ＫＤＤＩとａｕカブコム証券は９月２６日から、９６７１万人が利用する国内最大級の共通ポイントサービス「Ｐｏｎｔａポイント」で投資信託の購入ができる「ポイント投資」の提供を開始する。これまでのポイントの投資活用は、サービス提供者が用意した特定の投信を使って「投資の体験ができる」ことに主眼が置かれていたが、今回の取り組みはａｕカブコム証券が取り扱う１２００本以上の投資信託の全ての購入に「Ｐｏｎｔａポイント」が利用でき、現金との併用も可能になっている。投資を体験できることから一歩進めて、資産形成そのものにポイントを活用する制度といえる。

　「ポイント投資」は、ａｕ携帯電話やインターネットなどの利用やＰｏｎｔａ提携社（ローソン、高島屋、ＪＡＬ、すき家、ビックカメラなど）での買い物、また、ａｕＰＡＹ（コード支払い）などの利用でたまるＰｏｎｔａポイントを１ポイント＝１円で投信の購入に使えるサービス。ポイントはａｕカブコム証券が買い取って投信の約定代金に充当する仕組み。ａｕカブコム証券では、取り扱っている投信は全て購入時手数料無料（ノーロード）で、分配金を再投資する累投型は投信を１００円以上１円単位で購入できる。

　また、１０月以降に「ａｕＰＡＹアプリ」を経由して「ポイント投資」ができるようになり、日常的にたまったポイントを手軽に投資に回すことができるようになる。アプリではファンド概要を分かりやすく解説する機能の他、保有銘柄をその投資対象を分析した１つのポートフォリオとして円グラフで表示する機能も提供し、運用の状況や成績が一目で確認できるようになり、本格的な資産形成をサポートする。

　ａｕカブコム証券は、投信残高が２万４０００円以上で、残高に応じてＰｏｎｔａポイントをプレゼントする「ａｕカブコムの資産形成プログラム」を提供してきたが、「ポイント投資」サービスのスタートを記念し、「ポイント投資デビュー応援キャンペーン」を実施する。１１月３０日までにａｕカブコム証券の口座を新規開設し、キャンペーンにエントリーすると最大で４００Ｐｏｎｔａポイントをプレゼント。さらに、１２月３０日までに５００円（ポイント）以上投信を買い付けると、投信保有額に応じて最大で１万５０００Ｐｏｎｔａポイントをプレゼントする。

　ａｕグループは、ａｕじぶん銀行、ａｕＰＡＹ、ａｕアセットマネジメントなどを傘下に持つａｕフィナンシャルホールディングスと、ａｕ損保、ａｕカブコム証券などグループ各社と「ａｕ経済圏」を形成し、“金融に強いスーパーアプリ”として「ａｕＰＡＹアプリ」のサービス・機能を拡充している。

　２０１９年１２月２５日にＫＤＤＩがａｕカブコム証券と金融仲介業の契約を行って「ａｕの資産運用」をスタート。アプリからａｕカブコム証券のプチ株、新規公開株式（ＩＰＯ）など専門的な証券サービスの利用ができるようにした。アプリは「ａｕの資産運用」の他に「ａｕの生命ほけん」「ａｕの損害ほけん」「ａｕ住宅ローン」「ａｕのｉＤｅＣｏ」など様々な金融ニーズをワンストップで叶えるプラットフォームの役割を担っている。

　また、アプリでは「ポイント運用」のサービスがあり、たまったポイントをａｕアセットマネジメントが設定・運用する投信「ａｕスマート・プライム（高成長）」で運用することができた。その利便性が呼び水となったのか、「Ｐｏｎｔａポイントで投信が自由に買えるようにしてほしい」という声は、「ａｕの資産運用」を始めた当初からあったという。今回の「ポイント投資」への進化で、様々な投信がポイント運用の対象になった。さらに、ポイントを使った株式投資も検討しているという。

　ポイントはサービス利用の「おまけ」であるため、「損をしても苦にならない」とされる。ソフトバンクグループはＹａｈｏｏ！ショッピングやヤフオク！などと連携した大きなＰａｙＰａｙ経済圏を構築。「ｄ払い」からメルカリとの業務提携によって経済圏を広げるドコモと、国内通信キャリアは金融サービスを競うように拡充している。そして、楽天市場や楽天証券などで楽天スーパーポイント経済圏を形成してきた楽天グループが通信サービスを始めた。

　ａｕが先鞭をつけた「ポイント投資」は、早晩、他の通信キャリアグループに広がっていくだろう。携帯電話サービスを入り口にしたポイント資産運用サービスは、「わざわざ証券会社に口座を開く」「リスクを取って投資する」という心理的な壁を軽々と越えていく可能性がある。長らく金融業界が課題としてきた貯蓄から資産形成への移行を、通信キャリア発の資産形成サービスが一気に推し進めるかもしれない。
提供：モーニングスター社