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2024/10/19 22:20
ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のグローバル・インデックス・プロバイダーであるFTSE Russellジャパンは10月17日、東京・虎ノ門で「FTSE Russell Fixed Income Day 債券の日〜グローバル債券投資高度化の新潮流」と題したイベントを開催した。FTSE世界国債インデックス(WGBI)は1984年末を基準とし、40年にわたって投資適格国債のパフォーマンスを表してきた代表的な債券インデックス。株式と並ぶ重要な資産クラスである債券市場では、パッシブ化や電子化など新しい動きが急速に進んでいるという。17日のイベントでは、2つのパネルディスカッション(「債券市場の近代化:インデックス、プライシング、市場インフラの未来」と「マルチアセットポートフォリオにおけるサステナビリティと投資リターンの両立(欧州機関投資家のケーススタディを踏まえて)」)を通じて、世界的な債券市場の現状を紹介するとともに、今後を展望した。 基調パネルディスカッションとして設定された「債券市場の近代化」には、りそなアセットマネジメントのインデックス運用部長である佐藤信幸氏(写真:右端)、トレードウェブ・ジャパンの代表取締役の武守美幸氏(写真:右から2人目)、FTSE RussellのFICC部門グローバルヘッドのスコット・ハーマン氏(写真:左から2人目)がパネリストになり、FTSE Russell FICC部門シニアディレクターの売野隆一氏(写真:左端)をモデレーターに議論を進めた。取引所取引が売買の中心になっている株式と比較すると、大口投資家の間での相対取引という店頭取引が中心の債券市場は、全般的に取引の近代化が遅れ、電子取引も株式などに比べて発展が遅れてきた。しかし、近年は急速に取引の電子化が進んでいるという。 債券やデリバティブ、株式などの電子取引プラットフォーマーとして世界の金融機関や運用会社などに流動性と取引機会を提供しているトレードウェブ・ジャパンの武守氏は、2020年のコロナ・パンデミックでリモートワークが常態化したことなどがきっかけとなり、債券取引の電子化が急速に進んだという。そして、2024年第2四半期の米国債取引における電子化比率は約70%、第3四半期は約60%を占めているとした。日本国債の電子化比率も第2四半期に38.8%になり、この電子化比率は年々高まってきていると語っていた。 そして、電子取引が普及するととともに、取引の透明性が向上するとともに取引データの蓄積が急速に進展し、AI(人工知能)による機械学習機能を活用した投資分析やリスク管理システムなどの開発が急ピッチで進んでいるという。また、2025年3月からFTSEのグローバル債券インデックス(WGBI)やFTSE世界BIG債券インデックス(WorldBIG)、FTSE米国BIG債券インデックス(USBIG)、FTSEユーロBIG債券インデックス(EuroBIG)、FTSE英国BIG債券インデックス(UKBIG)やその派生指数に採用している米国債、英国債、欧州国債の価格ソースを電子取引Tradewebのクロージングプライス(引値)を活用することを決定している。FTSE Russellは指数管理者としてTradewebによるこれらの価格の計算の統制と監視を担当。引値はEUおよび英国のベンチマーク規制、ならびにIOSCO金融ベンチマーク原則に従って管理されている。 また、トレードウェブでは、流動性の低い債券について、AIの機械学習機能を使って参考価格「AIプライス」を出せるシステムを提供し、債券レポ取引(現金を担保にした貸借取引)の電子取引なども急速に取引高を拡大しているという現状を紹介していた。 このような電子取引の発展の現状についてりそなアセットの佐藤氏は、「人が介する機会が減少し、取引のスピードアップや誤発注などのミスの低減につながっている」と語った。そして、債券の売買をサポートするツールも様々に提供されるようになってきたことから、「例えば外債取引で従来は売買計画を立案・実行するために2時間〜3時間かかっていたものが、今では30分程度で実現できるようになった。それによって1人のマネージャーが担当するファンドを増やすことができるようにもなっている」と現状を語った。ただ、依然として債券取引には、利金が入ってくるタイミングの管理や貸し出した債券がいつ戻ってくるかなど、複雑な取引管理の仕組みを理解して管理・実行する経験などが必要であり、「パッシブ運用ならボタン一つでできるという状況までは相当時間がかかりそう」と語っていた。 しかし、債券取引の電子化は急速に拡大しつつあり、その動きに並走するように、債券運用のパッシブ化も大きな流れになってきている。 一方、債券運用にSDGsの視点を取り入れたいというニーズに対してFTSE Russellが欧州の年金基金と運用を受託しているゴールドマン・サックスと3者連携でSDGsの要素を取り入れたインデックスを開発したことについてFTSE Russellのハーマン氏が開発の経緯を語った。その結果出来上がったインデックスは、トータルリターンは通常の債券インデックスとほぼ同じ水準を確保した上で炭素使用量を68%削減するなどSDGsスコアが明確に高いポートフォリオを構築することができた。株式とともに債券でもSDGsやESGに配慮した運用を求める動きが欧州では高まってきているため、1つのソリューションとしてFTSE Russellの債券SDGsインデックスは評価を得ていると紹介した。(写真は、FTSE Russell債券の日の基調パネル「債券市場の近代化」の様子)
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