先進国株式に対して大きく出遅れた新興国株式に反撃の日は来ないのか?
世の中は理屈通りには動かない――。たとえば、「株価は経済を映す鏡」だといわれ、業績の良い成長企業の株価は値上がりすることは当然のことのように考えられる。ところが、経済成長率は新興国の方が高いにもかかわらず、株価は先進国の株価の方が高い。なぜ、このようなことが起こっているのか? たとえば、2017年から2019年まで先進国の経済成長率(実質GDP<国内総生産>成長率)は年平均2.07%に対し、新興国は4.1%だった。新興国はおおよそ先進国の2倍の成長をしている。しかし、この間の株価は新興国は年平均8.6%の値上がりだったが、先進国は10.4%も値上がりした。このような傾向は、今後も継続するのだろうか?
先進国の株価が新興国よりも値上がりしている理由を、単純化して考えれば、新興国の経済成長の恩恵を受けているのが、先進国の企業だからということになるだろう。アップルのiPhoneは中国など新興国でも人気があり、テスラの電気自動車を作る巨大工場が中国で稼働している。株価は企業の固まりであるから、儲かっている企業が多く存在すれば株価も上がる。
ただ、新興国が成長すれば、その国の企業も同じように成長を遂げているはずだ。やはり、新興国の株価が上がらないのはおかしいのではないだろうか?
株式投資は投資収益を求めて行うものであるだけに、「儲かりそう」と思えるところにお金が集まり、「思ったほど儲からない」と思われたところからはお金が逃げていくものだ。新興国経済の成長率の高さは、何年も前から注目され、新興国に投資する投資信託も様々に(単一国や複数国、地域別など)設定・運用されていることから、一時期は新興国株式投資ブームのようなこともあった。ところが、ここ10年余りの新興国株式の値動きは、パッとしない。
2008年4月末を起点として、新興国株式を代表する「MSCIエマージング指数」と先進国株式を代表する「MSCIコクサイ」を比べてみると、この両者の違いが明確にわかる。2008年に起こった大クラッシュである「リーマンショック」の痛手から回復した2012年以降、ぐんぐん上昇に弾みがついた先進国株式と比較すると新興国株式は寝ているようなものに見える。2020年8月末時点では、先進国株式は12年余りで2倍強になったが、新興国株式はやっと2割値上がりしたに過ぎない。
この12年余りの期間は、新興国は「もう上がるだろう」「来年こそは新興国の時代だ」と一部で期待されたとしても、その期待を裏切り続けてきた歴史だった。この結果、新興国に期待した人たちも新興国株式に見切りをつけて、先進国株式に鞍替えした人が少なくなかっただろう。
問題は、これからもこのような先進国優位の状態が続くのかということだ。今年、世界を恐怖に陥れた「コロナショック」から、立ち直るきっかけを与えてくれたのは「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」だった。あらゆるものが、デジタル化していく変化を捉え、そこに成長機会を見出した企業の成長を株価が評価した。この分野をリードしている企業群も、また、アメリカを中心とした先進国に多いことは事実だ。ただ、この分野は巨大な設備投資を必要とするような産業ばかりでなく、企業の規模は小さくても知恵とアイデアで驚くような成長を遂げる企業もまた現れているという特徴がある。
また、社会インフラが整っていないことでこれまでは先進国の後追いをして成長せざるを得なかった新興国も、通信用のアンテナを整備すれば、先進国と変わらないサービスを提供することが可能になる。5Gなど高速・大容量の通信アンテナの設置は、先進国も新興国もこれからだ。DXの言葉の通り、従来の常識を覆す変化の時代を迎えたように思えるのではないだろうか。「今度こそ、新興国の時代」がやってくるのだろうか? それとも、相場格言にいう「もうはまだなり」で、「もういいだろう」と思える新興国は「まだ駄目」なのだろうか。
国連加盟193カ国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標「SDGs(持続可能な開発目標)は、世界の成長から取り残される国・地域をなくそうという世界共通の目標になっている。これからの10年、20年を展望すると、あまりにも出遅れてしまった新興国株式は、この遅れを取り戻す機会を得た得られるようにも見えてくる。
提供:モーニングスター社
先進国の株価が新興国よりも値上がりしている理由を、単純化して考えれば、新興国の経済成長の恩恵を受けているのが、先進国の企業だからということになるだろう。アップルのiPhoneは中国など新興国でも人気があり、テスラの電気自動車を作る巨大工場が中国で稼働している。株価は企業の固まりであるから、儲かっている企業が多く存在すれば株価も上がる。
ただ、新興国が成長すれば、その国の企業も同じように成長を遂げているはずだ。やはり、新興国の株価が上がらないのはおかしいのではないだろうか?
株式投資は投資収益を求めて行うものであるだけに、「儲かりそう」と思えるところにお金が集まり、「思ったほど儲からない」と思われたところからはお金が逃げていくものだ。新興国経済の成長率の高さは、何年も前から注目され、新興国に投資する投資信託も様々に(単一国や複数国、地域別など)設定・運用されていることから、一時期は新興国株式投資ブームのようなこともあった。ところが、ここ10年余りの新興国株式の値動きは、パッとしない。
2008年4月末を起点として、新興国株式を代表する「MSCIエマージング指数」と先進国株式を代表する「MSCIコクサイ」を比べてみると、この両者の違いが明確にわかる。2008年に起こった大クラッシュである「リーマンショック」の痛手から回復した2012年以降、ぐんぐん上昇に弾みがついた先進国株式と比較すると新興国株式は寝ているようなものに見える。2020年8月末時点では、先進国株式は12年余りで2倍強になったが、新興国株式はやっと2割値上がりしたに過ぎない。
この12年余りの期間は、新興国は「もう上がるだろう」「来年こそは新興国の時代だ」と一部で期待されたとしても、その期待を裏切り続けてきた歴史だった。この結果、新興国に期待した人たちも新興国株式に見切りをつけて、先進国株式に鞍替えした人が少なくなかっただろう。
問題は、これからもこのような先進国優位の状態が続くのかということだ。今年、世界を恐怖に陥れた「コロナショック」から、立ち直るきっかけを与えてくれたのは「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」だった。あらゆるものが、デジタル化していく変化を捉え、そこに成長機会を見出した企業の成長を株価が評価した。この分野をリードしている企業群も、また、アメリカを中心とした先進国に多いことは事実だ。ただ、この分野は巨大な設備投資を必要とするような産業ばかりでなく、企業の規模は小さくても知恵とアイデアで驚くような成長を遂げる企業もまた現れているという特徴がある。
また、社会インフラが整っていないことでこれまでは先進国の後追いをして成長せざるを得なかった新興国も、通信用のアンテナを整備すれば、先進国と変わらないサービスを提供することが可能になる。5Gなど高速・大容量の通信アンテナの設置は、先進国も新興国もこれからだ。DXの言葉の通り、従来の常識を覆す変化の時代を迎えたように思えるのではないだろうか。「今度こそ、新興国の時代」がやってくるのだろうか? それとも、相場格言にいう「もうはまだなり」で、「もういいだろう」と思える新興国は「まだ駄目」なのだろうか。
国連加盟193カ国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標「SDGs(持続可能な開発目標)は、世界の成長から取り残される国・地域をなくそうという世界共通の目標になっている。これからの10年、20年を展望すると、あまりにも出遅れてしまった新興国株式は、この遅れを取り戻す機会を得た得られるようにも見えてくる。
提供:モーニングスター社