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2024/08/14 17:48
日経平均株価が史上最大幅で下落し、また、史上最大幅で上昇するなど、株価の価格変動率が非常に大きくなっている。日本株の場合は、今年2月に日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新し、そこからさらに株価が値上がりして7月11日に4万2224円の高値まで進むという最高値圏での値動きとなっているだけに、そこでの波乱は、ある程度覚悟しておかなければならない動きともいえる。まして、日経平均株価は2023年の1年間で28.24%上昇し、7月11日まで半年余りでさらに26.18%上昇するという急速な値上がり局面だっただけに、何かのきっかけがあれば大きく動揺することも想定された動きの1つだったろう。ただ、7月末に日銀が利上げを決定してから、わずか3営業日で日経平均株価は19.55%も急落する事態になった。これほどの下落は、できれば経験したくないと誰もが思うだろう。新設されるファンドの中には、このような市場の変動に左右されにくいことを目指したファンドもある。過度な価格変動から資産を守るという点で注目したい。 8月16日に新規設定される「SBI−Man リキッド・トレンド・ファンド」は、トレンド・フォロー戦略という考え方に基づいて、市場が上昇しても下降しても収益を確保することをめざすファンドだ。値上がりする相場と予測される場合は、まず買いつけて値上がりした時点で売却する、反対に下落する相場の場合は、売り立てて下落した後で買い戻すということを行う。上昇する、下降するという市場のトレンドを見極めることができれば、相場が上がっても下がっても常に収益を獲得できることになる。英国のマンAHLは、1987年の設立当初から、このトレンド・フォロー戦略による運用を行い、市場トレンドを補足するための運用システム開発を進めてきた。 その結果、マンAHL社が運用する「リキッド・トレンド」戦略の旗艦ファンド運用成績は、1998年6月末を100とすると、運用報酬控除後(固定報酬4%、成功報酬20%)で2024年3月末までに885になっっている。この間の世界株式の598を大きく上回る成績だ。今回、国内で設定されるファンドは、運用報酬を年0.998%に固定して提供されるので、旗艦ファンドよりも高いリターンが期待できる。 6月28日に新規設定された「三井住友DS・ジャパン・ハイ・コンビクション・ストラテジー」は、「綿密な企業調査に基づくボトムアップ・アプローチにより、持続的な利益成長や株価の割安度に対する確信度等を勘案して厳選投資する」という日本株のアクティブファンドだ。8月の急落時には基準価額が7705円まで下落する場面もあったが、すぐに9000円台を回復した。市場全般が下げる中では、厳選した銘柄群であっても株価が連れ安することはあるが、将来の利益成長が確かであれば、今後の株価回復局面では、株価指数(インデックス)を上回る株価上昇が期待され、中長期的にはインデックスを上回る成果が期待できるだろう。インデックスの大きな価格変動にあらがうという点では、運用会社の調査力に期待してより内容の良い銘柄を選別投資することによって、下げky工面では下落率を抑制し、上げ局面ではより高いリターンが狙えるというファンドも1つの投資対象といえる。 一方、特定の資産に投資せず、幅広い資産に分散投資することによって株式市場の価格変動を抑制するという考え方もある。たとえば、日本を含む世界の株式、債券、リート、金(ゴールド)等に分散投資を行う「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)」は、今回の7月末から8月6日の下落局面で、下落率が7.4%にとどまった。日経平均連動型のインデックスファンドでは19.5%程度も下落したことを考えると、下落率は抑制されている。金(ゴールド)の価格は、NY金先物が8月8日から連日で史上最高値を更新している。株式市場等が不安定な中で注目を集める金を投資先に加えることも、株式市場が不安定な時には有効だ。「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)」は、世界的に株価が下落した8月初旬でも基準価額は上昇していた。過去10年で年率3.15%のリターンをあげていることを踏まえれば、株式ファンドとの組み合わせによって株価変動のヘッジ手段として一定の効果を期待できよう。 今後の株式市場は、米国の景気見通しも含めて世界的に不安定なものになるのではないかと懸念されている。株価の下落に遭遇して、資産価値が大きく目減りしてしまうと、そこから資産価値を回復するためには長い月日が必要になるものだ。できるだけ、価格変動による資産価値の低減を低く抑えることを考えたい。資産形成途上にあってインデックスファンドの積立投資は、価格変動リスクを抑える手段になる。すでに大きな資産を保有している場合は、既存のポートフォリオに価格変動が低い資産等を組み合わせることでリスクを小さくすることも検討しておきたい。(グラフは、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)」のパフォーマンス推移)
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