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2024/09/26 17:21
新NISAでいかに多くの国民に資産運用に踏み出してもらえるか? 資産運用立国を掲げる政府にとっても大きな課題だが、三菱UFJアセットマネジメントの常務取締役の代田秀雄氏(写真:左)は、9月20日に新規設定した「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」が「重要なピースになり得る」とする。9月25日に同ファンドを販売するPayPay証券代表取締役社長執行役員CEOの番所健児氏(写真:右)とともに共同会見を開催し、新NISAの活性化策等について語りあった。 代田氏は、現在2428万口座になっているNISA口座について、政府目標の2027年12月末の3400万口座を超えて、2030年3月末には4000万口座に拡大する可能性があると見通している。これは、NISAがモデルにした英ISAの国民普及率40%を参考にした見通しで「国内の成人の40%が利用することを想定すると4000万人程度が利用しても不思議ではない。現在よりも約2000万人の上積みが考えられる。これまで動いていない2000万人に投資を広げるには、その方々がこれまで投資に踏み切れなかった障害を取り除く必要がある」と強調した。 その障害の1つが「何を買えばよいのかわからない」というプロダクト(商品)の問題。「ファンド選びに迷わない」、「投資・資産運用は、これ1本で十分と言える商品」、「ファンドのリスクがコントロールされている」など、投資未経験者が安心して投資できる商品の提供が求められ、その解の1つとして三菱UFJアセットマネジメントが開発したのが「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」だという。そして、もう一つの障害である「簡単に投資できる」ための窓口という点で、PayPay証券が展開するモバイルアプリを通じた投資プラットフォームに大きな可能性があるとした。 PayPay証券は、2013年10月設立という比較的新しい証券会社でありながら、QRコード決済サービス『PayPay』ユーザー6500万人を対象としたモバイルアプリに特化した証券サービスを展開し、ポイント運用やPayPayアプリを通じた資産運用で多くの顧客を獲得してきた。特に、新NISAの獲得件数では、2024年1月〜6月まで半年の新規NISA口座開設数でトップの証券会社の67万口座、第2位の37万口座に次いで、PayPay証券は第3位の23万口座に食い込んだ(PayPay証券調べ)。番所氏は「先輩のネット証券に割り込んで第3極を作ることができた手応えがある」と語る。新NISAの新設口座の95%は、NISA口座を開設したのはPayPay証券が初めてという投資初心者だった。 PayPay証券は証券会社である前に「FinTech企業」であるという特徴がある。このため、UI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)をよりよくしていこうという発想がある。直感的な操作で初めてでも簡単に売買ができるUIを備え、NISA対象銘柄486銘柄を揃える豊富な商品ラインナップや、100円から毎日でも、毎週でも、毎月でも積立投資ができる利便性など、「資産運用を誰にとっても当たり前に」という考えのもとで使いやすいインターフェイスを提供している。証券会社への口座開設にあたってもPayPayの利用者には、必要な手続きを簡略化して「証券会社に新たに口座をつくる」というような構えた手続きを求めないようにしている。既に「ポイント運用」は1800万人が利用し、ネイティブアプリを通じてPayPay証券には130万口座がある。 投資初心者にとっては、NISAが「口座」ではなく、商品そのものと勘違いしている人も多く、「NISAを買いたい」という相談も少なくないのが実情だという。「今後、新たに2000万口座が追加される中にあっては、既存の資産運用ニーズに応える商品とは異なる視点が必要になる」(代田氏)という考えのもとで商品を企画したという。 「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」は、投資対象を15資産(8資産均等の8資産に加え、先進国株式と先進国債券の為替ヘッジあり、加えて、サテライト資産として米株「NASDAQ100」、日本超長期国債、国内物価連動国債、米国国債1−3年、米国国債20年超)として、それぞれのリスクが等しくなるように配分比率を調整したバランスファンドだ。ノーベル賞を受賞したハリー・マーコヴィッツ氏の現代ポートフォリオ理論「平均分散法」を使ってポートフォリオを組むものの、2010年代以降に実用化が進んだリスクベースアプローチも取り入れて、「ハイブリッドモデル」でポートフォリオを決定し、かつ、毎月1回のリバランスを行っていく。採用した目標リスクは「年率10%程度」。グローバル株式が年率20%程度であるため、その半分程度のリスク量に抑えた。 モデルポートフォリオの運用シミュレーションによると、今年8月5日の株価急落時に、米「S&P500」は高値を付けた7月10日と比較してマイナス17.88%に下落したが、モデルポートフォリオはマイナス14.84%だった。また、2020年3月の「コロナ・ショック」の時には「全世界株式(オール・カントリー)」は2019年12月末比でマイナス30.17%に下落したが、モデルポートフォリオはマイナス16.01%とほぼ半分の下落率だった。 さらに、モデルポートフォリオを使って長期のパフォーマンスを検証すると、2004年12月から2024年8月までの約20年間で、基準価額は3.84倍になった。また、2014年8月から2024年8月までの10年間で、年率リスクは10%弱の水準で、年率リターンは8%強という結果になった。そして、5年間積立投資をした場合は、リターンがプラスになった割合は85%だったが、10年間の積立投資の場合はリターンが100%プラスになった。 また、PayPayユーザーへのアンケート調査によると、投資の未経験者、また、投資初心者の意向として投資信託を選ぶときに重視するポイントは、「リスクが一定程度抑制されていること」、「低コストであること」、「買った後は運用会社にすべておまかせして、ほったらかしにできること」のポイントが高かった。「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」はPayPayユーザーで投資未経験の人たちのニーズに沿った商品性を実現している。信託報酬は年率0.99%以内(税込み)で、全世界の資産に幅広く分散投資して毎月リバランスを行って一定水準にリスクに抑えるファンドとしては低く抑えた水準になっている。
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