前のページに戻る
2024/09/18 17:39
9月18日、米FOMCの結果が発表される。0.25%なのか、0.50%なのか、その利下げ幅については発表を待たなければならないが、この決定によって、米国の金融政策は新たなステージに進むことは間違いない。その新たな環境で米国の経済は、金利は、株式市場は、為替は、どのように動くのだろうか? 世界的な債券アクティブ運用大手のPIMCOが米FOMCを前にして9月12日、「利下げとその影響」と題したレポートを発行した。執筆者は、非伝統的戦略担当の最高投資責任者であるマーク・P・サイドナー氏とポートフォリオ・マネージャーのプラモル・ダワン氏。レポートは、今回の利下げについて「金利の正常化への取り組み」と捉え、「債券のプラス要因が強まる」と見通している。 9月は「金融政策と金融市場にとっても、しばしば大きな転換期となってきた」とレポートは振り返っている。1998年9月にはアジア金融危機の後にロシアの対外債務支払い凍結をきっかけに米ヘッジファンドのLTCMが経営危機に陥り、それを救うためにFRBが利下げを実施した「LTCMショック」があった。2007年9月にはサブプライムローン問題をきっかけにFRBが利下げを実施。2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが破たんする「リーマン・ショック」が起きた。そして、この9月18日のFRBの政策決定会合も「重要な意味を持つ可能性がある」とする。今回の利下げは、「初期の危機対策ではなく、インフレが落ち着いたように見える中、緩和は正常化の合図になる可能性がある」という。 「FRBの緩和サイクルは1つとして同じものはない」と、レポートは過去の利下げ時のパターンを押し当てて、今後を類推することの限界を明らかにしている。ただ、その時々のFRBの議論の経過、経済統計の動きなどから、いくつかのパターンが存在し、大まかな方向感をつかむことは可能だ。今回の利下げは、インフレが持続的に目標水準に戻る軌道に乗ったことから「労働市場の冷え込みに対処するための予防的利下げ」と捉えることができる。PIMCOの基本シナリオは、「FRBは年内に3回、合計0.75%の利下げを実施するとの予想を継続し、今回の緩和サイクルでもFRBは緩やかに緩和を開始し、今後の経済データ次第で利下げのペースを速める選択肢を残しておく可能性が高い」と予想している。 そして、利下げのマーケットへの影響については、「利下げ開始時に景気がかなり悪化しているか(ハードランディング・シナリオ)か、より穏やかな状況か(ソフトランディング・シナリオ)によって異なっていた。そして、現在の状況はソフトランディングを示唆していて、「株式リターンはプラスで、金融環境は緩和ないし緩和されつつある」という見方になる。むしろ、「現時点で市場が織り込んでいるFRBの政策金利の最終到達点は3%〜3.25%前後。これはソフトランディングに見合った水準で、ハードランディングの可能性はほとんど織り込んでいないようだ」と分析する。そして、今後の米国経済成長に対するFRBの見通しについて、9月会合で発表される最新の経済予測をしっかりウオッチすることが重要としている。 一方、仮に経済がハードランディングしたとしても、その際には中長期債は好調に推移し、歴史的にみると「特に景気が低迷した場合に、利下げサイクル局面で良好なパフォーマンスを発揮する傾向が見られる」と債券投資にはプラスの局面になる。 また、為替については、「米ドルは、少なくとも一時的に下落する傾向がある。ハードランディングとソフトランディングの両方を含む過去の緩和サイクルでは、米ドルは平均して下落するものの、利下げ開始後数カ月で回復する傾向がある。政策の正常化に伴い、米ドルは高利回り通貨としての地位を失い、緩やかなドル安が進む可能性があるとみている」と見通している。 現在の債券利回りについては、「名目およびインフレ調整後の実質の両方で依然として魅力的であり、FRBの利下げ開始に伴い債券の上昇余地が広がるとPIMCOは考えてる」と結論している。(グラフはPIMCOが運用する債券ファンドのパフォーマンス推移)
ファンドニュース一覧はこちら>>