アジア最大の運用会社になった三井住友トラスト・AM、グローバルな視点で優れた運用サービスを提供する

 三井住友トラスト・アセットマネジメントは、10月1日に三井住友信託銀行の資産運用部門と統合したことで運用資産残高は66.3兆円(9月末現在)と、日本のみならず、アジアで最も大きな運用会社になった。統合新発足に合わせて同社の社長に就任した菱田賀夫氏に、当面の経営方針について聞いた。

 ――統合新会社のトップに就任された抱負は?

 まずは、運用会社としてのカルチャー、ブランド、アイデンティティなどを、さらにしっかりしたものに作り上げていきたい。

 運用会社のM&Aは世界中で行われているが、当社は、機関投資家向けのビジネスを展開していた信託銀行の運用部門と、個人向けの投資信託を提供していた投信会社が1つになったので、それぞれのビジネスや人材に重なり合う部分が少ないことが特徴だ。したがって、コストシナジーのような経営コストの削減効果は大きくない。さらなる成長を実現するステップとしての統合なので、その成果は、これからの商品・サービス力の向上によって評価されるものと考えている。

 運用会社としての成長は、お客さまとともに歩む成長だ。お客さまに、この統合を歓迎していただけるようにしていきたいと思う。

 ――世界には、御社の10倍を超えるような運用資産を受託する巨大な運用会社がある。アジア最大級として世界のトップを競合相手として競い合う考えか?

 グローバルベースで発想しようという考えなので、世界のトップクラスの運用会社を意識はする。しかし、それは規模の追求ということではない。運用会社にとって規模の意味は、テクノロジー投資などの面で、世界に負けない投資が可能になるということだ。

 規模とサービスのクオリティー、あるいは、商品のリターンは必ずしも一致しないということも忘れてはならない。規模のメリットを生かしつつ、クオリティーの伴った成長を実現するという、そのバランスが大事なのだと思っている。

 グローバルな運用会社と比較して、日本の運用会社はガバナンスの高度化で課題がある。新会社の発足にあたっては、監査等委員会設置会社とし、社外取締役も従来の1人から3人に拡充。また、有識者に参加していただく各種委員会を設けた。フィデューシャリー・デューティー諮問員会、スチュワードシップ活動諮問員会、人事・報酬委員会などが取締役会を補佐する体制にした。

 実際に、これら委員会の方々と、さまざまな議論を始めているが、いろんな指摘やアイデアなどをいただいており、良い緊張感を保ちながら経営に向き合えていると感じている。

 ――新たな組織の特徴は?

 運用会社の特徴が出せるアクティブ運用の組織で、「アクティブ運用部」の下に、「株式運用」「債券運用」「マルチ戦略運用」「投信運用」の4つのユニットを設けた。このユニットは、いろんなマーケットを横断的に情報共有することを意図している。

 また、専門ミッションを持った「室」をいくつか設けた。営業企画部の下に「金融リテラシー推進室」を設け、中・長期投資の浸透について、社会により積極的に働きかけていく。総合企画部には「フィデューシャリー・デューティー推進室」を設け、また、デジタル化を専門に扱うチームも設置した。テキストマイニングを使ったAI的アプローチなどをすでに運用の一部に生かしているが、これは、運用だけにとどまらず、会社の経営効率化なども包含する。

 ――当面の取り組み課題は?

 個人分野である投資信託ビジネスは、現在の残高が10兆円程度で、投資顧問資産と比較するとボリュームが小さい。機関投資家向けの年金受託などで培ってきた中・長期に安定した運用力を生かした商品を開発・提供し、投信分野をより大きくしていきたい。

 また、販売会社へのサポート体制の強化とともに、情報提供に一層の力を入れ、最終的には受益者の方々に届く情報を発信していきたい。

 機関投資家向けサービスは、長年にわたって育み、磨いてきた運用ビジネスの原点だ。機関投資家向けの運用商品の中から、オルタナティブやESGなど、個人向けの商品に展開できる新しいプロダクトも生み出されてきている。この分野を一層強化することこそが、当社の成長の原動力になっていくと思っている。

 一方、国内市場のみならず、海外からの運用受託にも意識的に取り組む。受託資産残高は過去3年で3倍になり、2兆円を超えた。海外からの運用受託であるが、日本の株式のみならず、グローバル運用などの分野でも受託実績があがっている。アジア最大級の運用会社として海外投資家の期待も感じているところだ。
提供:モーニングスター社
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