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2026/04/22 09:05
中東情勢の緊迫化による原油価格の急騰が世界的なインフレ懸念となって世界の株式市場の今後を見通すことが難しくなっている。不安定な市場が続く中、投信市場ではアクティブファンドへの注目度が高まっている。プロの運用者の投資判断によって難しい局面を乗り越えたいという考えが強まっているためだろう。フィデリティ投信の「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」は、同じ戦略で日本株に投資する「フィデリティ・日本割安成長株投信」(テンバガー・ハンター・ジャパン)、同戦略で欧州株に投資する「フィデリティ・欧州割安成長株投信」(テンバガー・ハンター・ヨーロッパ)と合わせるとシリーズ全体で純資産総額が1兆6500億円を超える国内の投信市場を代表するアクティブファンドだ。「テンバガー・ハンター」の共同運用主担当者であるサム・シャモビッツ氏(写真:右)とモーゲン・ペック氏(写真:左)に運用の現状について聞いた。◆割安株投資に運用環境の変化は? ――「テンバガー・ハンター」は設定来、常にインデックスを上回るパフォーマンスを続けてきましたが、2025年からインデックスを下回る場面があります。この理由は? ペック このファンドは、3年〜5年にわたって、あるいは、景気のサイクルを超えてインデックスをアウトパフォームすることをめざしており、割安で質の高い銘柄に注力することで、この目標を達成できると考えています。2025年以降に苦戦しているのは、より割安感のある銘柄で非常に質の良い銘柄を見つけて投資するというスタイルが厳しい状況にあるためです。 私どものベンチマークは「MSCI World(ワールド・インデックス)」ですが、2025年には20%強も上昇しました。そして、過去1年以上で最も好調だった銘柄を見てみると、必ずしも質の高くない企業もあり、多くの場合、それらは投機的な銘柄でした。中には利益が出ていない銘柄もあり、全てが過大評価されていると考えていました。 つまり、これらの銘柄は私たちのプロセスに合致しなかったのです。私たちは割安で質の高い、強力なフリーキャッシュフローを生み出す企業に投資することに重点を置いているため、ここ最近はベンチマークを下回る成績になってしまいました。 パフォーマンスが厳しい状況になっていますが、私たちの投資アプローチは変わりません。長期的に見れば、割安で質の高い銘柄に投資することが最善だと考えています。 ――イランで戦争が起こって、世界の株式市場のボラティリティが高まっています。この状況は、このファンドには難しい時期なのでしょうか? シャモビッツ 不確実で不安定な市場環境の中でも小型株などが堅調に推移するなど市場は環境にうまく対応していると感じます。中東情勢の緊迫化により、エネルギー価格が急騰するような状況にあっても中小型株式指数である「ラッセル2000」は年初から9%程度値上がりした水準にあります。 投機的な銘柄が非常に大きく上げたことによって全体を押し上げているという状況にはありますが、私どもは、こういった混乱した環境にあると勝ち組と負け組の判断がしやすい環境であるとも考えています。 現在の環境では短期的にはアメリカが経済的に一番いいポジションにあるといえます。AIが進んでいるということもありますし、アメリカはエネルギーを自給できる点も有利です。私どものファンドでは、現在、アメリカは総じて割高と考えてアンダーウエイトにしていますが、投資に適う銘柄がないか調査に力を入れています。 経営がしっかりしているところを探すことが重要です。事業としてのビジネスモデルがしっかりしている、資本の健全性が非常に高い、また、経営者の経営能力が非常に高いといったような、いわゆる質が高い企業を探します。そのような質の高い企業は、どこの地域に限って、どのセクターに限ってということではありませんので、全ての地域、全てのセクターを対象に企業調査を行い、比較・検討して組み入れるかどうか判断するということを継続して行っています。 ――市場が混乱して選択しやすい環境にあるという話でしたが、株式市場の動きを見ていると主要なインデックスは、アメリカもヨーロッパも日本も同じような値動きをしているように見えます。市場全体では銘柄を選別して買う意識は低いのでしょうか? ペック 短期的に各地域の株価がよく似た動きをしているというのはおっしゃるとおりです。各市場の相関関係が高まっています。これは、プログラム取引やバスケット取引が多く、特にリテール投資家は市場の動きに連動して動きやすい傾向があるため、不確実性が高まる市場においては一方向に動きやすくなっていると思います。 このような環境になると、むしろ割安になる銘柄は当然出てきます。質は良いけれども、価格が割安だという銘柄を探す機会は増えていると思います。◆「日本」「欧州」「米国」の地域別特徴と戦略は? ――日本の市場は、どうみていますか? シャモビッツ 日本は構造的に見て、新たな投資アイデアを探すのに最適な場所の一つです。その理由は、上場企業の種類が豊富で、財務状況が健全であり、国内企業にとって大きな経済規模があるからです。さらに、産業やテクノロジーといった多くのグローバル分野でリーダーシップを発揮しており、高い成長機会が見込まれます。 また、日本は市場の構造変化が始まったばかりです。経営統合も進んできています。以前は統合について非常に消極的だったために、それが非効率性をもたらしていました。市場の整理・統合が進むことは非常に魅力的な点です。 今後10年か20年で構造変化から最も恩恵を受けるのは、おそらく小型バリュー株の分野だと思います。なぜなら、これらの分野は完全に過小評価されているからです。多くの場合、これらは家族経営の企業でもあるため、事業承継について考える必要があるかもしれません。これは改善されつつある点の1つです。 2つ目は、株主重視の姿勢、つまり自社株買いと配当です。