公募投信の新設に弾み、ESGや気候変動対策が新規ファンドのきっかけに

 公募投信の新規設定本数が回復してきた。投資信託協会が発表している「契約型公募投資信託の新設ファンド本数」は、アベノミクスが株価が上昇に転じた2013年10月に月間125本の設定をピークに徐々に減少し、コロナショックのあった2020年4月には月間7本の設定しかなかった。その後も2020年10月の40本を超えない状態が続いてきた。近年は、長期に存続することが重視され、新規設定には慎重になる風潮もあるが、市場のバロメーターとして新設ファンドが多い時には投資信託市場も活況であることと等しい。20年3月には36本と昨年のピークに迫り、4月設定予定は3月26日の発表分までで18本と、3月分を上回る勢いがある。

 近年の新設ファンドに多いのは、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の要素を銘柄選定の際に考慮するファンド群だ。3月に新規設定されるファンドでは、3月29日設定の「グローバルX クリーンテックESG・日本株式」と「グローバルX MSCIガバナンス・クオリティ・日本株式」。そして、30日設定の「イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略」や「ESGフォーカス コムジェスト・クオリティG・日本株式」「ESGフォーカス コムジェスト・グオリティG・世界株式」。31日設定の「iTrust ティンバー(愛称:木と環境と未来へ)」などがある。

 この傾向は、4月にも引き継がれ、4月6日に「ベイリー・ギフォード インパクト投資F(予想分配型)(愛称:ポジティブ・チェンジ)」「ベイリー・ギフォード インパクト投資F21−04(限追)(愛称:ポジティブ・チェンジ)」。9日には「アムンディ 環境・気候変動対策ファンド(愛称:グリーン・ワールド)」。26日には「ニッセイ気候変動関連G株式(予想分配型)(愛称:フォー・ザ・フューチャー)」「ニッセイ気候変動関連G株式(資産成長型)(愛称:フォー・ザ・フューチャー)」、そして、「グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション」がある。

 これらのESGに関連するファンドは、世界的な資金の潮流が「ESG投資」に向かっているという近年の大きなトレンドに加え、昨年後半に誕生した米国のバイデン新政権や日本の菅政権が「2050年カーボンニュートラル」を政策目標に掲げ、また、中国でも「2060年カーボンニュートラル」を新たな目標に掲げるという動きが出てきたことが大きい。世界のGDP(国内総生産)の規模で1位〜3位の国がそろって、国を挙げて温暖化ガスの排出を実質的に止めるために投資を行っていこうと宣言したのだ。ESG投資の中でも「E」の要素、特に気候変動関連に注目度が高まった。3月、4月の新設ファンドでも「気候変動対策」を主要な切り口にしたファンドが目立つ。

 このような新しい大きな投資テーマが表れていることも、新ファンドの開発には追い風になるだろう。米国の株価指数が史上最高値を更新し、国内の日経平均株価も30年ぶりに3万円の大台を回復してきた。今年になって、米国の長期金利上昇など、これまでにない要素が出てくると、株価が数%調整するという動きもあるが、それも、いずれ高値を更新するという動きで報われている。株価の上昇基調が崩れない限り、ファンドの新設もまた活発な状態が続くだろう。
提供:モーニングスター社
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