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2024/09/25 12:27
9月に米FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を0.5%引き下げたことによって、これまでの市場環境が大きく変化したと受け取っていいだろう。盲目的に「S&P500」にさえ投資しておけばよいとは言い切れない展開にも備えなければならないようだ。これは、ここ数年にわたって人気の圏外に置かれていた資産には、復調のきっかけになることでもある。反転の兆しが出ているJ−REITにも注目しておきたい。 J−REIT価格の低迷が続いてきた要因の1つに、米国の長期金利高止まりがあるという指摘がある。J−REIT市場は売買代金の50%〜60%程度を外国人投資家が占めているため、J−REITの分配金利回りが米国10年債と比較して低い場合には、外国人投資家の売買が売り越し基調になりやすい。たとえば、外国人投資家は2024年5月に年初来最大となる642億円の売り越しとなったが、この時、米10年国債利回りは5月15日の4.34%が、5月29日には4.61%に上昇したが、この間に東証REIT指数は1808ポイントから1721ポイントに下落した。 米FRBが、9月18日に政策金利であるフェデラルファンドレート(FF金利)の誘導目標を年5.25%〜5.50%という水準から0.5%引き下げることを決定し、今後も徐々に利下げを重ねる可能性が高い。米国は2020年3月にコロナ・ショックで利下げを実施して以来、4年半ぶりとなる利下げを実施した。2022年3月にゼロ%金利からの利上げに踏み出し、2023年7月に5.25%〜5.50%という水準まで金利を引き上げていた。今回の利下げが、通常の調整幅の0.25%の2倍の水準になったのは、FRBが金融政策の変更を「景気の後追い」にならないよう、先回りして動くことの意志を示したものとされている。このため、今後の景気後退(リセッション)は避けられるという期待がある。利下げを機に、米国株価が上昇した背景だ。 米国が段階的に金利を引き下げていく動きになれば、米国10年債利回りが明確な低下基調となり、外国人投資家のJ−REIT投資が再度拡大する可能性が高いと期待される。 東証REIT指数は、8月上旬に日銀の利上げを受けて国内株価が急落した折に、大幅安となり、その後、株価が下落幅を取り戻すような動きになっているものの、J−REITの戻りは鈍い。過去3年のトータルリターンがマイナスになっているJ−REITを積極的に評価しづらいということだろう。ただ、過去の成績が悪いだけに、その利回りの魅力は増している。たとえば、J−REITファンドで最大の純資産残高3004億円の「J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」は、8月末時点の予想配当利回りが4.67%になっている。同ファンドは過去3年のトータルリターンがマイナス3.60%とマイナスに沈んでいるため、過去3年間で人気離散し、4000億円を超えていた純資産残高は1000億円以上減額している。 東証REIT指数ベースで、2024年8月末は予想配当利回りが4.6%と7月末の4.7%よりやや低下したものの、これは、月末ベースではコロナ禍でREIT価格が急落した2020年3月末時点の4.9%に匹敵するほどの高い利回りになっている。米国の10年債利回りは、すでに3%台半ばに低下しており、外国人投資家からみてのJ−REIT市場は魅力的な利回り水準になっていると考えられる。 今後、日銀は国内の金利を引き上げる意向を持っているが、物価指数などの経済指標に加えて株価の動向など市場の動きにも配慮した政策変更になる見通しだ。7月末に政策金利を0〜0.1%程度としていたものを0.25%程度に引き上げたが、これが1%を超えるような水準になるとは考えられていない。緩やかな金利上昇が見込まれるため、J−REITにとっては賃料の上昇など、底堅い景気を背景として経営環境は良好な状態が維持されると考えられる。 年4%を大きく超える配当利回りがあり、経営環境も最悪期を脱して復調基調にあるとすれば、長らく低迷してきたJ−REIT価格の上昇も期待されよう。投資環境が大きく変わりつつあるJ−REITとJ−REITファンドに注目したい。(グラフは、東証REIT指数と米国10年国債利回りの推移)
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