市場が生まれて20歳を迎えたベトナム株式市場、コロナを越えて中・長期的な成長に期待

 ベトナムのホーチミン証券取引所が7月20日、開設20周年を迎えた。2000年7月20日に上場したのは2銘柄だったが、現在の上場銘柄数は380社、時価総額は2800兆VND(約13兆円)を超える規模になった。ベトナムには2005年3月に開設されたハノイ証券取引所と、09年6月にスタートした公式店頭市場UPCoMという株式市場がある。中国と同じように共産党政権下にあるベトナムだが、1986年12月に決定された「ドイモイ(刷新)政策」の効果によって、市場経済への転換が進み、近年ではGDP成長率で年7%程度が期待できるアジアの成長国として注目度が増している。新型コロナウイルスの感染防止対策でも死者を1人も出さないほど効果的な封じ込めを実施し、コロナショックから立ち直りの早い国としても注目されている。

 1986年12月の第6回共産党大会で採択された「ドイモイ政策」は、「社会主義路線の見直し」「計画経済から市場経済への転換」「国際協力への参加」などを特徴としている。この決定を経て、国営・公営以外の私企業が認められ、国有企業の民営化の取り組みも始まった。1989年頃から、ベトナム経済はドイモイ政策の効果が現れ始め、92年からGDP成長率が年8%を超えるような高成長が97年のアジア通貨危機まで続いた。その後、リーマンショックがブレーキになったこともあったが、年5.5%〜7.0%程度の高い経済成長率を維持している。

 今年は、コロナショックの影響で世界経済が一時的に麻痺した影響を受け、1−3月期の成長率は3.8%に減速。4月1日から23日まで全国的な社会隔離措置を実施するなど、コロナの影響は4−6月期に最も大きく出てくる。7月からは回復に向かっているが、IMF(国際通貨基金)は今年1年間のGDP成長率を2.70%と予想している。ただ、東南アジア諸国のなかで、タイ、マレーシア、フィリピンなどがマイナス成長に陥ると予想される中では、3%近い成長率を維持できる見通しのベトナムは、非常に強い成長力を示している。これは、米中貿易摩擦の影響で、グローバル企業が中国での生産拠点の見直しを進め、ベトナムに生産拠点を移設する動きが活発化していることなどによる。

 ベトナムの株式市場は、先行したホーチミン証取に大型企業が上場し、ハノイは中小型株が多い。基本的に、ベトナムの民間企業は、店頭市場UPCoMに登録し、一定期間を経てハノイに上場することが多い。また、近年では、ホーチミンとハノイの両証取を統合し、ハノイに「ベトナム証券取引所」を設立することが検討されている。市場を整備して、国外からも活発な投資を呼び込むことを目的としており、コロナ騒動が沈静化した後には、再び、ベトナム市場の成長性が注目されることになりそうだ。

 現在、国内公募投信で主としてベトナム株式を投資対象とするファンドは9本ある。その中で、6月末基準で5つ★を獲得しているのはキャピタルアセットマネジメントの「ベトナム成長株インカムファンド」。2014年8月の設定で、6月末時点のトータルリターン1年はマイナス13.99%、3年(年率)がマイナス4.72%、5年(年率)は1.35%になっている。ベトナムの代表的な株価指数「VNインデックス」は、18年4月に1200ポイントを越えたものの、その後は下落基調となり、20年3月のコロナショックで650ポイント台に下落した。4月以降は戻り歩調にはあるが、6月末現在で825ポイントであり、1年前の19年6月末時点の950ポイントを下回った水準にある。

 一方、ベトナム株式の市場規模が依然として小さいことから、ベトナム株式に単独で投資するのではなく、その他アジア各国の株式も合わせ、分散して投資するファンドもある。6月末基準で5つ★を獲得している「三井住友・アジア4大成長国オープン」は、ベトナム株15%、日本株25%、インド株30%、中国株30%の割合で分散投資。トータルリターン1年は0.93%とプラス圏をキープしている。同5年(年率)も1.91%と、ベトナム株に単独で投資するよりも、良い成績を残している。また、4つ★を獲得している「新生・フラトンVPICファンド」は、ベトナム株20%、パキスタン株20%、インド株30%、中国株30%の割合で分散投資。1年トータルリターンはマイナス2.93%、5年(年率)1.26%、10年(年率)6.81%と、長期では優れた成績を残している。
提供:モーニングスター社
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