2024/09/19 15:09
東京海上アセットマネジメントは9月30日に「米国50社厳選株式ファンド(愛称:S&P500アクティブ)」を新規設定する。当初募集は群馬銀行で9月18日から募集が始まった。同ファンドは、米国を代表する株価指数である「S&P500」を構成する約500銘柄を投資対象とし、その中から過小評価されていると考えられる50銘柄を厳選して投資し、「S&P500」を上回るリターンをめざす。同ファンドの運用の仕組みや特徴について東京海上アセットマネジメントの投信本部部長の千葉雅弘氏(写真)に聞いた。
――「S&P500」採用銘柄の中から市場で過小評価されている50銘柄に厳選投資し、中長期的に「S&P500」を上回る投資成果をめざすファンドですが、過去の実績ではどの程度「S&P500」をアウトパフォームしているのでしょうか? また、銘柄の厳選効果が表れるのは投資してから何年程度の期間を必要としますか?
当ファンドが採用する運用戦略(以下、当戦略)は米国で20年超の運用実績があります。2004年5月末を100とすると、2024年6月末時点で「S&P500(配当込み、米ドルベース)」が642に対し、当戦略(費用控除前、米ドルベース)で793になります。戦略設定来の約20年間の年率リターンでは「S&P500」が11.8%に対して当戦略は13.0%と、年率1.2%程度アウトパフォームしています。
また、戦略設定来のパフォーマンスを10年のローリングリターン(月次)で見てみると、どの10年間をとっても「S&P500」をアウトパフォームしており、超過収益の平均は年率1.6%でした。よって、中長期的に効果が発揮される戦略だと考えています。
当戦略で使用している企業価値推計モデルを用いて推計した企業価値と株価との差異がどの程度の期間をかけて収斂するのかについて研究したミシガン大学の論文があります。それによると、銘柄によって差はあるものの、1年間で平均して15〜30%程度のペースで収斂することが示されています。設定来でローリング5年間のパフォーマンスを見ると88%の期間で「S&P500」をアウトパフォームしていることから、ポートフォリオベースでも5年程度保有すれば企業価値推計モデルの示すような適正株価に概ね近づくと考えられます。
――銘柄を厳選する方法について教えてください。その銘柄の選定の方法は、「グロース戦略」、あるいは、「バリュー戦略」のどちらのスタイルに分類されますか?
当ファンドの実質的な運用を担う独立系運用会社「アプライド・ファイナンス・キャピタル・マネジメント社(以下、アプライド社)」では独自に開発した「エコノミック・マージン」をベースとして企業価値を推計しています。企業のビジネスの資産利益率と資本コストの関係性に着目し、一般的な会計ベースの数値ではなく、キャッシュフローをベースとした企業評価であることが特徴です。
アプライド社では、1996年からリアルタイムで企業価値を推計しており、現在ではグローバルの2万社について週次でデータをアップデートして記録し続けています。過去25年間以上に亘るアプライド社による推計企業価値は、同社で実際の株価との関係を継続的に分析しており、その有効性を実証的に確認できることがこの戦略の強みであると考えます。
当戦略は「S&P500」に採用されている銘柄群を対象として企業価値推計モデルにかけて株式市場で過小評価されている50銘柄に厳選投資しますが、銘柄を選定するのはモデルによる評価だけでなく、アナリストとの協業によって決定しています。アナリストは経営者の経営戦略や経営の実態を十分に考慮して選定銘柄を選ぶことができます。また、特定のセクターに偏るようなことをせず、多面的にリスク分散されたポートフォリオにしています。この結果、グロースやバリューなど市場の局面に左右されにくい全天候型のパフォーマンスを実現しています。
――アプライド社の特徴は?
創業者のラファエル氏が米国の企業価値評価モデルを扱う会社でエンジニアとして勤務していた時に、そこでの企業分析モデルの内容が不十分であると考え、自らモデルを開発して独立起業したのが1995年です。その後、米国の大手会計事務所とパートナーシップを結んで大手企業に対して企業価値分析能力を活かしたコンサルティングビジネスを行っていました。その後、2001年には投資リサーチ会社のRIAと提携し、株式リサーチとバリュエーション・プラットフォームを提供するようになり、2004年にはトムソン社によって株式調査会社の上位20社に選定されました。
2004年に当戦略「Valuation50戦略」の運用を開始すると、長期で良好な運用実績を積み上げ、2023年には当社の仲介により日本の機関投資家から運用を受託しました。そしてこの度、日本の個人投資家向けの公募投信の設定にいたりました。
――「S&P500アクティブ」の使い方について提案は?
中長期で「S&P500」をアウトパフォームする力があるということが一番大きい魅力になると思います。「S&P500」は米国株式市場の時価総額の80%以上をカバーし、長期にわたって右肩上がりを続けている非常に優れた株価指数といえます。その「S&P500」をベンチマークにしながら、中長期でパフォーマンスがベンチマークを次第に上回ることが期待できるというのは、これまでありそうでなかった商品です。そのため、インデックスファンドの次の選択肢として、今お持ちの投資信託の代替や追加で購入する候補としてご検討いただけると思います。
また、過去3年間程度のパフォーマンスは「マグニフィセント・セブン(マイクロソフト、エヌビディア、アップル、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、テスラ)」など、一部の大型ハイテク銘柄に市場の関心が集中する傾向が強くありました。現在、「S&P500」やオール・カントリーのインデックスファンドのなかで、こうした銘柄が占める比率も高まっています。
これまでも一部の銘柄に物色が集中することがありましたが、その後、徐々に集中物色された銘柄以外に物色範囲が広がることになり、集中と拡散を繰り返しています。この集中から拡散に移行する間は、指数が軟調になりやすく、今回のように大型株に極端な集中物色があった後は、その調整も大きくなるのではないかと考えられます。
このような環境では、当ファンドで着目するような企業の実力よりも過小評価されている株価の戻りが期待できます。そのため、当ファンドが「S&P500」をアウトパフォームする可能性が高いタイミングと考えています。
また、米国株式を対象としたアクティブファンドであるにもかかわらず、当ファンドは信託報酬を年0.99%(税込み)に抑えました。現在のアクティブファンドの平均は1.66%(2024年8月末時点、「国際株式・北米・為替ヘッジなし」カテゴリー、ウエルスアドバイザー調べ)ですから、コストの点でも競争力があると思います。ぜひ、中長期の資産形成に「S&P500アクティブ」のご活用をご検討ください。