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2024/08/06 17:54
世界的に株価のボラティリティ(価格変動率)が高まっている。国内株式を代表する株価指数である日経平均株価は、5日に過去最大の下げ幅4451円安と急落したものの、一転して翌6日には過去最大の上げ幅3217円高と急反発した。5日の下げによって日経平均株価は3万1458円となり、2023年6月当時の株価水準になった。まるで時計を1年間巻き戻したような感覚になる。今年1月にスタートした新NISAに乗り遅れたと感じていた人たちが、株価急落を受けて一斉に動き出したかのような動きになったのではないだろうか。ただ、これほどの価格変動は、簡単には収まるものではない。しばらくは余震のような揺れがあるだろうし、5日の下げを上回る大きな動きがこれから起こってもおかしくなはい。「市場の先行きを予測することはできない」という前提に立って、慌てることなく対策を講じたい。その対策は「分散」という基本行動に尽きる。 2020年3月の「コロナ・ショック」による急落から後の市場は、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」、そして、「AI(人工知能)」といった技術革新によって新しい社会が動き出すことを先取りするような動きになった。それが極端に進んだのが2023年の「マグニフィセント・セブン(M7)」が大活躍する相場だった。米国を代表する株価指数である「S&P500」の上昇は、M7の7銘柄だけで説明ができてしまうほど、「上昇するM7」と「上昇しないM7以外」というくっきりした対比になった。 その結果、M7の影響度合いが強い「NASDAQ100」や「S&P500」といった株価指数が大きく上昇し、M7以外の銘柄に投資する比率が高い「MSCIコクサイ」(先進国株式を対象とした株価指数・除く日本)や「MSCI ACWI」(新興国株式を含む全世界株式を対象とした株価指数)などとの格差が広がった。また、M7により集中投資することを志向した「FANG+」や「S&P500トップ10指数」などに投資するファンドにも人気が高まった。 しかし、8月に入ってからの株価急落は、それまでの「M7集中投資」という状況を大きく変えるインパクトになったのではないだろうか。そもそも株式市場関係者の間では、「M7集中投資」による対象銘柄の割高是正の必要性を説く声があがっていた。それでもM7の株高が止まらなかったが、2024年になって新NISAの積立投資で「S&P500」よりも「全世界株式(オール・カントリー)」がより多く選ばれるという傾向が強かったのは、「M7割高」という懸念を背景としていたと考えられる。今回の急落によって、「M7集中投資」から「M7以外の銘柄への投資」という流れが進む可能性がある。 「M7以外の銘柄への投資」を促す動きは、投信の新ファンドのラインナップにもうかがえる。たとえば、日興アセットマネジメントが5月17日に新規設定した「全世界超分散株式ファンド」は、新興国を含む全世界1万3000社の株式に分散投資するファンドだ。また、大和アセットマネジメントが8月9日に新規設定する予定の「一歩先いく グローバル・イノベーション企業インデックス」は、グローバルなテクノロジー企業15社に投資するため、M7に加えて、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や台湾のTSMC、あるいは、ヘルスケア分野のイーライリリーやノボ・ノルディスクなどにも投資する。集中投資しつつ、投資地域やセクターを広げているところに特徴がある。 もちろん、M7以外の銘柄への分散が図られるにしても、M7の相場が終わったというものではないだろう。「S&P500」や米国株式を対象としたファンドに偏った運用ポートフォリオになっているのであれば、プラスアルファとしてその他の地域やIT企業以外のセクターへの投資、また、大型株ではなく中小型株への投資、さらには、債券やゴールド(金)への投資など、投資先を分散させるという動きを促す動きが強まるのではないかと考えられる。新設ファンドの動きも含め、今後の投信市場の人気銘柄の変化に注目していきたい。(グラフは、「FANG+」や「S&P500」など主要ファンドの推移)
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