バンガードETFポートフォリオマネジャーに聞く、ドル建て新興国債券が注目の理由

 インデックスファンド運用最大手バンガードが日本でのETF(上場投資信託)ラインアップを一段と強化している。13年9月には新たに3本の米国上場ETFの取り扱い開始を発表し、個人投資家が国内で購入可能な同社ETFは合計12本となった。このうちの1本が、新興国の政府や政府機関、国有企業が発行する米ドル建て債券に投資する「バンガード・米ドル建て新興国政府債券ETF(VWOB)」だ。このほど、同ETFなどの運用を担当するバンガードのポートフォリオマネジャー、ヤン・プー氏が来日。同氏にバンガードの投資哲学やVWOBの特徴などを聞いた。

<分散投資の観点で新興国債券に注目>

 VWOBは米国で13年5月31日に設定されたETFで、「バークレイズ米ドル建て新興市場政府債RIC基準インデックス」に連動する。プー氏は同社がVWOBを投入した理由について、「バンガードの米国籍ETFのラインアップは債券型のほとんどが米国に投資するものだった。そこでわれわれは新興国の債券ETFが分散効果のメリットを提供できると考え、ドル建ての新興国債券ETFであるVWOBの設定を決定した」と述べた。

 新興国の債券市場は13年にFRB(米連邦準備制度理事会)の量的金融緩和縮小懸念から値を下げる場面があった。しかし、プー氏は「新興国の債券はポートフォリオのコア(中心)には適していないかもしれないが、分散投資の観点から常にポートフォリオの一部として組み込む価値がある」と話す。

 米国債に対して十分なスプレッド(利回り格差)があるのも魅力だ。「米国社債のスプレッドが約1.0−1.3%であるのに対して、新興国債券のスプレッドは約3.0%ある」(プー氏)として、先進国で超低金利が続くなかで投資妙味があるとした。また、同じ新興国が発行する債券でも現地通貨建て債券に比べ、ドル建て債券のデフォルト(債務不履行)率は低いとされ、信用リスクの面で安心感があるという。

<圧倒的なコスト競争力、秘訣は合同運用>

 VWOBの注目すべき点はやはりコストの低さ。同社によると日本の信託報酬にほぼ相当する経費率(12年12月末時点)は米国籍の新興国債券ETFの平均0.52%や米国籍の新興国債券ミューチュアルファンド(ETFではない一般的な投信)の平均1.28%に比べ、VWOBは0.35%と圧倒的なコスト優位性を誇る。保有し続ける限り投資家が支払う必要がある経費率をいかに低く抑えるかが、最終的なリターンを改善するうえで重要となるため、「特に長期投資においては低コストであることが良い商品の条件となる」とプー氏は語った。

 同氏によると、バンガードのコスト競争力の源泉はETF運用の独自の仕組みにある。通常、他社がETFを運用するために単独のポートフォリオを構築するのに対して、バンガードはミューチュアルファンドの他のシェアクラスとETFを合同で1つのポートフォリオとして運用するため、規模のメリットを生かすことができ、その分コストを引き下げられる。これはバンガードが特許を取得済みで、他社が真似できない仕組みとなっている。

<BNDXも保有すればさらなる分散が可能>

 なお、バンガードは「バンガード・トータル・インターナショナル債券ETF(ヘッジあり)(BNDX)」というETFを同じく13年5月31日に米国で上場している。同ETFは米国を除く世界各国の政府や政府機関などが発行する現地通貨建ての投資適格債券に投資し、米ドルヘッジを行う。主要な投資対象国は日本やフランス、ドイツなどの先進国で、新興国の組み入れは少ない。

 プー氏は、「バンガードは常に幅広いマーケットに分散投資することを顧客に提案している」と語り、VWOBだけでなくBNDXを保有することでより高い分散効果を享受できるとした。BNDXは日本の金融庁に届出済みだが、まだ日本の個人投資家には利用可能となっておらず、同社の今後の対応が注目される。
提供:モーニングスター社
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