コラム

米国籍アクティブETFからみるその特徴は

2022-07-21

 ETF(上場投資信託)とは、証券取引所に上場されている投資信託のことを指す。国内では、その全てが指数に連動した成果を目指すパッシブファンドであり、2023年6月末時点の投資対象資産別では国内株式型、国内REIT型、特殊運用型、国際債券型、国際株式型、国内債券型、商品指数連動型、国際REIT型、バランス型が設定されている。一方、同月末時点における投資対象資産別の純資産総額比率では、国内株式型が98.3%となっており、TOPIXや日経平均株価を連動目標指数とするETFの資産規模が大きく、投資家にとっては選択肢の幅が少ない現状が見受けられる。このような中で東京証券取引所では、指数を上回る投資成果を目指すアクティブETFの上場を解禁し、今秋にも上場する見通しだと話題になった。

 では、海外でのETF市場には、アクティブETFの設定があるのだろうか。2023年6月末時点の米国籍及び欧州籍におけるETFのアクティブ・パッシブ別純資産総額比率を見ると、米国籍は5.7%、欧州籍は2.2%とわずかながらではあるものの、アクティブETFの設定があった(図表1参照)。

図表1:国内籍、米国籍、欧州籍におけるETFのアクティブ・パッシブ別純資産総額比率

図表1:国内籍、米国籍、欧州籍におけるETFのアクティブ・パッシブ別純資産総額比率

※各国籍のETFを対象に集計
※2023年6月末時点
出所:ウエルスアドバイザー作成

 次に、米国籍のETFに焦点を当てて見ていきたい。同月末時点における米国籍パッシブETFの運用会社別純資産総額比率を見ると、iシェアーズシリーズを有するブラックロックが34.4%、バンガードが30.7%、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが15.5%と、日本でも馴染み深い運用会社が設定するETFの資産規模が8割を占めていた(図表2参照)。純資産総額上位の米国籍パッシブETFでは、第1位が「SPDRR S&P 500 ETF Trust」(ステート・ストリート)、第2位が「iShares Core S&P 500 ETF」(ブラックロック)、第3位が「Vanguard 500 Index Fund」(バンガード)と、運用会社別でも、個別ファンドでも上位はあまり変わらなかった。

図表2:米国籍パッシブETFの運用会社別純資産総額比率

図表2:米国籍パッシブETFの運用会社別純資産総額比率

※米国籍パッシブETFを集計
※2023年6月末時点
出所:ウエルスアドバイザー作成

 一方、同月末時点における米国籍アクティブETFの運用会社別純資産総額比率を見ると、1981年に米国で創業し、学術研究を資産運用に応用した投資哲学を有するディメンショナル・ファンド・アドバイザーズが22.5%、JPモルガンが15.4%、1991年に米国で創業し、クリーン・エネルギーやサイバーセキュリティなどのテーマに特化したETF等の運用を手掛けるファースト・トラスト・アドバイザーズが12.6%などとなった(図表3参照)。米国籍パッシブETFの純資産総額比率で第1位となったブラックロックは米国籍アクティブETFでは第7位、同第3位となったステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは第10位となっており、米国籍パッシブETFとアクティブETFを運用する会社の顔ぶれは大きく違っていた。

 米国籍アクティブETFの純資産総額上位10ファンドでは、米国大型株式を主要投資対象とする「Dimensional US Core Equity 2 ETF」(ディメンショナル)や「Dimensional US Marketwide Value ETF」(同)が、第3位と第5位にランクインしたほか、米国大型株式への投資とオプションの売却を組み合わせて運用される「JPMorgan Equity Premium Income ETF」(JPモルガン)が第1位に、今までの産業構造や生活スタイルを一変させる技術革新を“破壊的イノベーション”と定義し、それに合致した銘柄に投資を行うアーク・インベストメントが運用する「ARK Innovation ETF」(アーク)が第8位になるなど、米国株式への投資のみならず、デリバティブを活用したファンドやテーマに特化したファンドも見られた。また、「JPMorgan Ultra−Short Income ETF」(JPモルガン)が第2位、「PIMCO Enhanced Short Maturity Active ETF」(PIMCO)が第4位、「First Trust Enhanced Short Maturity ETF」(ファースト・トラスト)が第7位、「iShares Ultra Short−Term Bond ETF」(ブラックロック)が第10位に入り、上位10ファンド中4ファンドが超短期債を主要投資対象としている点も特徴的だった。

図表3:米国籍アクティブETFの運用会社別純資産総額比率

図表3:米国籍アクティブETFの運用会社別純資産総額比率

※米国籍パッシブETFを集計
※2023年6月末時点
出所:ウエルスアドバイザー作成

 今回は、米国アクティブETFを見てきたが、国内ではどのようなアクティブETFが登場し、投資家の選択肢は広まるのだろうか。また、国内では投資資産別純資産総額比率が国内株式型に偏っているが、国内アクティブETFの登場でどのように変化するだろうか。今後の動向に注目していきたい。

(平井 綾香)

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