめとして「EVテーマを投資に活用するには、インドネシアの2輪および4輪のサプライチェーン上場企業への投資が賢明。自動車部品メーカー、EV生産メーカー、ディーラーが主な勝者になるだろう。この3者はインドネシアの自動車バリューチェーンの約7割を占めるに至っている」として、インドネシアの自動車産業の成長性に注目している。 現在、国内の投信市場においてインドネシア株を主たる投資対象においたファンドは、多くはない。ファンド名に「インドネシア」が入っている株式ファンドは、「イーストS・インドネシア株式オープン」、「イーストスプリング・インドネシア株式(資産成長型) 『愛称:+αインドネシア(プラスアルファインドネシア)』」、「アムンディ・チャインドネシア株投信」、「インドネシア株式ファンド」、「アムンディ・インドネシア・ファンド 『愛称:ガルーダ』」、「(ノムラ・アジア)インドネシア・フォーカス」、「東洋・インドネシア株式ファンド」の7本を数えるのみだ。この中で、最大のファンドが「イーストS・インドネシア株式オープン」の純資産残高94億89百万円だ。数千億円規模に成長したファンドがあるインド株ファンドなどと比較すると小さな市場だ。 「イーストS・インドネシア株式オープン」の最新の月報によると「2024年のインドネシアの実質国内総生産(GDP)成長率は、堅調な消費と輸出の伸びにけん引され前年比5%程度の成長を記録すると予想」と強気の見通しだ。そして、「足元の輸出品目は石炭やパーム油だが、長期的には政府の川下産業強化の政策に沿ってニッケル加工品も加わることが予想される」と今回のレポートで解説したEV市場の発展の可能性に注目を促している。そのうえで、「現在の株式市場の予想株価収益率は、過去10年の平均値に比べて20%程度割安であり、新政権の財政支出拡大による株式市場の再評価が期待される」としている。米国株式やインド株式など、これまで世界の株式市場をリードしてきた国の株価は割高感が指摘されている。年率5%と比較的高い成長率があり、かつ、株式市場が依然として割安なインドネシア株式は、米国やインドの株式への投資の分散先としても検討の余地があるのではないだろうか。(イメージ写真提供:123RF)
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