前のページに戻る
2024/07/31 16:33
社会保障審議会の企業年金・個人年金部会が7月31日、「DC(確定拠出年金)制度の環境整備」をテーマに開催された。主に、中小企業に対する企業年金制度の普及を促すため、DC制度の面から促進策はないかという観点で議論され、「簡易型DC」、「iDeCo+」、そして、「いわゆる総合型DC」などのあり方について委員から様々な意見が出された。そして、企業型DCを取り入れるにあたって大きな課題になっている「加入者への投資教育」については、今年8月に本格稼働が予定されている「J−FLEC(金融経済教育推進機構)」とも連携の上で、効果的な方策を検討する方向だ。 DC制度は、米国で企業型DCが「401k」という呼称で知られ、広く普及している。従業員が給与の一部を掛け金として拠出し、そこに、企業がマッチング拠出で上乗せ拠出する制度になっている。そして、運用指図は加入者である従業員が行って長期に掛け金を運用することによって老後に大きな資産を残すことに成功している加入者が続出している。米国には「401kミリオネア(億万長者)」といわれる退職時に100万ドル(約1.5億円)を超える資産を「401k」制度を使って実現している人が数十万人も誕生している。これらミリオネアは、ごく一般の会社員が給与の10〜15%程度を拠出し、30年間超の期間にわたって積み立てた結果だ。主に、株式に投資する投資信託で運用して資産を増やしている。 米国では企業型としてDC制度が普及することによって、DC制度の資産形成で肝心の投資教育や運用のアドバイスの部分で、従業員教育や社内ネットワークでフォローされる効果もあり、多くの従業員が株式投資信託を積極的に運用に取り入れて大きな資産を作ることに成功している。日本においては、企業型DCへの加入者数は約805万人(2023年3月末)で上場企業等の大企業を中心に約4.7万社で採用されている。ただ、日本の国内には従業員が299人以下の中小企業が多く、2022年9月1日時点で約263万事業所に約2285万人が就労している。これら中小企業では退職一時金制度のみで退職年金制度がある企業が少なく、特に、従業員数99人以下の企業では退職給付制度がない企業の割合が2018年の22.4%から2023年に29.5%に増えているという実態もある。中小企業向けの退職給付制度の普及が課題になっている。 今回の議論では、2018年に制度ができたもののこれまで1件も利用されていない「簡易型DC」を一般の企業型DCに統合、そして、「iDeCo+」の対象企業を現状の従業員300人以下のまま留め置くものの、確定給付企業年金(DB)を実施している企業でも制度として導入を可能とする。また、現在は制度上明確化されていない「いわゆる総合型DC(複数の企業が相乗りするDC制度)」については法律の枠内で認める方向で話し合われた。 一方、DC制度の自動移管(転職等によってDC資産の移管手続きがなかった場合に、国民年金基金連合会に自動的に移管され、運用されないまま手数料だけが徴収される状態になる)の問題について、転職先にDC制度がある場合やiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合は、手続きなしで資産が移管できるようにしているものの、依然として100万人を超える自動移管者が存在することについて「一定金額以下(米国では1000ドル以下)であれば税制優遇の特典を外して課税の上で現金で払いだしてはどうか」という意見が出た。 今後、企業年金・個人年金部会では、年内に制度内容を示すとされているDC制度の掛け金や加入可能年齢の引き上げなどといった制度拡充について議論する予定だ。(イメージ写真提供:123RF)
ファンドニュース一覧はこちら>>