「失敗の法則」から学ぶ資産運用法(2):自分だけで健康状態を判断する=ブラックロック浜田氏に聞く

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉がある。投資で必ず成功する秘訣を探っても、局面によって異なり、結局は「柔軟に対応する」以外に普遍的な法則を見出すことは難しい。ただ、失敗には必ず理由があり、こうすれば必ず失敗するという秘訣?は何となく示せるような気がする。この「失敗の法則」を反面教師とし、運用に活かせるのでは―ブラックロック・ジャパンの取締役リテール営業部門長の浜田直之氏が、人生100年時代といわれるこれからの資産運用を考えるポイントを語る。

<貯蓄から投資は世界の課題>

 前回、運用を車の運転に例え、「何のために運用をするのか」という目的を決めて、具体的に運用をスタートすることの重要性をお話した。では、実際にゴールに向かって運用を開始しようとしたときに、どのような資産にどのように投資すれば良いのか分からないという悩みに直面する人も多いのではないだろうか。

 悩んでいるのは日本の投資家だけではない。ブラックロックは2014年から「ブラックロック・グローバル・インベスター・パルス・サーベイ」(投資家動向調査)を実施している。日本の個人約1000名に加え、アメリカ、カナダ、英国、ドイツ、中国など18カ国とグローバルで調査している。

 2017年の調査結果によれば、個人金融資産の構成比をみると、日本は現預金が75%を占め、ゼロ金利の中で現預金比率が一段と高まっている。この背景には、「自分の財産を管理できていない」と感じている人の比率が高いことがあるとみている。自身の財産管理ができないため、将来が展望できない。したがって、将来が不安で、とりあえず現金に置くという悪循環に陥っているのではないか。

 一方、アメリカの現預金比率は58%だ。長期にわたる好調な株式市場や経済成長を考慮すると高水準にとどまっているといえる。アメリカの個人金融資産に占める現預金比率は10−20%程度と示される各種統計資料をよく目にするが、米国の預金の約80%は金融資産の保有上位10%の富裕層に占められていて、この富裕層は株式を多く保有しており、現金比率は10%程度に過ぎないとも言われている。

 「貯蓄から投資へ」という話は、実は日本だけの課題ではない。ブラックロックは、多くの人々にとって退職後の備え不足がグローバル共通の課題であると意識している。

<日本にも変化の兆しが>

 2017年の調査で私たちが最も驚いたのは、約6割の日本人が「貯蓄から投資へ」を検討したことがある、と答えたことだ。先進国ではダントツに高い比率だ。現預金比率は高いものの、何かしなければという気持ちも芽生えている。

 また、同じ調査でもう一つ目を引いたのは、退職後の準備を開始すべきと考える時期が早まっていることだ。「39歳までに」という回答が2015年には47%だったが、今回は64%になった。そのうち、「10代から」との回答も10%となった。NISAやiDeCoなど制度面での後押しもあろう。

 このように、わかっていながら、行動に結びついていないのは、日本において、証券会社や銀行、保険会社など金融機関の担当者であるファイナンシャル・アドバイザー(FA)の役割が十分に理解されていないためではないかと思う。本調査によると、日本でFAを利用している人は12%程度でアメリカの利用率の半数にも届かない。

<信頼できる「マネードクター」を持とう>

 2015年の調査によれば、アメリカ人は、結婚を決めたとき、子供ができたとき、家を買うとき、退職時など、ライフイベントがあるたびに、ライフプランについて第3者に意見を求めている人が多いが、日本では、その比率はきわめて低い。その結果、お金の対策をしていない人の割合が高くなっているとみている。

 私たちは、身体の調子が悪くなると、医師に相談して専門的な見地からアドバイスをもらう。身体の不調については、自分で判断するよりも、医師の方が的確な診断ができると考えているからだ。お金も同じことだ。信頼できるホームドクターのような人がいて、客観的な立場から現状を評価し、将来への備えについてアドバイスを受ける方が良いだろう。

 米国ではお金の悩みを相談する独立系のFAが地域ごとにいて、親から子へとアドバイザーも引き継がれているほど普及している。日本では現状を鑑みると、必ずしも独立系でなくとも良く、信頼できる人にアドバイスを受けることが大事だ。「まずは身近な金融機関のドアをノックし、信頼できるマネードクターに相談しましょう」と多くの皆さまに申し上げたい。
提供:モーニングスター社
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