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2024/10/23 10:22
アムンディ・ジャパンはアムンディ株式運用部門ヘッドのバリー・グラビン氏=写真=が来日したのを機に10月22日、グローバル・インベストメント・ビューについてグラビン氏が解説するメディアラウンドテーブルを開催した。グラビン氏は2024年2月に約400億ユーロを運用するアムンディグループの株式運用部門のヘッドに就任し、就任後初めての来日になった。グラビン氏は、世界経済がソフトランディングの動きを見せる中、世界の株式市場などリスク資産は年初来の高値圏にあるものの、「インフレはコントロールされ、世界の中央銀行は協調して金融緩和サイクルに入っている」として投資環境は良好な状態と語った。ただ、一部の割高な資産には警戒も必要とし、欧州の中小型株や日本株式などに強気の見方をしていた。 グラビン氏は、HSBCアセット・マネジメントでポートフォリオ・マネージャーや株式アナリストを経て、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズでファンダメンタル・バリュー株式チームのチーフ・イベストメント・オフィサーを務めた。2024年2月にアムンディの株式運用部門ヘッドに就任した。グラビン氏は就任後、約8カ月間を振り返って「運用や調査に直接携わっている担当者だけでなく、そのサポート部隊やセールスと運用チームをつなぐ役割を担っているチームなど、よりよい運用サービスを届けるという目的に沿って、非常に堅牢に組織的なチームが機能していることは驚く体験だった」と語っていた。このチームの利点を最大限に生かしてボトムアップで魅力的な投資対象を見出して優れた運用を届けたいと語った。 アムンディの世界経済見通しは、全世界の経済成長率が24年に3.2%から、25年は2.9%に減速するとの見通し。先進国は24年も25年も1.6%成長ながら、新興国が24年に4.3%成長から25年は3.8%に減速するとみている。地域別には、米国が24年の2.5%から25年は1.9%に減速する見通しだが、ユーロ圏は24年の0.8%成長が25年は1.0%とわずかながら上向き、英国も24年の1.1%が25年は1.6%、日本も24年の0.5%が25年は1.4%に加速する見通しだ。一方、新興国については、インドが24年に6.8%成長の見通しが25年は6.2%に減速、中国は24年に4.8%が25年は3.7%と見通している。グラビン氏は、「グローバル経済は底堅いものの地域によって成長スピードにばらつきがあり、マクロ経済の不確実性が高い」ことを常に意識して、見通しに決めつけをしないことの重要性を強調した。 投資環境は良好で、リスク資産への投資をバランスよく進める環境にあるという見方だった。ただし、一部の市場には割高感もあり、「健全な財務体質と強じんなビジネスを有する企業を選好するなど、投資対象の見極めは重要」とした。たとえば、米国株式市場は「マグニフィセント・セブン(M7)」といわれる大型ハイテク株への集中投資の結果、株価指数が割高な水準にあるように見えるが、M7を除くベースでみると割高感はそれほど強くないという実態もある。「M7がどこまで堅調な状態を続けるかはわからないが、リスク管理の観点では他に魅力的な投資対象はないかということも考えることも大切ではないか」と語った。 そして、当面の投資アイデアとしては、「ユーロ圏は過去4四半期連続でEPS成長率がマイナスで推移していたのが、2024年第2四半期に3.0%成長へとプラス転換し、第3四半期はプラス4.6%、そして、第4四半期には10.4%へと成長が加速する見通しだ」と欧州企業の業績回復に注目しているとした。中でも公益と銀行は、2ケタの利益成長が3四半期連続で続くこと、また、素材セクターがプラス成長に転換したことなどに対して情報技術はマイナス成長が続いていることなど、業種や個別企業によって成長に差があることに留意する必要があるとした。また、欧州の中小型株は大型株に対して割安な水準にあり、ECB(欧州中央銀行)が利下げを継続する中で、利下げ局面では中小型株が大型株をアウトパフォームする傾向があることにも注目しているとした。 また、日本企業については、堅調な利益予想が続いていること、また、政策保有株の売却や自社株買いなどを通じてROE(自己資本利益率)を高めるための取り組みを進めてきた成果が表れ始めていることも評価のポイントとした。欧米の中央銀行が利下げのサイクルにある中で、日銀は利上げの方向にあり、「年内に1回、来年の第2位四半期までに1回程度の利上げが実施される可能性はある」という見方をしているものの、それによって為替が1ドル135円を超えて急速に円高になるようなことがなければ、日本企業の堅調な業績は続くだろうとの見方だった。「個別の企業では、為替変動に対してしっかりヘッジして為替変動による業績のブレを抑えることができる企業もある。個々の企業の取り組みをしっかりと調査して、個別に判断していくことが重要だ」とボトムアップリサーチの重要性を強調していた。
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