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2024/08/21 17:48
8月20日のNY金先物市場で12月限は1トロイオンス=2550.6ドルとなり、3日続伸し、3営業日連続で史上最高値を更新した。金価格は2023年10月に2000ドルの大台に乗せてから、緩やかな右肩上がりの動きを続けている。昨年末に2071ドルだった価格は、3月に2100ドル台に乗せ、5月に2400ドル台、そして、8月には2500ドル台になった。この8月20日までの上昇率では、米国株「S&P500」を上回る。9月に米国が利下げを実行すれば、金価格は一段と上昇するという見方が有力だ。株価が高値波乱となる中で、株価の動きとは関係なく動く金に投資することことも1つの方法だ。 2024年の年初からの動きを振り返ると、3月までは日本株(日経平均株価)の上昇が目立った。2023年に24%超値上がりした米国株(S&P500)に対し、出遅れが指摘されていた日本株が、その出遅れを取り戻すような動きになっていた。2月22日には日経平均株価は3万9000円の大台に乗せ、1989年のバブル期に記録していた史上最高値を34年ぶりに更新した。そして、7月11日にピークを付けるまで、日本株は米国株を上回るパフォーマンスを続けていた。7月11日時点では年初からの値上がり率は26.18%に達し、米国株の今年の高値(7月16日)までの上昇率18.81%を上回った。 ところが、7月末に日銀が追加利上げに踏み切ると、日本株は急落。8月6日には昨年末比5.99%安の水準に下落した。この日本株の急落と比較すると米国株の下落率は小さかった。日米株価は、8月6日をボトムに上昇するが、8月20日時点の年初来の上昇率では、日本株は13.74%で、米国株の17.34%に劣っている。 このような日米の株価の動向とは関係なく、金価格は緩やかに上昇し続けている。年初から2月末までは前年末比でマイナス圏に沈んでいる期間だったので、この間は株価とのパフォーマンス格差が大きく広がったが、3月からの金価格の上昇スピードは速く、また、8月上旬の株価急落の影響も小さかったため、8月20日時点では年初からの上昇率は23.11%となり、日米の株式よりも高いリターンを残している。 この金価格上昇の背景については、様々な要因が言われている。ひとつには、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル問題など、地政学的リスクの高まりによる「安全な逃避先」としての金の価値だ。金には貴金属として決して損なわれることのない希少価値がある。その希少性から、世界各国で通貨と同じような使われ方をしてきた。また、株価が企業の業績悪化や信用不安などで価値を棄損し、また、経営破たんになれば価値を失うという可能性があることに対し、金の価値は損なわれない。したがって、大きな戦争等が勃発すると、試算を守る手段として金が活用されてきた。また、インフレで通貨の価値が下がっていくような時にも金の価値が見直された。 さらに、近年では米国や中国などの中央銀行が外貨準備として金を購入する動きが強まっている。外貨準備は為替介入の時に使われたり、外貨建て債務の返済が困難になった時に使われるなど、一般的に国や通貨に対する信頼性を担保し、金融システムの安定化などに重要な役割を果たすと考えられている。金を購入している中央銀行は、「インフレヘッジ」、「危機的状況下でのパフォーマンス」、「効果的なポートフォリオ分散」などが金購入の目的になっている。ワールド・ゴールド・カウンシルの調査によると、今後も外貨準備に金を積み増していくという方針を持つ中央銀行が少なくないという。この中央銀行の買いも金価格を押し上げている要因になっている。 そして、「金利(利息)のつかない資産」である金は、金利上昇局面では相対的に魅力が落ちる資産になるが、金利低下局面になると通貨や債券等の魅力が低下することによって相対的な価値が高まる。現在の金価格の上昇には、9月にも米FRBが利下げを実施するという見通しが強まっていることも背景になっている。 個人投資家が金を投資対象に加える手段として、「三菱UFJ 純金ファンド『愛称:ファインゴールド』」、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」、「同(為替ヘッジあり)」、「ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)」など、金や金先物を投資対象にしたファンドがある。直接的に金を購入しなくても、ファンドとして購入することによって少額の資金で金を投資対象に加えることが可能だ。ただ、金には利息が付かないため、中長期の投資資産として「インカムゲイン」を期待できない資産になってしまうため、資産の大半を投資するような投資対象にはなりにくい。配当等のインカムゲインに加えて値上がり益(キャピタルゲイン)を狙える株式などをメインの投資対象とし、その株式とは異なる値動きをする金を資産の一部で持つことによって、株価下落等のリスクを軽減させるという使い方が一般的だ。 今年の値動きに、その金価格の特性は良く出ているといえるだろう。日米の株価が高値圏にある中で、景気見通しに不透明感が強まっている。8月初旬に起きたような株価の急落は、今後も起こる可能性は決して小さくはないといえるだろう。金を保有することによって株価下落のリスクに備えることも検討したい。(グラフは、「日経平均」「S&P500」「NY金先物」の年初来パフォーマンス)
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