iDeCoの2月の新規加入者は約4.6万人、制度改定以来4年ぶりの増加水準

 国民年金基金連合会が4月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると、2月の新規加入者数は4万6196人で加入者総数は189万2300人になった。月間の新規加入者が4万5,000人の大台を超えたのは、2017年1月にiDeCoの大きな制度改定が実施され、公務員や第3号被保険者にも開放されて加入者が大幅に増えた時以来、4年ぶりのこと。従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は2547事業所、対象従業員数は1万6098人になった。

 1月の新規加入者の内訳は、第1号加入者が6324人(前月4123人)、第2号加入者は3万6890人(前月3万2715人)、第3号加入者は2982人(前月1901人)となった。なお、第2号加入者の中では、企業年金なしの新規加入者が2万1835人(前月1万9529人)、共済組合員(公務員)の新規加入者は9056人(前月7901人)となった。

 第1号加入者の新規加入が6000人を超えることは2015年4月以来最大、第3号加入者の2900人台は史上最大の増加数になる。前年同月比で比較すると、第1号加入者が前年同月比61.5%増、第2号加入者が同1.9%増、第3号加入者が64.0%増と、前月に引き続いて第1号と第3号加入者の増加が目立った。

 2月の結果だけでは判断できないが、iDeCoの新規加入の状況が、明らかにギヤチェンジをして、これまでにないスピードに高まってきているように感じられる。この背景の1つには、昨年から続くコロナ禍によって、「何が起こるかわからない」というような漠然とした不安が広がり、人々の生活信条が従来よりも防衛的になっていることがあげられる。将来のために、できるだけ貯蓄を積み上げておきたいという思いが強まったのだろう。これは、つみたてNISAの残高が急速に積み上がっていることにも表れている。

 加えて、iDeCoの商品性の改善も進んでいる。この4月1日には野村證券が「野村のiDeCo」の運営機関手数料について、従来は条件付き(掛金月額1万円以上など)で無料としていたものを、5月6日から条件なしで無料とし、さらに、運用商品を拡充することを発表している。ちょうど、4月からは、確定拠出年金専業の損保ジャパンDC証券が従来は月間330円だった運営管理機関手数料を302円に引き下げた。同様に、昨年5月には西日本シティ銀行が運営管理機関手数料を326円から289円に引き下げている。SBI証券など一部の運営管理機関で運営管理機関手数料を無料にする動きはあったが、対面での相談や地域密着に強みのある地方銀行や専門性に強みのある専業者までも手数料を引き下げて、利用を促す動きに転じている。

 さらに、iDeCoの運用商品について、今年3月にみずほ銀行が「グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド(愛称:未来の世界)」と「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(愛称:未来の世界(ESG))」という投信窓販で人気の商品をiDeCoに採用。野村證券の運用商品ラインナップには「スパークス・厳選投資ファンド(確定拠出年金向け)」「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)(確定拠出年金向け)」「ティー・ロウ・プライス世界厳選成長株式ファンド(確定拠出年金向け)」「野村世界ESG株式インデックスファンド(確定拠出年金向け)」などが新たに加わる。こちらも投信の「売れ筋」であり、近年に注目が高まっているESG(環境・社会・ガバナンス)投資の流れをくむ商品群だ。

 一方で、近年は、確定拠出年金で採用されている投資信託の信託報酬率が相次いで減額修正されている。2018年1月にスタートした「つみたてNISA」が、低コストのインデックスファンドでの積立投資を定着させたこともあり、iDeCoに採用されているDC専用のインデックスファンドの信託報酬率が「つみたてNISA」並みに低下してきている。運用期間が20年間と限定されているつみたてNISAよりも、60歳まで換金・引き出しができないiDeCoの方が、より長期の運用になる傾向があり、運用コストについては、よりシビアに負担軽減が求められていた。その流れに、運用業界がしっかり応えている。

 このように、国民の関心の高まりに合わせるように、iDeCoの低コスト化と運用商品の拡充がうまくかみ合っている。今年に入って、勢いが増してきているiDeCoの新規加入が、この勢いを持続できるかどうか、注目していきたい。
提供:モーニングスター社
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