前のページに戻る
2024/08/22 17:36
米国株価が再び史上最高値更新に迫っている。NYダウは7月17日に付けた終値ベースの史上最高値4万1198ドルに後0.75%に迫り、S&P500も7月16日の高値まで0.82%だ。ただ、高値圏にある株価の変動率は大きい。この8月の下落では、3週間程度でNYダウは最高値から6.06%安の水準に下げ、S&P500も8.49%安になった。主要株価指数の中で最も下落率が大きかったNASDAQ総合指数は13.15%安と短期間に2ケタを超える下落率になった。米国に景気後退(リセッション)懸念が出ていることもあり、今後もこのような大きな下落局面は覚悟しておく必要がある。このような株価の動きが激しい折には、株価の動きとは連動性の低い資産を保有することで資産価値の変動リスクを抑えることを考えたい。その組み合わせ先の候補として「金(ゴールド)」は有力な資産だが、もうひとつ、「アジア債券」にも注目したい。イーストスプリング・インベストメンツは8月21日にアジア債券の魅力を伝えるレポートを発行している。 アジア債券というと1997年〜98年のアジア金融危機を思い起こしてリスクが大きな資産という印象を持っている人が少なくないかもしれない。しかし、イーストスプリングのレポートは、アジアの現地通貨建て債券市場は、約25.2兆米ドルの規模に達し、2023年で米国の67%、欧州の112%の水準にあるとする。アジア金融危機以降、同地域の金融システムのレジリエンス(強じん性)と健全性を改善する取り組みに多大な努力がはらわれてきた結果だ。 アジア金融危機の当時から30年にわたってアジア地域での投資を行ってきたイーストスプリング・シンガポールの債券運用部門の責任者であるDanny Tan氏は「(アジア債券市場の)成長は、主の国債によってけん引されてきたものの、社債のシェアが時間とともに増加している」と指摘する。そして、「“退職後の貯蓄”の規模が拡大するにつれて、債券市場の厚みと流動性が向上する」と強調している。 アジア債券は、世界金融危機(リーマン・ショック)の2008年とFRBの積極的な利上げによって売り込まれた2022年を除けば、おおむね年率8%前後(0%〜15%の間)の収益率を残してきている。株式市場でボラティリティ(価格変動率)が高まった時にも、安定的なリターンを残してきた。特に、米国債券と比較するとアジア債券は、はるかに低いボラティリティで高いリターンを提供してきた。アジア通貨も米ドルやユーロなどと比較してボラティリティが低いという特性がある。 そして、レポートは「過去10年間の経済改革と発行体の質の向上により、アジアの債券投資はますます魅力的になっている」とする。「例えば、アジアのハイ・イールド社債は、米国のハイ・イールド社債よりも270ベーシスポイント(1bp=0.01%)以上の高い利回りを提供している(2024年6月末時点)。さらに、利回りの質の尺度としてデュレーション(債券の金利変動に対する感応度の尺度)あたりの利回りを見ると、その差はさらに顕著で、アジアのハイ・イールド社債は340bpである一方、米国のハイ・イールド債券は94bpを記録し、その差は3倍以上」として、アジア債券の高い魅力を伝えている。 レポートでは、「アジアは域内の国・地域によってその経済や格付けのプロファイルが異なり、金利サイクルも同期しておらず、現地通貨も変動しているため、債券の活用機会はダイナミックに広がっている」と、アジア債券の魅力を強調するが、その市場で安定的な収益を確保していくためには、地域の理解が不可欠と言えることは間違いない。イーストスプリングが現地で30年にわたって培ってきた調査・運用体制は頼りになる存在の1つといえる。 イーストスプリング・マレーシアの債券運用部門の責任者であるChoong Kuan Lum氏は、「現在の市場環境下では信用スプレッドのタイトニングが進んでいるため、社債におけるより質の高い利回りの追求がポートフォリオ構築の主要テーマとなっている」と指摘し、それには銘柄選択の深い専門知識が必要となる点を強調している。現在のアジア債券の利回り水準は過去最高レベルの水準にあるため、より高い利回りを得るために質を大幅に下げる必要がない環境にあることが、足元の市場の大きな魅力になっている。(グラフは、主なアジア債券ファンドの過去3年間のパフォーマンス推移)
ファンドニュース一覧はこちら>>