数年前に大きな変化が見られましたが、株主還元に対する考え方はより持続的になっています。しかし、相互株式保有、バランスシートの健全性など、改善の余地はまだ大きいと考えています。キャッシュフローに関しては良い結果を出せていますが、バランスシートに関してはさらに改善の余地があります。 市場全体の評価は、世界の他の地域と比べて依然としてかなり魅力的です。ただ、米国とは正反対に、日本はエネルギーの海外依存度が高く、インフレに慣れていないため、短期的にはこれらの点が日本にとってのプレッシャー要因となると考えています。 ――ヨーロッパは今年、非常に動きが鈍いように見えているのですが、ヨーロッパはどう見ていますか? ペック 欧州には多くの有望な投資アイデアがあり、当ファンドは欧州株への投資比率を高く維持してきました。その大きな要因は、欧州株のバリュエーションが非常に魅力的であることです。昨年のヨーロッパ市場について言えば、有利に働いた要因の一つは、株価評価の出発点が非常に低かったことです。 私たちは長期間にわたり欧州株への投資比率を高く維持してきましたが、今年は明らかに勢いが衰えています。日本と同様に、ヨーロッパもエネルギー価格の高騰でマイナスの影響を受けていること、輸入エネルギーに大きく依存している産業企業が多く、そのためコストが上昇していることが懸念材料になっていると思います。 また、ヨーロッパ市場が今年の年初来で出遅れているもう一つの理由は、AI分野で成功を収めた企業が少なく、AI分野で負け組と見なされている企業が多いことです。これはITサービス分野にも当てはまります。ヨーロッパにはいわゆるNVIDIAのような企業が存在しません。 私たちが有望な投資先として注目しているヨーロッパの分野は、まず一つ目は、当ファンドでオーバーウェイトしている金融セクターです。これには銀行と資産運用会社の両方が含まれます。 銀行セクターに関して私たちが注目しているのは、多くの国で過去10年間で業界構造が改善された分野であるということです。多くの統合が進み、銀行の経営は以前よりもはるかに良くなりました。資本が増え、引受業務も向上し、実際に資本還元を実現しています。これは10年前とは劇的に異なる状況です。 もう一つ、私たちがオーバーウェイトで割安感を見出している分野は、生活必需品セクターです。具体的には、ビールやスピリッツ、コカ・コーラのボトラー、そして、タバコといった分野に投資機会を見出しています。タバコは、成長率が低い業界だと考えられていますが、タバコ業界は多額のフリーキャッシュフローを生み出し、それを株主に積極的に還元しています。そして、銀行と同様に、非常に魅力的なバリュエーションとなっています。多くの場合、PERは10倍程度ですが、これはかなり魅力的です。 最後のグループは、産業用流通業者です。これらの企業は様々な商品を流通させていますが、共通しているのは、利益が伸び悩んでいるものの、良好なフリーキャッシュフローを生み出しており、バリュエーションは比較的割安です。 ――アメリカはアンダーウエイトにしているということですが、アメリカには魅力的な銘柄が少ないということですか? シャモビッツ 重要なことは、米国の株価評価が全体的に見て非常に割高であるということです。米国の主要株価指数はPER(株価収益率)が20倍を超えています。これに対し、欧州は13〜14倍、日本は12〜13倍程度です。このように株価評価に大きな格差があるため、米国以外の地域でより多くの投資アイデアを探しているのです。 たとえば、米国で私たちが投資機会を見出している分野は、いわばAIの負け組と見なされている企業です。具体的には、金融、保険ブローカー、資産運用会社などが挙げられます。また、ITサービスなどのテクノロジー分野でも注目できる企業があります。 つまり、どのセクターかということよりも、どの企業がAIの負け組と見なされているかという点に注目しています。一見すると敗者に見えていても、実は真の勝者だといえる企業にチャンスがあると考えています。3年から5年の長期的な視点では、短期的な市場は純粋にモメンタムベースになりがちで、短期的に異なる見方をしても必ずしも報われるとは限りません。しかし、中長期的には良い結果につながると考えています。◆分散投資と長期投資の重要性 ――日本にはグローバルと日本と欧州という3つのファンドがあるのですが、現時点で最も魅力的な投資対象はどれですか? シャモビッツ 投資家にとって考慮すべき点は2つあると思います。1つは構造的な資産配分、もう1つは、戦術的な資産配分です。 まず、日本の投資家はグローバルに投資すべきであり、資金のすべてを日本株だけに投資すべきではありません。グローバル経済においては、通貨は変動します。イノベーションが起こっている地域に幅広く投資することで、購買力を高めることが重要です。そのため、日本の投資家は地理的に分散投資を行うのが最善の方法になると思います。 構造的な資産配分については、第一に、幅広く投資することを推奨します。国内ファンド、欧州ファンド、そして、グローバルファンドに広く投資することです。 そして、時間とスキルがあれば、そこから配分を微調整することもできます。国内ファンドを手厚くするとか、欧州を増やすなど、それは戦術的な判断になります。しかし、歴史が示すように、これを的確に変更していくことは事実上不可能です。 ですから、運用者としての助言は、配分を固定し、3つのファンドに資金を分散投資し続けることです。可能であれば、積立投資で定期的に資金を積み足すようにしてください。 なぜなら、どの地域が有利になるかは予測できないからです。最も重要なのは、ファンド全体に分散投資し、継続的に投資することです。市場のタイミングを計ることは不可能であることが証明されていますし、市場が動き出すと非常に速く動くため、タイミングを計っていると最高のチャンスを逃してしまう可能性が高いのです。
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