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2024/07/26 11:30
投資信託協会は7月25日、日本証券業協会、全国証券取引所協議会と連名で「確定拠出年金制度(企業型DC、iDeCo)の改革についての提言」を公表した。社会保障審議会企業年金・個人年金部会で議論されている確定拠出年金制度の改定に向けた議論に、協会としての意見を明らかにするもの。確定拠出年金制度については、年内に拠出限度額や加入可能年齢等について改正の内容が示される見通しになっている。7月31日に、第36回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」が開催され、「DC制度の環境整備について」議論されることなっている。米国においては、確定拠出年金制度によって国民の資産形成が大きく進展したという歴史があり、「資産運用立国」をめざすという日本の資産運用業界にとっても、今後の確定拠出年金制度の改定は大きな意味がある。 提言は、主に3つ。(1)拠出枠の見直し(拠出限度額の引き上げ、キャッチアップ拠出の創設、生涯拠出枠の創設と毎月・毎年の拠出額の柔軟化)、(2)「指定運用方法」のあり方の見直し、(3)運営管理機関の「個別アドバイス」を可能とする――の3点だ。 拠出枠の見直しについては、「拠出限度額の引き上げ」と「キャッチアップ拠出の創設」は、早急に措置すべき事項としている。この件は、今年6月21日に発表された「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針2024)」においても、「iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額および受給開始年齢の上限引き上げについて2024年中に結論を得る」と決着の時期に期限が設けられている。「キャッチアップ拠出」とは、若年時ほど拠出額が少額となり、拠出可能な枠の使い残しが生じるため、その使い残し分を50歳以上で追加枠として利用できるようにするもの。 さらに、拠出枠の見直しについては、中長期的な課題として、個々人の年間所得が年齢によって変動することに対応し、「生涯拠出枠」を設定し、年間拠出限度額を個々人の事情に応じて収入が多い期間に高い金額にするなど、自由度の高い年間拠出限度額にすることを提言している。働き方の多様化によって、収入の得方がさまざまに変化している時代に合わせた制度設計を可能にするよう求めている。 「指定運用方法」は、加入者が自らの意志で運用商品を指定しない場合に自動的に割り当てられる運用商品だが、これを「長期的な資産形成に適したもの(ターゲットデートファンド等、元本保証型でないもの)」を設定することを原則とし、仮に指定運用方法を設定しない場合や、元本保証型を指定する場合は、その理由を説明・開示することを義務付けではどうかと提言している。日本の確定拠出年金制度では、元本確保型の選択割合が企業型DCで39.7%、個人型で34.2%(2023年3月末)と依然高い状態が続いており、経済成長の果実の取り込みが不十分でインフレリスクに弱いと考えられている。 そして、3点目は、法律において運営管理機関に従来より課せられている「忠実義務」に加え、改正金商法の施行によって2024年11月28日までに「加入者の最善の利益を勘案する義務を含む誠実公正義務」が新たに課せられることになるため、両義務のもとで運用関連業務の役割を担う運営管理機関が加入者に対して個別の運用商品に言及してアドバイスすることを可能にすることで、加入者の意向やライフプランを踏まえた資産形成を具体的にサポートできるようにすることが適切ではないかと提言している。現在は、運営管理機関は、運用商品の提示と個別の商品の情報提供のみが可能で、個別の運用商品に言及したアドバイスは禁止されている。ただ、運用経験のない加入者など多くの加入者が求めているのは「自分は何を購入すればよいのか?」という具体的な商品の提示であり、そのことを運営管理機関がアドバイスできるようにすることで、企業型DC等において運用商品の利用が一段と進むと期待されている。 その他、マッチング拠出の弾力化、iDeCo+の対象企業の要件緩和、DCの自動加入・オプトアウト、運用商品提供数35本の上限撤廃・緩和など、制度改正への要望は多々ある。これら様々な規制が緩和されることによって、確定拠出年金での運用が促され、資産運用への理解が深まることによって、一般の公募投信を使った運用も促進されるということが期待される。今後の制度改正議論に注目していきたい。(イメージ写真提供:123RF)
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