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2024/09/04 16:24
国民年金基金連合会が9月2日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると2024年7月の新規加入者数は3万4777人で前年同月比7.9%減、加入者総数は339万9611人になった。新規加入者数は4月以来4カ月連続で前年同月比でマイナスになった。しかも、4月が前年同月比0.1%減、5月が2.0%減だったが、6月は5.4%減と、月を追って減少率が大きくなっている。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(イデコプラス:中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は7979事業所、対象従業員数は5万715人になった。 7月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は5091人(前月4980人)と前年同月比12.8%増、第2号加入者は2万7803人(前月2万8310人)と同11.3%減、第3号加入者は1508人(前月1624人)と同5.6%減になった。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万6657人(前月1万7112人)。「企業年金あり」が6284人(前月6550人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は4862人(前月4648人)となった。第2号加入者の新規加入が落ち込んでいるが、中でも「企業年金あり」と「共催組合員」が前年同月比2ケタの落ち込みになっている。 iDeCoの加入者数は、2017年1月に制度改定によって公務員や第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)にも加入が認められてから、右肩上がりに増加を続けている。2017年1月以来、おおむね毎月3万人以上の新規加入者がある。直近では2023年11月に新規加入者数が3万191人と3万人ギリギリにまで減少したものの、その後は持ち直して3万5000人前後の加入者を獲得してきている。制度改正から7年半以上の年月を経ても、なお、新規加入者が毎月3万人を超える人数で増え続けているのは、iDeCoに対する根強いニーズからのことと考えられる。 今年から始まった新NISAは、1人当たりの非課税限度額が1800万円まで拡大され、かつ、非課税期間が無期限になったことで、長期にわたってまとまった資金を作る制度として、従来のNISAやつみたてNISAよりも、ずっと使いやすい制度になった。ただ、新NISAの利用者も含めて、資産形成をしていこうと考える人の共通して持っているニーズは、「人生100年時代、長くなった老後生活でお金に困る生活をしたくない」という老後への備えだろう。その点では、いつでも解約・現金化が可能なNISAと比べて原則として60歳までは換金できないiDeCoは、「老後のための口座」と明確に位置づけられている。 新NISAは新社会人をはじめとした若い世代が、「将来のために」と積立投資をする口座であり、そこで作られた資金は、転職のためのスキルアップや結婚費用、あるいは、住宅購入の頭金、子供の教育資金など、様々な用途に活用することができる。これに対してiDeCoは、60歳になるまで使うことができない資金になる。定年が65歳に延長される動きがあるが、その前に「役職定年」のような処遇変更があり、60歳以降は給与収入が減額されるケースがある。また、健康面にも不安が感じられるようになり、70歳まで現役で働きたいと思っていても、実際にフルタイムで働ける人はそれほど多くはなく、また、健康に恵まれて70歳までフルタイムで働ける人でも、その収入の水準は50歳代までの収入には遠く及ばないものになるだろう。60歳代になってiDeCoに数百万円の資金があれば、どれだけ心強く感じられるだろうか。 このように生涯必要となる資金を考えると、20代〜40代は、まずNISAで資産形成をはじめ、子供が18歳(大学進学時)になる教育費のピークを越えてから、「老後のために」という目的でiDeCoに取り組み始めるというのが自然の流れであるようだ。末子を30歳でもうけた人は、iDeCoに取り組むのは50歳を目前にしているようなタイミングになる。実際に50歳になって、「iDeCoで老後資金を」と考えても、現在の限度額(企業年金のない会社員は毎月2.3万円)では作れる老後資産に限界がある。限度額の改正がなければ、NISAとの併用になろう。子供の教育費や住宅の頭金などを使った場合はNISAの非課税限度額は、十分な空きがある状態にもなっているだろう。このようなライフステージをイメージしたiDeCoの活用の仕方が広がることが望ましい。新NISAのスタートによってiDeCo人気は一時的に下火になっているものの、「老後不安」がある限り、iDeCoの活用は根強く続くと考えられる。(グラフは、iDeCo新規加入者数の推移)
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